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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
本編
56/71

Aya soul side 目覚め

目が覚めた時それは見慣れた場所だった。そこには自分の部屋の天井が映っていた。時計の針を見るとまだ6時30分。どうやら目覚ましが鳴るのより早く起きてしまったようだ。


いつものように体を起こしてみると自分が汚れていることに気付いた。腕や脚には草でひっかいたような跡があり、所々虫に食われた後もあった。爪の中にはびっしり砂が詰まっており、それはまるで畑仕事をした後のようだった。それになぜか体のあちこちが痛い気がする。


(いやだなもう。なんでこんなに汚れてるのよ。昨日はちゃんとお風呂に入ったんはずなのに………)


返事はない。


(………私は何を期待しているのだろうか?)


私は本当に何をしていたんだろう?彩はそう思いつつも真っ先に風呂場に向かった。先ほどから体がむずむずして仕方なかったのだ。裸になって鏡を見るとそこには当たり前のように自分の姿が映る。特に何も変わった様子もない。少しぐらい成長してもいいのにと悪態をつく。


蛇口をひねるとそこからは温かいお湯が流れた。シャワーで体を流しているとなんだか汚れと一緒に大切なものまで流れていくような気がしたがそれが何かは思い出せない。


胸の中からぽっかり何かが抜け落ちた感じそれでもその感覚は決して嫌なものではなかった。それどころか少し大きくなれた気がした。


「あら?朝からシャワーなんて珍しいわね」


そう声が聞こえると母は脱衣所に着替えとタオルを用意してくれた。シャワーが終わると母が用意してくれた服に着替える。食卓にはすでに朝食の用意がされていた。


「はい、いつもの。ちゃんと全部食べてよ。日が切れたらもったいないんだから」


トーストに目玉焼きにサラダ、あと焼いたウインナーそれと納豆。この組み合わせではひときわは異彩を放つ納豆。それを自分で買ったのは覚えている。月のお小遣いをすべてこれにつぎ込んだ。だけど何でこんなことしたのだろう?もう覚えていない。


「わかってるわよ」


そう言ってぶっきらぼうに納豆をかき回した。納豆は別に嫌いじゃないし苦にはならない。だけど嫌い?納豆な嫌いな人がいたような気がする。そう思いながらトーストにそれを載せて咀嚼する。うんなかなかね。


「それと彩、あなた包丁知らない?朝確認したんだけどどうも1本なくなっているのよ」


食事中、母がそんな質問をしてきた。


「しらないわよそんなもの」


本当に心当たりがなかった。そもそも彩に料理を作る趣味はなかった。女の子なんだからそろそろできた方がいいわよと母は言うが余計なお世話だ。母もそのことは知っているのでより一層不思議がった。


「変ねー捨てた覚えないんだけど」


「泥棒にでも入られたんじゃないの?」


「まさか!?」


そう言うと母は慌てた様子で家中何か盗まれたものがないか探し始めた。その慌てようを見るとそう言ってしまった自分が少しいたたまれない気持ちになった。冗談で言ったつもりなのに………


母が一通り家を見て回ったが何も取られたものはなく外から侵入された形跡もなかった。ひとまず警察への通報はあきらめたようだった。


そんなことをよそに納豆の容器を捨てに行ったとき、ごみ箱の中に紙がくしゃくしゃに丸めて捨てられていたのが見えた。ふとそれを手に取ろうとしたがやめた。それはもう必要のないものに感じたからだ。結局その上に納豆の容器を捨てその紙を2度と見ることはなかった。


「お母さん。私もう学校行くからね」


そう言って彩は家を出た。


外は気持ちの良い快晴だった。それはまるで今の彩の心境を映したような気持のよい晴れようだった。そうだ今日は学校で友達と何をしようかなと考える。


(友達は大切にしなくてはいけません)


どこからそんな声が聞こえた気がした。振り返るとそこには誰もいなかった。彩は再び前を向いて歩きだした。

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