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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
本編
46/71

帰宅後

今日は本当にいろんな事があった。いやありすぎたぐらいだ。聡は今日のことを振り返ってみた。


本来聡は美穂と会うだけの予定だったのに、桃花や雫、それして望まで意図しない出会いが続いた。そして2人の女の子の気持ちを知ってしまった。


聡にとって女の子に好かれるということは素直に嬉しいことだった。今までそんな事はなかったので本当なら舞い上がって喜びたい衝動に駆られた。しかし今はあまりに間が悪すぎた。今の聡にとても2人の気持ちを受け止めれる余裕はない。そのことが綾のこととは別に聡を悩ませていた。


「どうしてこうなったのかな?」


聡はベットに仰向けに横たわり美穂からもらったキーホルダーを眺めながら考えた。美穂が渡したのはメスの母イルカの方なのかと聡はパンフレットを見て気づいた。間違えたのかな?と思ったが真相を確かめる術もなかった。あのときの美穂の顔を聡は見ていなかったがきっと必死だったんだなと思った。


そして聡の記憶にもう1つ残っていたのは望の泣き顔である。望の泣き顔を見たことは小さい頃に何回かあったが、望が今も自分のために泣いてくれるやつだとは知らなかった。


そして自分のしてきたことに聡の良心は痛むのであった。聡は2人に綾の秘密のことを隠している手前どうしても後ろめたさがあった。いやむしろ2人を騙して知ってはいけないことを知ってしまった分たちが悪い。


そして最後に綾のことにたどり着くのだった。聡が今の生活を続けているのも全ては綾のためである。そのためには自分を犠牲にしても構わないと思っていた。だか、そこに自分以外の誰かが絡むとなると途端に決意が揺らいでしまう。聡はどこかで非情になりきれずにいた。


「よし、この件は終わり」


もちろん何も解決などしていないし、勝手に終わらせていいものでもないが今の自分に解決出来る問題ではない事は聡もわかっていた。全てが終わったら真実を話そう。そのときに嫌われても蔑まれても仕方ないことだと割りきった。


そして次の問題は消えたとされる女の子である。結局聡は美穂に撮影者の連絡先を聞けなかったが、どのみち直接自分があったところで変わらないと考えた。聡も始めは目撃者の見間違えかと考えたが、以前黒猫が話したことが引っ掛かっていた。それはこの事故に関係あるとされる黒猫のご主人様だ。黒猫の様子からしてその人も超常的な力を使えるらしい。その人なら女の子を消すぐらいわけなくできそうだが、どこで関わっているかわからない分全ては推測の域を出ない。


「わからない」


結局聡は自分が無力であることを痛感した。


今回のことだってあわよくば行方不明の女の子の居場所がわかればと思っていた。しかし、物事はそう易々と思い通りには動いてはくれないものである。女の子の写真が手に入ったかと思えば姿を消したと言うのだ。


ふと時計を見てみると時刻はまだ21時前だった。聡の生活は規則正しい。それは生活習慣を崩すと2つある体のどちらかに支障をきたすおそれがあるからだ。普段ではまだ寝る時間ではないのだが何故だか今日はやたら疲れていた。それは肉体的な疲れなのか心労なのかはわからない。綾の体の方も既に限界だった。聡は仕方なく今日は早めに寝ることを決意した。


余談だが聡はこの体になってから夢というものをみなくなった。レム睡眠ノンレム睡眠など科学の観点どう捉えるのかはわからないが、少なくとも今起きていることが既に科学の外のことなのでそんなこといちいち気にしなくなった。


聡と綾がベットに横たわってから寝るにいたるまではあっという間の出来事だった。


なんだろうこの感じはどこかで感じたことのあるような……


この日聡は久しぶりに夢を見るという感覚に陥った。


いや?違うこれは夢じゃないこの感覚は確か……そうだ!これは黒猫と会った時と同じだ!


「初めましてかな?それともこんばんわが正しいのかな?」


この声の感じは黒猫ではない。聡は直感的にそう感じた。辺りは暗く声のする方を見ても顔が見えない。だが声の感じからして子供?そう男の子のような感じがする。


「あっごめんね、自己紹介がまだだったね。ぼくはそうだなー。便宜上エスってことにしておこうかな」


エスと名乗った人物の顔が徐々に浮かび上がってきた。その顔はどこにでもいそうな少し気品の良さそうな顔立ちをしていた。


「君は誰だい?」


聡はそう質問した。もちろん聡にはこのような少年の知り合いはいない。もしこれが夢ならばなんて変な夢を見ているのだろうと思った。


「黒猫から聞いてないかい?ぼくがその黒猫の主人だよ」


「本当に!?」


聡は驚いた。目の前にいる少年が黒猫が言う魔法使いだというのか?それにしてはあまりに幼すぎる。いやもしかしたらこの姿は仮の姿なのかもしれないが、少なくとも聡がイメージしていたそれとは全く違っていた。


「今日はねお兄ちゃんに大事な話があるんだ」


大事な話?大事な話とはなんだ?森さんのこと望のこと桃花先輩のこと雫のこと黒猫のこと行方不明の女の子のこと夢の中だからなのか思考が上手くまとまらない。そしてやっと気づいた。聡にとって大切なことは綾のことだ。


「大事な話とは?」


「お兄ちゃんの妹はもう帰って来ないよ」


エスと名乗る少年はそう告げた。

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