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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
本編
68/71

桃花の掴んだ真相2

「単刀直入に伺いますが部長は今回のことどこまで把握していたんですか?」


聡は桃花にそんな質問を投げかける。ここは少し落ち着いた雰囲気の個人経営のカフェの中で、桃花の足の負傷したためにたまたま2人で入った場所だ。メニューに載っている品もなかなかだが先程既に軽食を済ませてしまっているため食指が動かない。そんな聡とは対象的に桃花はしっかりとメニューを見て何しようか迷っているようであった。


結局、聡の前には本日のオススメであるシフォンケーキのセットが桃花の前には豪華に数種類のベリーがふんだんに盛り込まれたタルトのセットが運びこまれた。このタルトがこの店で一番値が貼るのは言うまでもない。


ここに来るまでにひと悶着あって不機嫌だった桃花も少しばかり気が安らいだようであった。


「思ったよりは美味しいなこれ、よければ君のも分けてくれるか?」


「こっちは真面目に聞いてるんですが」


と言っても、桃花が足を擦る素振りを見せるともうこちらは逆らえない。仕方なく聡が自分の皿を桃花の前に渡そうとする。すると目を瞑って口を開けて待っている桃花の顔があった。


こちらを試しているのだろうか?そうやって恥ずかしがるこちらの様子を見て楽しみたいのだろうが、毎回毎回その手にはのらない。そう思って残っていたシフォンケーキをその大きく開けられた口に全てねじ込んでやった。


聡の思いがけない行動に流石の桃花も驚いた様子だった。不覚にもそんな姿を見て可愛いと思ってしまったのはこちらの失態だろうか?


「冗談のつもりだったのだが、これはこれで悪くないな」


それからなぜか少し気分を良くした桃花はやっと聡の質問に答え始めた。


「ふん。別に私は君が考えていることより少し多く知っているだけさ、それに私だってエスの全てを理解しているわけではない」


そう言って今度は逆に聡に対して質問し始めた。


「それで君はどう思っているんだ?私がどこまで理解していると思うかね?」


「これは僕の予想ですが、部長はあのときエスが過去に連れて行くことを知ってましたよね?あのとき部長の持ち物が見えてしまったんですが封筒には切手が貼ってありました」


「それがどうした。私が郵便物を出すのがそんなに不思議か?」


「宛先まではわからなかったですが、その時見えたのが80円のでした。現在は大きさや重さにもよりますが一般的に封筒の切手82円です。部長がそんな単純なミスをするとも思えません。だとするなら80円で封筒出せる時代だと考えるのが普通です」


そう聡が言い切ると桃花も関心したように聡を見つめていた。


「なるほど、聡君にしてはいい推理だな」


「ならエスが部長を止めたのも納得できます。エスは過去をできるだけ変えないようにしていた。少なくとも僕の硬貨に注意するくらいには気をつけていたはずです。ただどうしてもわからないです。部長が過去にそんなものを持ち込もうとした理由も、いつ過去に行けると知ったのかも。手紙を書いた時期から考えればエスに合う前にはもう知っていたってことですよね。どうして教えてくれなかったですか?」


「君も思ったよりは考えているんだな。正直君がここまで来るとは思ってもいなかった。もしトンチンカンな回答をしようものならそのまま誤魔化そうかとも思ったが気が変わった。やはり君は私の見込んだ奴だな。でもまぁ半分かな」


「半分?」


「君の推理がね」


それから桃花は答え合わせするかのように聡にこれまでの経緯を解説し始めた。


「第一手紙が駄目ならそれだけを持ち込ませなければいい。私自身を拒絶した理由には少し乏しい。まぁそれが君に過去に行くことを教えられなかった理由にも繋がるなるがな」


そう言って桃花はバッグから1枚の封筒を取り出して聡の前に出した。それは桃化があの時持っていたものだった。


「なんですかこれは?」


「あのとき私が持っていた物だ。もう必要のないものだから捨てようかとも思っていたんだが、たまたまバッグの中に入れっぱなしでな。まぁ中を見るといい」


「中ってどうせ私利私欲のためのものでしょう。過去に行くのがわかっているなら誰だって未来に起きること書きますよ。それか過去の過ちをやり直すためか単純に金儲けかは人によりますが。でも部長がどんなことを書いたのかは少し気になります」


そう言って、聡は桃花に渡された封筒を破り中身を確認した。封筒の中には1枚の紙が入っているだけで他に特殊な細工が施されている様子もなかった。


もし仮に僕だったらどんなことを書くだろうか?株式?宝くじ?いや、まず間違いなく綾の事故のことは書くだろう。そうすれば事故は未然に防げたかもしれない。でもそうするとそれからの出会いは全てなかったことになってしまうのだろうか?それはそれで少し寂しいものが………そんなことを考えていると桃花はそれを見透かしたようにこちらを見て笑っている。


また、からかわれたのだろうか?ただ思っていてもあなたとあえなくなるかもしれないことが寂しいなんて言った暁には何を言われるかわかったものではない。


いやむしろこれはチャンスなのかもしれない。何気なく渡されたがこれには部長の俗物的なことが書かれているはずなのだ。それなら逆にそのことでからかい返してやればいい。聡は1つ深呼吸をするとその封筒の中を見た。そしてその紙には驚くべきことが………書かれてはいなかった。いやむしろ何も書かれてはいなかった。


「ってなんですかこれは!?」


「どうした?」


「どうしたもこうしたもこれ白紙じゃないですか!?それとも何か特殊なインクとかあぶり出しとか必要な暗号ですか?」


「いや、それは本当にただの紙だ。白紙なのも意図的だ」


「なんのために?」


「確認のためだな」


「確認?なんのですか?」


「過去にこういった物が持ち込めるかのな。と言ってもこれはブラフだがな。一応言っておくが私自身過去を変えたかったわけでもないからな。万が一のために中には何も書いてないものを用意した。もしこれに今後の世界の情勢でも記しておけばこんな紙切れ1枚が予言の書に早変わりでそれはそれで面白そうではあるがな。もちろんエスがそんなことを許すはずもなく私の同行は拒否されてしまった。ここで疑問なのがエスのことだからこれがさして過去を変える驚異になりえない物だと知っていたはずだ。となると私が同行を拒否された理由はこの封筒ではない」


「そんなに深く考えないでも、綾の身内の僕しか連れて行きたくなかっんじゃないですか?エスも必要最低限の人しか連れて行きたくなかったとか」


「確かにそれも一理あるが本当にそれだけだろうか?」


あの時は深く考えていなかったがエスは確かに桃花の同行を拒否した。綾に起こったことだからエスは身内である自分しか過去に連れて行かなかったと思っていたが、どうやらそれが全てではないらしい。それにまだ、この人はなぜエスが過去に連れて行くことを知っていたのかを話していない。もしかしたらそこが関係してくるのかもしれない。


「それに私にはもう1つ君に話していないことがある」


「なんですか?」


そう言ってひと呼吸置くと、次に桃花は衝撃の事実を口にした。


「私はこの時代の清水彩に既に接触している」


そう桃花は淡々と語るのであった。

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