桃花の掴んだ真相1
あの事件から数日後、聡は桃花を近所のファミレスに呼び出した。特に前触れもなく連絡した手前、簡単に足蹴にされると思っていたが、聡の予想とは裏腹に桃花は二つ返事で「わかった…その最初はまぁそこからだよな」と以外にもあっさりオッケーしてくれた。何がそこからなのかはよくわからなかったが、ちゃんと伝わったものだと安心していた。
そして約束の日当日。先程からファミレスの中で待たせてもらっているのだが肝心の桃花はまだ到着していない。聡は2杯目のコーヒーを飲んでいるところだった。そうして時計を見ると約束の時間からは既に30分以上過ぎていた。
もしかしたら何かあったのかもしれないと、周りの目も気になり出して店を出ようとした。会計も済ませ一度連絡しておいた方がいいかなと思った瞬間その者は現れた。
その姿は本で見るようなモデルのような格好をしており、どこからどう見て美少女だった。がその服装は明らかにファミレスに入るためのものではなかった。と言っても似合ってないわけでもない。途端に自分が今着ているがみすぼらしく思えてきた。それほどに2人の服装は不釣り合いだった。
「その、急に2人きりで会いたいだなんて君も随分思い切った行動をとるんだな。遅れたのはすまない。ちょっと身支度に手間取ってな少し遅れてしまった。その…外に着ていく服に迷ってしまってな。結局さっきあそこでマネキンの上から下までそのまま買ってきてしまったよ。ん?君は随分平凡な格好をしているがそれで良いのか?」
「はい?部長は何か勘違いしてませんか?僕はただ部長にあの時の事の真相を聞くためにお呼びしたまでですよ。この後で何処か行こうとかは考えてないですけど」
そう言い終わるやいなや、桃花の顔がどんどんと不機嫌になっていった。聡もやってしまったと思ったが時既に遅し、桃花の怒りが爆発した。
「そんなに終わったことが大切か!?少しでも期待した私が馬鹿だったよ。君から連絡を受けた後、ここに来るまでに私がどれだけもがき苦しんだか君に想像できるか?夜もろくに眠れなかったんだぞ。それをなんだ?事の真相が聞きたい?それならあの時のその場で聞けばよかったじゃないか!?なんて無駄な時間を過ごさせてくれたんだ!!」
「部長落ち着いて下さい人が見てますから。それに何を期待してたんですか?僕はちゃんと「すいません。部長にちょっと話しがあるんです。ここですと他の人に聞かれるかもしれませんので週末少しお時間いただけませんか?」って言っただけですよ」
「紛らわしい!!」
「そうでしたか?すいません。とりあえずここでは注目を集め過ぎてしまったので後のことは移動しながら話しましょう。流石にこのまま中には入れません」
「ちょっと待て!私はまだ……っておい」
そう怒鳴る桃花の腕を強引に引っ張って聡はその場をあとにするのであった。桃花は気にしているかわからないが、先程から周りからは二人の様子はデートで喧嘩しているカップルにしか見えなかったのだろう。大きな声ではないがひそひそと陰口を叩かれている分余計に聡は気になってならなかった。
それからしばらくのあいだ走り続けた。いつだったかもこんな風に走らされた覚えがあるがその時とは違う。相変わらず自分の体力のなさに少し惨めに思えた。間違いなく綾の時より体力がない。少し鍛えようかな?聡はそんなことを考えていた。
やっとの思いでその場をなんとか逃げ切ることができた。だが、はっと思い聡は桃花の方を振り返ったが、やはり桃花はその場に蹲っていた。体力の問題ではない。むしろ走る体力なら桃花の方があるかもしれない。ただこの日の桃花は聡とは違い運動に適した服装ではなかった。そのせいかどうにも靴ずれを起こしてしまったようであった。
「君のやってることが、全て計算ずくなら流石の私も脱帽するよ」
そう言って桃花は少し腫れた足を擦るのであった。こんな軽口を叩けるようならそこまで容態は悪くないかもしれないが、これ以上桃花に走らせることはことは流石にまずいと思った。と言っても気の利いた言葉も出てこなかった。そしてとっさに口にした言葉は。
「その……おぶりましょうか?」
「断る!だいたいこれは君のせいだからな君があんな乱暴に私の腕を掴んで走り出すからこうなったんだぞ」
「いや本当にすいません。お詫びと言ってはなんですがあそこで少し休憩しまんか?足少し休めた方がいいですし、ここは僕がもちますので」
そう言って聡は目の前にあった。落ち着きの良さそうなカフェを指差した。途中で色々あって有耶無耶になりかけていたがそもそも桃花をここに呼んだのは事の真相を知るためだ。予定とは違う場所になってしまったが桃花が動けなくなってしまった今、むしろ話を聞くには絶好のチャンスかもしれない。
「私を雫と同じと考えるなよ!食べ物ごときでつられはしないぞ」
「そうですか残念です。じゃあ食べなくてもいいので僕に付き合って下さい。部長は足が治るまで僕が1人でケーキでも食べて時間を潰してますのでその様子を見ていて下さい」
「1番高いのを頼んでやる」
そう言って桃花も観念した。何を言っても結局自分が一番怪我の具合がわかっている。歩くには少し辛いしだからといってこのままでもいられない。それにほんの少しだけ10000分の1ぐらいはこちらにも非がある気もした。そう思って起き上がろとした時。
「なんだこれは?」
「何ってそのままじゃ歩けないでしょ?流石におぶって中には入れませんが肩は貸しますよ」
こういうのがずるいんだ。やはりこの男、全て計算してやっていないか?
「今度は優しく握ってくれよ」
「わかってますよ」
こうして2人はカフェへ入って行った。




