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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
本編
53/71

来客

いつものように勝手に開く部室の扉、そして間の抜けた声を発しながら部室に入ってくる黒猫の光景は見慣れたものだった。聡の心配とは裏腹に黒猫は今日も暢気なものだった。しかし1つ見慣れない光景が聡の目に映った。黒猫の後ろには夢で見たあの少年が立っていたのだ。


一瞬ドキッとしたが、あの気品のよさそうな顔立ちは見間違いではない。少年はこちらを見るとニコッと笑いかけてきた。軽く会釈は返したがうまくできていただろうか?どうもこちらの心が見透かされているような気がした。


「うーん。私が予想してたより1時間くらい早く着いたか少し修正しておかないとだな。おや?どうした聡君。何かあったのか?」


「部長。あの黒猫の後ろにいる少年は……」


「はあ?そうだな。まさに噂をすればなんとやらだな。まさか向こうの方からじきじきに会いに来てくれるとは思ってなかったが手間が省けた。それにしても一時は会ってもくれなかったのにどういう風の吹き回しだ?」


「ちがうんです部長。あそこに立っている少年は僕の夢に出てきた少年なんです!!」


聡は桃花にそう打ち明けた。先ほど桃花は聡の夢に出てて来た少年エスに対して、明確に敵であると断言した。その少年が今まさに目の前に現れたのだ。とは言ってもその少年を黒猫が連れてきた。黒猫に脅されている様子はない。である以上彼が黒猫の主人なのは間違いないということになる。いったいどれ正しいのか聡は混乱した。


そんな聡とは対照的に桃花はいつもの態度を崩さない。それは相手が()()()()()でなくても同じことだ。


「おやおや、来客かな?いつから私に許可なく他人を招き入れる身分になったのかな黒猫よ」


出会って早々これである。


「にゃーそっちが会いたいって言ったから連れてきたのにその態度は何にゃ!!」


「これは失礼したねーあんまりぼくのクローネをいじめないであげてくれ。ぼくが無理に頼んで連れてきてもらったのさ。それともやっぱりお邪魔だったかな?」


「いや、むしろ好都合だ。ようこそ私の部室へ。あまりもてなせるものはないがゆっくりしていってくれ」


桃花がそう言い終わったところで聡はたまらず桃花を強引に奥へ引っ張り、耳打ちした。急に聡に手を引っぱられた桃花は少し動揺したようだった。


「人の話聞いてましたか?偽物かもしれないんですよ」


引っ張られた手を振りほどき桃花は語った。


「ちょっとなんだ人前いきなり、君は見かけによらず強引なんだな」


「こっちはまじめに心配しているのにふざけないでください」、


「別に夢に出てきた少年が黒猫の主人かはこの際後回しだ。せっかくあちらさんから出向いてくれたんだ。結論を出すのは話を聞いてからでもいい」


「でも危険なんじゃ?」


「君は馬鹿か?我々はすでに向こうの手の上にいるのだぞ。仮に今すぐ全力疾走で逃げたところで逃げ切れる保証もない。後は最悪の結果にならないように祈るくらいだ」


桃花の言うとおりである。こちらは人間で向こうが魔法使いである以上勝てる見込みはない。力を借りている黒猫ですらあれだけの力が使えるのだからその主人の力など測ることはできない。主導権はあちらにあるのだ。向こうもあくまでも対話を望んでいる以上直接手は出してこないあろうが、警戒心は解くことができない。


「相談事は済んだかな?そろそろぼくは入ってもいいのかな?」


2人のやり取りを遠くから見ていた少年はそうつぶやいた。覚悟を決めなくては聡はそう思った。


「ああ、別に構わないぞ、むしろ私も君とはじっくり話してみたいと思っていたところだった」


「それじゃあお言葉に甘えて」


そうして聡たちは謎の少年と向かい合う感じで席に着いた。少年は辺りをきょろきょろしながら物珍しそうに部室を見渡していた。こうしてみると年相応に見えなくもないが油断できない。万が一のために雫たちには適当な理由をつけて席を外してもらった。桃花が「黒猫の餌が切れててな一緒に買ってきてくれ」と機転を利かせてくれた。当然それは嘘だったがこれでこの部屋には3人だけになった。


「そんな警戒しなくてもいいのに。ぼくはただ話をしに来ただけなのに」


警戒するなと言われても否応なく身構えてしまう。見た目は子供でもその気になれば聡たちを殺すこともたやすいだろう。その無垢な笑顔の裏に何かが潜んでいる気がしてならなかった。


桃花はそんな中でも怖気づくことなく話を切り出した。


「さてとはじめましてかな?私は……」


「ああ自己紹介はいいよ。だいたいはクローネから聞いているから。お姉ちゃんが桃花でお兄ちゃんが聡なんでしょ。ぼくはエスって言うんだ。よろしくね」


同じ名前だ!!聡はとっさにそう思っが、どこかあの時と違和感を感じた。違和感の正体はもちろん。


「その、クローネっていうのは……」


「クローネ?クローネはぼくの友達だよ。かわいいでしょ」


クローネ?黒猫よお前の名前だいぶ適当につけられていないか。聡は少しだけ同情した。


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