プロローグ 【測定不能】
「測定不能、だって……?」
俺――レオン・シークヘルは冒険者ギルドの受付で、そんな声を上げた。
それは冒険者としての一歩を踏み出そうとした俺に与えられた、あまりにも酷な現実。憧れの職業に就いた瞬間から戦力外通告を受けた。そんな感じだ。
いったい、何が起きたのかと言うと――。
「弱すぎるのです。そのため能力測定において、貴方の力は数値化できません」
――そう、なのであった。
冒険者になって最初に受ける能力測定。
そこで俺は、あまりに弱すぎるために測定不能、という前代未聞の結果を叩き出した。無慈悲に、受付の女性はそう告げる。周囲にいた人は少しだけ沈黙したあと、爆笑した。そして、後に俺のことをこう呼ぶのである。
お前は【測定不能の魔法剣士】だ――と。
「くそっ、くそっ……!」
けれども、俺は冒険者を諦められなかった。
一人でクエストを受けては、最下級の魔物であるゴブリンを狩る日々。
しかしゴブリン相手でも、大怪我を負うことが何度もあった。血の塊を吐き出しながらギルドに帰還したこともあるし、四肢すべての骨が折れたこともある。
「それでも、俺は諦めない。いつか必ず――」
苦痛の日々の中で俺は誓う。
そう、いつかきっと誰よりも強くなってみせる。そして、
「――一人前の冒険者として、誰かを守れるようになってやる!!」
そう願うのであった。
◆◇◆
それから、三年の月日が流れた。
――ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!
ゴブリンが棍棒を振り上げた。
俺はその懐に潜り込んで、がら空きの腹部に剣を突き立てる。
手に確かな手ごたえが伝わってきて、直後にゴブリンの断末魔が聞こえてきた。霧散して魔素に還るそいつを確認して、胸元から冒険者カードを取り出す。
「よし、これで目標の十体目だ」
小さくガッツポーズを作った。
これで、どうにか明日も生きていくだけの日銭はもらえる。
最低限のクエストであるゴブリン狩りも、こうやって熟せるようになった。俺もずいぶんと成長したと言えるだろう。三年前なんか、手も足も出なかった。
本当に、来る日も来る日もゴブリンの尻を追いかけた毎日。今になって思えば、よく三年間もそれを諦めずに続けたものだ。と、安易に自分を褒めてみる。
だけど、最近気になることもあった。
「それにしても、最近はゴブリンも見かけないな。見かけても逃げられちゃうし、どうなってんだろ……」
俺なんか、そんな怖がられるような冒険者じゃないのに、と。
その証拠に三年前はまったくと言って良いほどに能力も発動できなかった。さらには、剣技だって未熟を通り越して呆れの域である。
「けど、今は最低限は出来るようになったんだよな――っと」
そう呟いて、試しに能力を発動してみる。
短く魔法の詠唱をして、繰り出すのは初歩中の初歩【火弾】だった。
それを空に向けて放ってみる。突き出した右手から、炎の塊が飛び出していった。そこまでは良かった。良かったのだが――。
「あっ……、やべ!」
――問題はそこからだった。
俺が放った火弾は、偶然に空を飛んでいたワイバーンに掠ったのである。
けたたましい叫びを上げながら、こちらを見るワイバーンさん。彼(?)は一直線にこちらへ向かってきた。その瞬間、俺は思った――あ、死んだ、と。
今までゴブリンとしか戦闘をしたことがない。
ましてや、竜種なんかとは遭遇することはあってもすぐに隠れていた。
それなのにどうして、こんな時に限ってワイバーンはこんな場所を飛んでいるのであろうか。そのことを内心で呪いつつも、俺はとっさに剣を構えた。
「どうせ死ぬなら……っ!」
どうせ死ぬなら、最後の最後に少しでも抵抗してやる。
そう思って思い切り剣を振りかぶった。
そして――。
「だああああああああああああああああああああああああっ!!」
――ワイバーンの迫りくるタイミングに合わせて、それを振るった。
すると次の瞬間、何やら手応えがある。思わず目を瞑っていたので、一瞬何が起こったのか分からなかった。だが、目を開けるとそこには信じられない光景。
「え、嘘だろ……!?」
頭から、尾にかけて真っ二つに切り裂かれたワイバーン。
それが魔素へと還元されていく姿だった。
「これ、俺がやったのか? ははは、そんなわけが……」
ない、と。思わず苦笑いを浮かべる俺であった。
だが次の瞬間、冒険者カードに魔法文字が刻まれる。そこには――。
「え……?」
――ワイバーン討伐数:一体。
ゴブリン討伐数:一万九百五十体、その上に。
確固たる証明があった。
俺はそれを見ても半信半疑。首を傾げるのであった。
初めましての方は初めまして。
鮮波永遠と申します。
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次話は22時頃に投稿します!
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