表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

4.暗躍する者







 ――夜の闇の中に、一人の男が立っていた。

 男は冒険者ギルドから漏れる光を見て、静かに、声を殺して笑う。

 そこにあるのはまるで、新しい玩具を見つけた子供のような色であった。


「ずいぶんと面白い者と手を組んだのですね、エリミナ・シルフィード」


 丁寧な口調で、しかし邪悪な音を発する。

 エリミナの名を口にしたその男は、黒の外套を翻して踵を返した。

 するとその男の行く先には一人の冒険者がかしずいている。――彼の名前はカドック・ディアロイド。Aランクに相当する地位にいる凄腕であった。


「主様、いかように致しましょう?」


 カドックは、その黒き男を敬うように訊ねる。

 すると主と思しき男性は――。


「カドックよ。お前には多少、あのレオンという青年と因縁があるようだな」

「……それは、たしかにそうですが」


 ――配下の彼に、そういってほくそ笑む。

 その言葉を受けたカドックは、どこか苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 つい昨日の出来事である。『冒険者としての仕事』を終えた彼は、束の間の仲間たちと酒盛りを楽しんでいた。その流れの中で、エリミナに手を出したのである。


「あの後、相当に冷やかされたそうではないか。【ゴブリン狩り】に負けた、と」

「……………………」


 主の言葉に窮するカドック。

 たしかに、酒に酔っていたとはいえ自分は『あの』レオンに負けた。

 Aランクの冒険者として一目を置かれていた自分が、周囲にとんだ恥を晒したのである。そのことを思い出し、カドックは歯を食いしばった。


 この男――カドックは、相当な自意識過剰である。

 そして、唯我独尊の精神を持っていると言えば良いのであろうか。

 とにもかくにも、主を除く誰もかもが自分より下でなければ気が済まない。歪んだ性格をした男であった。プライドが高く、攻撃的。

 今もまさしく、主に煽られ怒りの炎を滾らせていた。


「ならば、カドックよ。お前には我の力を貸し与えた魔物を用意しよう」

「なっ、それは本当ですか!?」


 苦渋の表情を驚きの色に変えるカドック。

 彼のクラスは『魔物使い』という、一風変わったモノ。

 そこに主の力が加わると聞いた瞬間に、彼は目の色を変えた。


「ふふふ。良い目だ、カドック――分かっているな?」


 そして、それこそが主の狙い。

 それをカドックも、当然に理解していた。そのため――。


「分かっております。必ずや、あの二人を……」


 ――そう言って、頭を垂れた。

 口角を吊り上げ、まるで鋭い三日月のようにしながら。


「では、我はこれで失礼しよう」

「はっ、お疲れ様です」


 そんな部下の姿に納得したらしい。

 主はニタリと笑みを浮かべて、最後に一度振り返った。そして言う。



「アリアンロッドごときの加護など、我の敵ではありませんよ? ――エリミナ」



 闇の中に溶けていく男。

 その姿。まとう雰囲気は、人のそれではなかった。




次回の更新は明日の昼ごろ。

もしよろしければブクマ、下記のフォームから評価など。

応援よろしくお願い致します!!


<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