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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
本編
62/71

真相

少女が入って行ってた雑木林の中。聡が必死に少女を探している中、別の場所では新たな事件が起きていた。


「ここか、随分手の込んだことをしたもんだね」


「あなたが直接私を追いかけに来るなんて思いもしませんてましたよ。もう人間には興味ないんでしょ?」


「そりゃまぁそうだけど、ぼくの顔と名前を勝手に使っておいてよくそんな言葉が出るねシローネ」


雑木林の中では1人の少年と1匹の白猫が対峙していた。ただこの者たちは普通の人でも猫でもない。共に人間の世界からはかけ離れた魔法を操る。そんな者たちが久しぶりの再会を果たした。


「勝手?あなたが私にくれたんでしょう。この顔も名前もそしてこの力も。それに私のイニシャルもSですし嘘はついてないですよ」


「本当、昔から言い訳は得意だよね。全くぼくの望んだ使い方をしてくれなかったくせに」


「そうでしょうか?あなたの仕事を全部私に任せていたあなた自身の怠惰が問題なんです」


「むむ、クローネはそんなことは言わないのに君はぼくの友達として失格だよ」


「やめてくれませんか?そんな薄ら寒い言葉。それに私をあんな馬鹿な猫と一緒にしないでくれませんか。あんなのと同列に扱われたくありません。私の沽券に関わります」


そんな親しげに話をするこの者たちはかつては友であり、師弟であった間柄ではあるが、今はそんな関係ではない。辺りは他の人の気配など全く静かな夜が独特の緊張感を作り出す。


「あーあーもう。捨てられてた君を助けてあげたの誰だったけ?」


「そんなこと忘れてしまいました。それに既に借りは返しましたよ。私がどれだけあなたの仕事を手伝ったと思っているんですか。結局あなたにとって私なんか都合のいい身代わりでしかなかったんでしょ?」


「………」


それは言葉は半分当たっていた。このシローネという白猫が魔法の力を使えるのはエスが力を授けたことによるものである。シローネ自身も素晴らしい素質の持ち主でエスの力を今では自分の力として完璧に使いこなしている。


ただ、エスがシローネに仕事を任せていたのは単純に自分で仕事を面倒くさい面もあったが何より信頼していたからだ。しかしシローネには自分を都合よく使うための言い訳にしか思えなかったし、最初はシローネ自身もそれで良いと考えていた。あの事件がおこるまでは。


「それにあなたからもらった力は既に私のものです。力を贈与したのはあなたのミスですね。確か今は貸与にしているんでしたっけ。また裏切られるのが怖いからですか?」


「随分前に出て行ったくせによくこちらのこと調べてるね。ひょっとしてぼくがクローネばかり可愛がるから嫉妬しちゃったのかな?クローネに力を渡さない理由はそんなことじゃないよ。クローネは君と違ってまだ力を上手く扱えないからもしものときのための保険さ。だからいずれ渡してもいいと思ってるよ」


「ふふ。そういうことにしておいてあげます。提案なんですが、昔の好で私を逃してくれませんか?見たいものは見れたので私はもう姿を消そうと思っていたところです」


「ぼくはあまり人には興味ないけどさ。人の恐怖する姿や、絶望する姿を見たいと思う君も相当危ないやつだと思うよ。今回のことも全て君が仕組んだことだよね。よくもまぁここまで手の込んだことをしたものだと思うよ」


「なんのことですか?」


「とぼけないでよね。清水彩を時空間転移させて、交通事故を装い。相沢綾の魂を清水彩の体に移したのは君だよね!」


「そのことですか?そうですよ。本当は純粋に人というものを見てみたかっただけなんですが、いろいろ予定外なこともあってそれなりに楽しかったですよ。さらにあなたが関わってきたことで私は計画を変えました。正直思っていたより面白くなかったんですよね。清水彩は何を勘違いしたのかあっさり現実を受け入れるし、相沢綾は記憶喪失になるし私の思い描いたものと違ってしまったんですよね。だから感謝してますよ。あなたが相沢聡というおもちゃを提供してくれたことには」


シローネはあっさり自分の行ってきたことを認めた。今更エスに嘘をつく必要はないと感じたのだろう。


今回の事件はエスの言うとおり全てシローネの仕組んだことである。


まず清水彩を未来に送った。正確に言えば白猫であるシローネの後を追っていた清水彩がたまたま未来についてきてしまったのであるわけだが。実はあの転移魔法は場所だけでなく時間まで転移できる。場所の転移とは違い時間の転移は体に相当負荷がかかる。具体的には激しい吐き気や嘔吐などに見舞われる。聡や綾が嘔吐したのもそのせいである。


当然彩にも同じことが起こった。意識が朦朧とした彼女は結果として道路に出てしまい。交通事故に遭ってしまった。


清水彩を助けてようとし相沢綾も事故に巻き込まれた。たまたま近くで見ていたシローネはあることを思いついた。それが今回の事件の発端である。綾の魂を彩の体に移して人間観察しようと考えたのだ。ただそれだけでは満足できなくなり、匠に人の心を唆して今回の事件を起こした。


「お兄ちゃんを君にあげた覚えはないけどな。一応クローネ見張らせておいたけどまさか夢で接触してくるなんて陰湿なことしてくるね」


「あれは傑作でしたよ。相沢聡、相沢綾そして清水彩。3人ともいい表情を私に見せてくれました。本当にあれはいいものでした」


「それにしても清水彩を殺したのは不味かったね。あれがなかったらぼくはこのことに気が付かなかったかもしれないよ」


「あれですか?あれは予想外ですね。少しだけ理性を外す魔法をかけましたが、あんなにあっさり人って死ぬものなんですね。さてとおしゃべりもここまでです。用が済んだならこの結界早く解いてくれませんか。私は次のおもちゃを探しに行きたいので」


そうシローネは急かした。シローネも時空間転移魔法を使うことができる。しかし、こうしてエスの目の前に姿を残しているのはエスがそれを阻害しているからである。今この空間は中からも外からも隔離された特別なものとなっている。


「残念ながら君を逃がすわけにはいかないよ。君が人の死ぬ瞬間を見るのが好きなのは知ってるからね。初めて殺した相手は君を捨てた人間だったけか?それから君はぼくの前から姿を消した。今回もここで待ち伏せてれば必ず現れると踏んでいたんだよ。そうぼくは清水彩を救いに来たんじゃない。君を始末しに来たんだ」


「昔話をペラペラとあなたのそういうとこ嫌いでしたよ。せっかく逃げる口実を与えてあげたのにあなたも鈍いんですね」


そうシローネはエスをを挑発する。


「まさかとは思うけど君はぼくを倒せるとでも思っているのかい?誰がその力をあげたと思ってるんだい?」


「あなたこそいつまで主人ずらするつもりですか?言っておきますが私には今まであなたのような追っ手が3人ほど送られてきました。まぁ3人とも返り討ちにし、死体はネズミ共にでも食わせましたがね。私の力も以前とは比べ物にならないほど進化してますよ。あなたを凌駕するほどにね」


「本当に君をあの時取り逃がしたのは失敗だったかな。あのせいで上にはこっ酷く怒られたからね」


「なら、私に感謝して下さい。2度とその方に会わなくて済むようにしてさしあげますから」


こうして2者の戦いは幕を開けた。

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