スクープ!?4
それから数日後
「ずいまぜんでじだ」
1人の女子生徒が桃花の前で土下座した。その姿を見ながら椅子に腰掛け紅茶を飲む桃花の姿はとても様になっていた。
どうしてこうなったか経緯をたどると。
桃花はあの後、聡たちには普通に生活するように指示した。変に不可解な行動をしてしまっては向こうに気づかれてしまうからだ。聡は桃花の指示通り普段と変わらない生活をした。そして桃花は1人水面下で行動していた。
桃花の行動はこうだ。
手に入れたビデオカメラの映像により犯人を特定した後。極秘ルートで犯人のメールアドレスを手に入れた。そこから先は一方的な脅迫だ。
「いつになったら次の記事ができるんだ!」
「そんな中途半端なジャーナリズムならやめろ」
「桃花様を晒しあげた罪は重い。今すぐ死ね」
このような内容のメールを不特定多数を装い、たった1人で送り続けていたのだ。
ここまで徹底的にされると犯人に同情していまう気持ちもある。
最期はノイローゼにでもなったのだろうか、自ら自首してきたのだ。そして今にいたる。
聡ももちろん犯人にはそれなりの謝罪をしてもらおうと思っていたが、目の前で土下座している女子生徒の背中はとても小さく見え聡はとても怒る気にはなれなかった。
そんな姿にもお構い無しに桃花は命令するのであった。
「ではまず、服を脱いでくれ。君の生まれたまの姿を全校生徒に見せてあげようじゃないか。私達もいいように弄ばれたんだこれくらい当然だろ?おっと抵抗しても無駄さ!どうして私が君の連絡先を知っていたと思う?私にはそれなりの人脈ルートがあるのさ。ここで逃げてしまっても構わないが君は二度とこの校舎の土を踏むことはできなくなるよ。親御さん心配するよ確か母子家庭だったよね。これ以上母親に心配かけたくないだろう。安心したまえ顔だけは隠してあげるからさぁ早く」
「ひぃー」
目の前の女子生徒は泣き出してしまった。
もはや罰を与えるどころか完全な犯罪である。
おそらく桃花にはそれなりの人脈と社会的地位がある。彼女が一言発せればファンクラブの人間はその通り動くだろう。少なくともこの学校では彼女に逆らうことはでないだろう。
「やめい」
取り敢えず、桃花の頭にチョップをいれておいた。
「何をする!?目には目を歯には歯を、スクープ写真にはスクープ写真をだろ!君も言っていただろ、殺すだけじゃ生ぬるい犯人には社会的制裁をって」
「そこまで言ってません」
桃花は頭をさすりながら言った。
「さてと聡君、私は興が冷めた。この子の始末は君にまかせるよ」
そう言って桃花は椅子から立ち上がり、その場から立ち去った。
桃花が部室の外へ行ってしまったので聡の目の前には女子生徒が土下座したままという奇妙な空間ができあがってしまった。
殴ればいいのか?蹴飛ばせばいいのか?目の前にいるのはこの騒動の元凶なのである。
「取り敢えずこのままって訳にもいかないからそこに座ってくれるかな?」
「私は売られるですね、そうですよね。そのぐらい迷惑かけましたしね。せめて痛くしないで下さい」
と言って女子生徒は突然制服を脱ぎ始めた。
「待って違うから」
聡はあわてて女子生徒を取り押さえるとなんとか落ち着かせた。
そして改めて聞いた。
「君の名前は?」
「森美穂です」
「それでじゃ森さんどうしてこんなことしたの?」
「つい出来心だったんです。私その新聞部に所属してまして、といっても今まで誰からも評価されたことがありませんが。その神宮寺さんの知名度を使えばすごいものが作れるんじゃないかって思ったんです」
なるほど動機は単純だ。この人は注目を集めたかったのだ。そのせいでこちらは大分迷惑したわけだが。僕は教師でもないし人生についての道徳を教えて込むつもりない。しかし、このままでは帰してしまえばドア越しに聞き耳を立てている先輩に後で何にされるか分からない。何か適当な罰を考えなければならないな。
聡は思考を巡らせるのであった。
その頃
「部長こんなところで何しているですか?」
「何ってカッコつけて出てきたはいいものの、やっぱり中で何が行われているか気になるじゃないか。だからこうして聞き耳を立てているわけさ!」
「そうですか、邪魔なのでどっか行ってもらえますか?」
「痛いって綾?おのれ聡君謀ったな」
綾は桃花の手を引いてその場から立ち去った。
さてと状況を整理しよう。
連日のイタズラの犯人は桃花の手によって捕まえられた。
それが目の前に座っている森美穂。彼女が今回の犯人だ。
彼女が今まで書いた記事は誰からも評価されることはなかった。それがきっかけだったのだろう桃花というネームバリューを使えば一躍注目されるだろうと目論み、そして実際その通りになった。結果桃花の逆鱗に触れ今の状況にいたる。
話を聞けばどうやら2年生だということだがここまでの失態の数々を見るにどうにも敬える気にはなれなかった。
「その私はどうしたらいいのでしょうか?」
美穂は怯えていた。無理もないもう少しで自分の全裸写真を学校中に見せびらかされるところだったのだから。
桃花から美穂の処分は聡に渡された。「始末は君にまかせる」と言われても対応に困る。はっきり言って面倒くさい。
「あの森さんは新聞部でしたよね?その人を捜すとかってできたりします?」
「いえ、その聞き込みとかはよくやりますけどその……」
やはりいきなりは無理か、そう聡が気を落とした時。
「やります!捜します。だからあの人だけには売らないで下さい。お願いします」
このまま帰してしまっても悪い気がする。
「そうなら頼もうかな、僕には妹がいるんだけど、1ヶ月以上前に事故に遭っているんだ。君にはその時、妹がかばった子を見つけて欲しいんだ」
見つかるとは思っていない。この人には何かの罰を与えておいて折を見て許すことにしよう。聡はそう考えた。
実は聡はあの桃花の推理の後、事件現場に訪れていた。
と言っても名前も顔も知らない少女を捜すのは至難の技だ。何人かに聞き込みを行ったがめぼしい情報はなにも得られなかった。
いくら新聞部といっても会ったばかりの彼女に妹のことを頼むのは流石にまずかったかな。聡がそう思った時。
「妹さんの事故って1ヶ月以上前のやつですよねその時にいた少女を捜せばいいんですか?」
「そうその少女を捜して欲しい。顔や名前も分からないんだけどやっぱり無理かな?」
何かの違和感。何かが引っ掛かる。
少女……?果たして自分はその子を少女と言っただろうか?
