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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
プロローグ
4/71

登校

今朝は母に怪しまれてしまった。年頃の兄妹というものはどの程度会話すればいいものなのか聡にはわからなかった。以前の綾なら「お兄ちゃん」と気軽に話しかけてくれたので聡の方から積極的に会話することはなかった。


会話は全く必要ないのだが。

聡は歩きながらそう思った。しかし母にこのままでは不思議に思えわれてしまう。せめて母の前では仲の良い兄妹を演じなくてはならない。


「おはよう綾」


「おはようお兄ちゃん」


歩きながらこんなことをしていたらはたから見れば不思議に見えるだろうか?だってこれは会話というより演劇だ!


あらかじめ決めておいたセリフを人前で話す。わかっていてもやる意味を感じないが全く会話のない仲の良い兄妹もおかしいものだ。綾との会話のバリエーションをもっと増やさなければと聡は思った。


「おはよう」

突然声をかけられたことに驚き振り向くとそこには大山望がいた。


「おはよう」

と綾が返事をする。望は綾の友達だちだ。兄の自分が混ざるのおかしいので聡は一歩後ろに下がった。


「ひょっとしてお邪魔でしたか?」

望がからかった様子で聞いてくる。望にはいつもこんな感じだ。聡である自分には全く話してくれないのに相手が綾だと饒舌になる。中身が聡であることはもちろん打ち明けていない。


「そんな、変なこと言わないでよ望さん」


「もー望でいいっていってるのにー」

望は綾が記憶喪失だと知っても変わらずに接してくれる。そうしてたわいのない会話が行われる。


この時聡はできるだけスリープモードにしている。できないわけではないが思考はなるべく1つに集中したい。なぜならとても疲れるからだ。あらためて聖徳太子は本当にすごいと思った。聡には2つですら困難なのだ。


このまま何もなければいい。ただ厄介なのは………


「よっ聡、なんだ相変わらず妹のケツばっか見てシスコンか?」


「ちげーよ、ばーか」

金田智樹、こいつは僕の友達だ。今は本当に間が悪い。


「綾?聞いてる?」

返事のない綾に望が問いかけてくる。


あっまずい………


「ごめん望さん聞いてなかったです」


「もう綾ったらまた記憶なくしたらしょうちしないんだからね」


こんな風に2人同時に話しかけられるとフリーズしてしまう。2人並んで登校できるようになっただけでも奇跡なのに普通に暮らすにはそれ以上のことを要求される。

聡はまだまだ体は上手く使えないのである。



プロフィール

1年2組大山望15歳

聡と綾とは保育園のころからの幼馴染。

綾の友達であるが中学のころから聡とは会話していない。


1年2組金田智樹15歳

中学生の時からの知り合い。聡の数少ない友達。

だいたいいつも文句を言いあう仲。

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