(98)個有スキル②
~紗彩目線~
【付喪の狂宴】と書かれた欄の下には、先ほどまであった文字がなくなり文章が浮かびあがっていた。
「【ゴーストパーティ】?」
「あ、そういう呼び方なんですね」
オズワルドさんが紙を覗き込み言うと、私は考える。
付喪というのは、日本の妖怪である『付喪神』のことだろう。
それに、ゴーストパーティということは英語の呼び方。
でも、付喪神は別に幽霊じゃないし。
ということは、名前と呼び方には似たような意味合いの英語が使われているってことだろうか?
そう思っていると、レオンさんが浮かび上がった文章を指さして教えてくれた。
この文章は、能力の詳細が書かれているらしい。
そして、その詳細は本人以外には見えない。
まあ、書かれている内容的に確かに知られたらちょっと困るんだけど。
そう思いながら、紙を見る。
書かれているのは、三つの文章。
『五感で認識したものに、魔法を込めることができる』
『込めたものに、条件を付けることができる』
『ものを通さずに魔法を使用することは不可能』
この内容からして、『付喪』という言葉がなぜ使われたのかはなんとなくだけど理解できた。
付喪神っていうのは、長い年月の間大切に使われたものに宿る妖怪。
そして、ゴーストはそのまま幽霊だ。
幽霊と言えば、ポルターガイストが結構有名なはず。
共通点は、不可思議な力で物が動くこと。
だから、【付喪の狂宴】っていう名前のスキルなんだろう。
でも__
「魔法が使えないというデメリットってアリなんですか?」
「ん、サーヤのデメリットはそれなのか?」
思わずつぶやくと、前にいたレオンさんが聞いてきた。
とりあえず、教えを乞う相手だしスキルのことを簡単に伝えた。
伝え終わると、オズワルドさんは難しげな表情を浮かべている。
「…………まあ、そういうスキルなら使い方によっては魔法と同じように使えるか」
「とりあえず、そのスキルの使い方から練習するか」
「え、いいんですか?」
「悪いが、スキルがあるのであればそれを伸ばした方がいい。魔法が使えないのは、かなり大きな痛手だ。だからこそ、スキルの方を伸ばす。…………騎士団は正義の味方だが、何も全員から好まれているわけじゃない。中には、おかしな理由で逆恨みしている馬鹿もいる」
てっきりスキルの練習は一人でするのかと思いそう言えば、オズワルドさんに眉間にしわを寄せながらそう言われてしまった。
まあ、確かにオズワルドさんの言う通りだ。
騎士団でお世話になっている以上、自衛の方法はいくつあっても足りないとシヴァさんたちに言われていた。
魔法は使えないけど、このスキルなら元の世界で得た知識とオタクとしての知識を総動員すれば魔法に負けない道具を作れるかもしれない。
魔法を使えなかったのはショックだけど、ない物ねだりはできないし。
そう思い直し、私はレオンさんたちと一緒にスキルの練習に励むことにした。
あれから何時間かたち、目の前には複数の道具が置いてある。
スキルを使って疲労感は少しはあるものの、それよりも達成感の方が大きかった。
とりあえず本当に使えるか実験したところ問題なく魔法は作動したところを見て、道具を片付けているとレオンさんがポツリと言った。
「…………サーヤって発想が変わってるって言われたことないか?」
「ここに来てからは、たまに言われます」
「だろうな」
レオンさんの言葉に同意すると、どこか遠い場所を見ているような目でオズワルドさんが言った。
別に変った発想をしていないと思うんだけどな。
そう思っていると、突然大きな音が本部内に響いた。
ビリリリリリッ!!!!
その音は、あの誘拐犯が侵入した時と同じ音だった。
「レオン様、サーヤ!絶対に離れないでください!」
腰にさしてある剣を握りながら、オズワルドさんは焦った表情で私達に向かって言った。
…………勘弁してください。
次回予告:侵入者を捕まえたシヴァたち
だが、侵入者の個有スキルで異空間に転移させられてしまう
紗彩「個有スキルをもうちょっとマシなことに使えばいいのに」