「待って。その森さんはその事故のこと知っているの?誰かに聞いたとかじゃなくて?」
「知っているもなにも、私その事故の目撃者ですよ、でもそんな子いたかな?」
と美穂は考え込んだ。
「森さん!!」
聡はそんの場から立ち上がると美穂の肩をおもいっきり掴んだ。いや掴むというりよりかは押し倒すといったほうが近いかもしれない。
「その近いっす」
突然肩を捕まれた美穂は驚いた様子だった。しかしそれ以上に聡は自分の動揺に驚いていた。
1度はあきらめたことだった。まさかこんな偶然があるなんて。
ガチャンとドアの開く音が聞こえた。
誰だろうか?桃花はまだ綾が拘束している。
しまった!だとしたらもう1人しかいないじゃないか。聡が気づいた頃にはもう既に遅かった。
「雫……先輩?」
今の格好はどう見ても聡が美穂に襲いかかっているようにしか見えない。
「その雫先輩、誤解しないで下さい。僕はただちょっと熱くなってしまって」
襲いかかっている男が言う台詞ではない。言い訳すらまともに出来なかった。むしろ状況を悪化させてしまったのではなかろうか?
雫は何事もなかった様に部室に入ると静かに冷蔵庫を開けた。そして中からコーヒーを取り出すとコップに注ぎそれを飲んだ。
あれは桃花先輩の私物だ、そもそも雫は普段コーヒーをブラックでは飲まないはずたが。
そんなことを考えていると雫が口を開いた。
「大丈夫だから。私大人だから。桃花が言っていたから男は女を襲う生き物だって。私今コーヒーブラックで飲んでるよ。だからその苦いよ」
あの先輩はこの子にどんな知識を教え込んでいるんだ!そもそも襲うことを物理的に食べることと勘違いしていないか?聡は乾いた笑いしか出なかった。ともあれこの場は凌げたようだ。
「これなに?」
と雫が取り出したのは例の紙だった。クラス中に広まっているものだがまさか雫の手にも届いていたなんて。
「それは……誰が仲良しか当てるゲームです」
とっさについた嘘だが間違っていないはずた。
「そう」
雫はカバンからペンを取り出すとおもむろにマークし始めた。
相沢聡↔西野雫
えっまさか雫は僕のことを……
雫が僕に好意を寄せていたなんて知らなかった。そんな今後雫とどう接していけばいいのだろう。
しかしそのペンは止まることなく続いていく。
相沢綾↔西野雫
神宮寺桃花↔西野雫
「私人気者」
その時の部室に天使が舞い降りた気がした。
「森さん話が脱線してすまなかったね。取り敢えず、僕からの要求は例の少女の情報を集めてもらうとそれと……」
そう言って聡は雫の書いた紙を掲げて。
「これを基に新たなポスターを仕上げることかな」
「わかりました」
後日談
森さんのポスターのおかげでひとまずはこの騒動に終止符を打つことができた。
ポスターのタイトルは『部室に舞い降りた天使!?私たちは彼女にメロメロです』。
雫には悪いが雫を恋愛対象と受けとる人は少ない。どちらかと言えば可愛いマスコット的存在なのである。桃花が雫と一緒にいて全く噂が立たなかったのがその証拠である。
腑に落ちない人もいるだろうが取り敢えずいつもの生活に戻れそうだ。
聡がまた机で突っ伏していると金田がやって来た。
「どうした?賭けは当たったか?」
そんなもの当たるはずもない。あれを当てた人がいるならあって話してみたいものだ。大穴も大穴、万馬券だよ。と聡が思っていると。
「なぁ聡、やっぱりお前ロリコンなのか?」
「ちがーう」
聡の誤解だけはまだ解けてはいなかったようだ。




