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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
本編
41/71

水族館6

エマージェンシーエマージェンシー緊急事態発生!!

聡の頭の中は混乱していた。


何故ここに望がいるのか、最悪なタイミングである。目の前には森さんと望、2人の姿が映っている。ダメだこの2人を会わせるわけにはいかない!落ち着け、大丈夫だ。聡は自分にそう言い聞かせた。


幸い今の僕と綾の位置はかなり離れている。水族館は一本道である以上適切な距離を保っていれば互いに接触することはない。つまり、僕が上手く2人を誘導すればいいだけだ。そうすれば互いに接触することなくこの難を乗り切れる。聡はそう考えた。


しかし、聡にも気づいていないことがあった。そもそも望に美穂との関係を隠す必要はないのである。現在、聡と望は付き合っているわけではない。幼馴染みではあるが最近まで会話すらしてなかった間柄だ。だけど聡はどうしてもそのことを隠しておきたかった。


森さんより望の方が好きだから?そんな理由でもない。とにかく今の自分は自分でもわからないくらいあやふやな状態にある。このまま2人を接触させてしまえば何か取り返しのつかなくなるようなことが起こる気がしたのだ。


まずは情報収集からだ。しかし、週末に水族館に来る理由など限られている。少なくとも1人で来るところではない。そう思って望の周りを確認してみても誰かを連れている様子もない。それに今日望と遊びに行く約束はしていない。綾がそうならおそらく遥や恵子という線も考えにくい。まさか、望に彼氏が!?いや、毎日一緒に過ごしていたが望にはそんな気配はなかったはずだ。


「その望さんは今日はどうしてこちらに?」


綾はおそるおそるそう尋ねた。


「えっ私?それはその~これが欲しくって」


そう言って望が見せてきたものには見覚えがあった。それは聡が美保に見せられたパンフレットと同じものだった。イルカのキーホルダー望もそれをねらっていた。


しかしここで聡はある疑問を抱いた。あれはたしかカップル限定だったはずだ。そう思って望かま見せてきたパンフレットを確認したがやはりカップル限定と記載されていた。パンフレットに書いてあった注意書きが小さかったせいかおそらく望はその事実に気づいていない。


「すいません、望さん。それカップル限定ですよ」


「えっ」


その時の望の表現は忘れられない。子どもがいきなりお気に入りのおもちゃを取り上げられた。そんな感じだった。本当に見落としてたのだろう。望の目的は見事に打ち砕かれた。


望は何回かパンフレットを見直して見たが、書かれているその文字が消えることはない。


「何でなのよー」


望は叫んだ。周りの目がこちらに注目するのが分かった。しかし望はお構いなしに文句を続けた。


「おかしいよね?これもう差別だよね綾?何で何で世の中カップルだけ贔屓するのよ!カップル割りとかカップル限定とか私に対する嫌味なの!?同じ客なんだから平等に扱いなさいよね!」


「落ち着いて下さい!人が見てますから」


綾は必死に望をなだめた。気持ちは分からないでもないが今回の件は見落としてた望に非がある。せめて気晴らしに付き合ってあげようかと考えた矢先のことだった。


「そうよ!?アイツを使えばいいのよ」


その望の言葉に悪寒が走った。今の望の考えは手に取るように分かる。その方法は既に2回目だ。聡はヤバイと感じた。しかし、今ならまだ間に合う。何故なら望は僕の連絡先を知らない。だからこの場から綾さえいなくなってしまえば……


「あっすいません。私用事を思い出したのでこれで失礼します!」


「綾~私たちって友達だよね~」


そう言って望は綾の腕をかっちり掴んだ。まずい完全に逃げる機会を失った。望の行動を監視しようとした聡の思惑は全て裏目に出てしまった。


「そうですねー」


「ちょっと勉強しか取り柄のないアイツに連絡してくれないかな~」


「わー誰のことでしょうね~」


「綾……一生のお願い」


望の一生のお願いがこれが初めてなのかは僕にはわからない。おそらく何回かは使っていると思う。しかし望は記憶喪失の綾にそれでも友達でいようと言ってくれた友達でもある。そんな望のお願いを無下にすることもできなかった。


「わかりました。ただし私は繋ぐだけですからね!連絡は自分でしてくださいよ」


「OKOK分かってるって、だってアイツのことだからどうせ暇してるでしょ」


言えない。先ほどまでカップルどうのこうの言っていた望の前では仮の彼氏とはいえデートしてますとは言えるわけないじゃないか。


綾は聡の連絡先の入ったスマホを望に渡した。



どうしてこうなってしまったのか?聡は望からの連絡が来る自分のスマホを握りしめていた。


「相沢さん知ってますか?ハリセンボンというのは……」


美穂は先ほどから上機嫌である。実はこう見えて魚の生態について詳しいのだ。幼少期から1人だった美穂の好きなことは本を読むことだった。そして今こそ自分の知識をひけらかすことができる。先ほどまでの失態を払拭すべく、自分が年上で博識であることアピールしたいのだ。そんな美穂が今、聡が抱えている問題を知るよしもなかった。

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