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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
プロローグ
6/71

尋問

「それでよければ私に詳しく説明してくれないか?」


この人は2年4組神宮寺桃花。

2年生ということはいわゆる先輩にあたる。もちろん面識はなかった。


桃花の強引な誘いによって聡と綾は超常研究部なる怪しげな部屋に拉致され、今テーブルを挟んで対峙する形で座っている。


この部屋が部室なのだろうか?高校に入学してすでに1ヵ月はたつがこんな場所は知らない。

辺りにはよく分からないものが散乱していたが、冷蔵庫やポットなどといった電化製品もしっかりと置かれていた。しかしそんなことは今気にすることではない。


「なんのことですか先輩?」

聡は苦しい紛れに惚けてみせた。


「いまさらそれはないんじゃないかなー君たちの感覚が繋がっていることは先ほど証明したばかりだ」

桃花の指摘に緊張を隠せない、なぜこの人はここまで知っているのだろうか?


「ふーんあくまでしらをきるか」

その瞬間桃花は突然聡の足を踏みつけた。


「「うっ」」

思わず2人同時に声を出したのは失敗だった。


「おとなしく白状するのです」

少女はがティーカップに紅茶を入れてこちらに運んできた。


この子は名前と雫というらしく桃花の助手だ。


「僕たちをどうするつもりですか?」

聡は質問した。ここまでばれてしまったのだ、誤魔化すのは無理だろう。幸い全てが知られているわけではない。まさか向こうも中身が聡1人だとは思っていないだろう。


「私は自分に理解できないことがあるのが許せない。だから感覚の共有なんてずるいから私の協力者になってくれ」

それが桃花の要求だった。


「えっ」

間の抜けた声が出てしまった。てっきり怪しい組織の一員で僕たちを捕らえ解剖やら薬付けやら危ない研究をするのかと思っていたがどうやら違うらしい。この人はただの個人的興味で接触してきたのだ。


聡は考えた。もしかしたら彼女たちは綾の魂を探す手伝いをしてくれるかもしれない。なぜかこの人たちは僕の秘密を知っている。ならいっそ打ち明けてしまった方がいいのではないか?


そんな時、ふと目をむけるとあの黒猫が部屋の隅でエサを食べていた。


「にゃー」


「にゃーじゃないよお前いままでどこにいたんだ。急にいなくなりやがって」

聡は黒猫を捕まえるとそう問いかけた。


そうだあの時以来だ。てっきり協力してくれるものだとばかり思っていたが黒猫は聡の前から姿を消したのだ。かと言って仮に綾の魂が見つかっても戻す力を持っているのはこの黒猫なわけだ。その時までもう現れないものだとばかり思っていたがその黒猫がこんな部室の片隅で餌を食べていたのだ。


「放すにゃー」


「あーそれか世にも珍しい話しができる猫だ先日拾った」


知ってるよ。むしろ僕以外の人とも普通に会話していることに驚いた。

まさか桃花先輩に僕たちのことを話したのは…


「違うにゃー」

相変わらず人の心がよめる猫だった。


「面白いやついにゃーかと聞かれたから名前を教えただけにゃー。魂のこととか入れ代わりのことは話してにゃいにゃー」


後ろで桃花先輩の目付きが変わるのがわかった。おそらく桃花先輩は黒猫の話を聞いて僕と綾が感覚がリンクしていると勘違いしたのだ。うかつだったてっきりすべて知られているものだとばかり思っていた。


そして今すべて知られてしまった。


「全部ばらしてんじゃーねーよ」


「綾ちゃんだっけか。詳しく話しが聞きたいなー」

桃花の目は獲物を見つけた目をしていた。


「実はずっと不思議に思っていたんだ。この部屋に入ってから。君が一言も話さなかったことがね」


綾のカップを持っている手が震え上手く紅茶が飲めなかった。もうこの人に嘘をつくことは無理だ。聡は観念してすべてを桃花に話した。



「ふーんそんな面白いことになってたんだー私の想像以上だ」


結局ことの顛末を洗いざらい話すことになった。正直気味がられても文句の言えない境遇だ。まさか実の妹の体を兄が操っているなんて。そん中か桃花から出た一言は意外なものだった。


「○○××はどうしてるの?」


どえらい下ネタ発言だった。一瞬自分のほうが聞き間違えたかと思った。桃花の見た目は校内1といっていいほど美人である。そんな先輩からは想像できない一言だったからだ。


とっさの判断で綾の体で雫の両耳をガードした。雫には聞かせたくない。こんな子に男女のあれやこれやを話すのは早すぎる!


「子どもの前で何言ってるんだこの変態!」


「えーだって気になるじゃないか、それに雫はあなたと同じ学年よ」


「そう言う問題じゃねーこんな下世話な話し聞かせられるかー。それに見た目小学生だよ犯罪じゃないか」

ひょっとしてこっちがおかしいのだろうか?いやそんなはずはない。やっぱりこの人は害でしかない。


「でっどうなの?」


「してないです」


「だって男と女の体を手にいれてるだよ。極めればどこだっていけるよ」


「いきたくありません。それにこれは綾の大事な体です。傷つけません」


「それでもトイレやお風呂で」


「くどいです」


神宮寺桃花、恐ろしい人だ。黒髪で背も高くスタイルもいい。黙っていれば誰もが憧れる女子高生だ。それがこんな変態な人だったなんて。聡の幻想はことごとく打ち砕かれた。

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