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1.再度の能力測定、少女との出会い






「あの~、すみません。能力測定、いいですか?」

「はい? 貴方は――レオン・シークヘルさんですね」


 冒険者ギルドに戻って、受付にそう声をかけた。

 すると担当者である女性は一瞬だけきょとんとしてから、俺の名前を口にする。

 この街のギルドの中で俺は、ちょっとした有名人だ。先ほど例に挙げた【測定不能の魔法剣士】の他にも、【ゴブリン狩りのレオン】という通り名もある。

 もっとも、その両方がこちらを蔑んだモノであるのが悲しい点だけど。


「どうされたのですか? 原則として、新人冒険者にしかあの測定は行っていないのですけど。なにか、気になることでもありましたか」

「あぁ、それなんですけど……」


 受付の人に言われて、俺は冒険者カードを差し出した。

 そして、そこに記載されている討伐履歴を示す。


「ここ、見てください。俺、今日ワイバーンを倒したんですよ!」

「……レオンさんが、ワイバーンを?」


 ついつい興奮気味に伝えると、彼女は少し訝しげな表情を浮かべた。

 怪しまれて当然だろう。俺の通り名を考えれば、なにかをやらかしたと、そう思われても仕方なかった。その証拠に、受付の人はこう訊いてくる。


「それは、本当に単独で、ですか? 誰かと一緒に行ったとかではなく?」


 冒険者カードとこちらの顔を交互に見ながら。


「いや、俺が誰ともパーティーを組んでないのは知ってるでしょう? だから正真正銘、それは俺の単独討伐実績ですよ」

「はぁ、分かりました……」


 しかし、これは紛うことなき真実だった。

 だから俺は、力強く答える。すると女性もようやく了承し、奥の方へと向かった。そして、一つの水晶玉を持ってくる。

 これは測定水晶といい、手をかざすことでその者の能力を数値化する魔道具だ。


「では、お願いします」

「分かりました」


 促され、その上に手をかざす。

 すると一瞬だけ、眩い光が放たれた。そして――。


「――出ました。結果は……」


 水晶の中に、ぼんやりと文字が浮かび上がる。

 だが、それは俺の期待に反して、


「……残念ながら、以前と同じ【測定不能】ですね」

「………………」


 ある意味で予想通りの内容であった。

 前とは違って水晶が光ったから、多少は期待したのだが。もたらされた結果は、同じく【測定不能】だった。それにがっくりと肩を落とす俺。

 しかし、そんなこちらに意外な声をかけたのは受付の女性だった。


「でも、水晶が光ったので――もしかしたら故障かもしれません」

「故障……? それって、つまり?」


 彼女は少し考えてからこう言う。


「私の方から上に掛け合ってみますね」――と。


 俺はそれに目を輝かせた。

 まだ、俺の能力には一考の余地があると判断されたのだ。

 そんな扱い、三年間で一度も経験がなかったので、思わず嬉しくなる。


「ありがとうございます!」





 そして、そう礼を口にした。


 最後に一言二言話して、俺はギルドを後にする。

 いいや、正しくは後にしようとした、その時だった。


「すみませぇ~ん。誰かぁ~……」


 そんな、か細い声が聞こえてきたのは。

 どうやら少女のそれのようだった。俺はついそれが気になって、探してしまう。

 するとすぐに見つかった。声の主――幼い女の子だ――は、何やら首からプラカードのようなモノをぶら下げて立っている。


 そこに書いてあったのは、次のような文言――。


『パーティーメンバー募集中。拾って下さい』


 ――そんな捨て犬みたいに!?

 俺は内心で思わず、そうツッコんでしまった。

 周囲の人も同じことを考えているのか、皆一様に変な生物を見るような目をして通り過ぎていく。そんな中でも少女は、同じ言葉を繰り返していた。


「あの、キミ……」


 見ていられず、とうとう俺は声をかけてしまう。

 するとうつむき加減だった少女は、おもむろに面を上げてこちらを見た。


「――――――――」


 その瞬間――俺は、息を呑んだ。

 何故なら、その少女はあまりにも美しかったから。


「はい、なんでしょう……?」


 こちらを見つめる円らな瞳は、澄んだ青色をしていた。

 肩口で切り揃えられたクセのある金の髪。目鼻顔立ちは芸術品のように整っており、触れれば壊れてしまいそうな儚さを持っていた。

 背丈は俺の腰ほどまでしかなく、歳は十余歳といったところか。身にまとうのは白のワンピース。それはきめ細やかな白い肌によく合っているように思えた。


 可愛いというより、美しい。

 そう表現した方が正しいように思える少女だった。


「もしかして、私とパーティーを組んでもらえるんです……か?」


 彼女はおずおずとした口調でそう言う。

 俺は返答できずに、ただそこで立ち尽くしていた。




 この後に知ることになる、彼女の名は――エリミナ・シルフィード。

 彼女の出会いもまた、俺にとっては運命的だと思えるものであった。しかし、それと同時に俺と少女の出会い。それは、一つの戦いの幕開けでもあった。



 


もしよろしければブクマ、評価など。

応援よろしくお願い致します!


22時にもう一話、投稿します!


<(_ _)>

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