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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
プロローグ
12/71

呼び方

「そんな事が今必要ですか?」

聡は質問した。

「むしろ、はっきりさせておいた方がいい、やっとこの部が部として認められたのだからな!」

桃花はそう答えた。

「ちょっと待って下さい。認められたって今まではなんだったんですか?」


よく考えれば元々部員は2人しかいなかったのだから当然と言えば当然だ。


「まぁ非公式の同好会ってところかな」


「先輩が頼めばすぐに部員も集まったのでは?」

神宮寺桃花は校内でも一二を争う美少女である。そんな彼女の頼みごととなれば、校内の男子たちは喜んで受けただろう。


「普通のやつを勧誘してもつまらないじゃないか。私が求めるのはもっと特殊な人間だ」


特殊な人間。確かに聡にはそれが当てはまるだろう。しかし、つまり雫は普通の人間ではないのだろうか?


「その疑問にはまた後日、答えるとしよう」


「まだ、何も言ってませんが」


「言わなくても顔に書いてある」

こちらの心理はお見通しというわけか。


「質問を変えますが、じゃあこの部屋はどうしたんですか?まさか学校も正式に認めていない部活にこんな部屋を用意するとは思えませんが」


「ふっふっふ。まぁこれを見たまえ」


「なんですかこれは?」


「わが校のパンフレットだ」

そう言って渡されたパンフレットを見ると、学校の紹介の欄に神宮寺桃花を姿があった。

その姿は清楚で可憐でとても目の前の人物と同一人物とは思えなかった。そうこの先輩は黙ってさえいれば完璧なのだ。


「詐欺だ」


「失礼だな君は。近年はどの学校も生徒の集客に必死だ。私はこの学校の顔のようなものだな」


「自分で言わないで下さい」


「これが、多少の無理なら聞いてもらえる理由だ、ちなみに顧問は古典の高橋先生だ。形だけだからほとんど来ないがな」


なんて用意周到な先輩なんだろうか、ここまで来るとあきれるどころかその行動力と大胆さに感心してしまう。


「それで、これからなんてお呼びすれば?」


「勘違いするな!これは私の要望ではない。そもそも私は人からの呼ばれ方など気にしない。先輩でも、部長でももしくは桃花と呼び捨てにしてもらっても構わない」


「ではなんのでこんな必要が?」


そう質問すると桃花は人差し指を向けた。その指の先にいたのは


「私です」


「雫?」

聡はそう呼んだ。


「………」

反応がない。どうやらお気に召さなかったご様子だ。


「雫ちゃん?」

今度は綾で呼んでみた。


「………」

これも違うようだ。


まさかと思い今度は2人で呼んでみることにした。

「「雫先輩?」」


「はい」

その時の雫の顔を忘れることはできなかった。「先輩」そう呼ばれたときとても喜んでおり、何より愛らしかった。

小さな女の子を誉めるとき「もうお姉さんだね」と言うと喜ぶみたいに、今まさにその感じだ。


(聡目線)対桃花

「おかしくないですか?」


「おかしいことはない、確かに年は君たちと同じだが、雫がこの部に来たのは1年も前だからな。所属年数だけみれば君たちより上だ」


「でも、そのころの雫は?」


「もちろん中学生だ」


「問題なんじゃ?」


「そのときはまだ非公式だ、問題はない。仮にあったとしてももみ消す」

桃花はいつだってたくましい。



(綾目線)対雫

「そもそも雫ちゃんはなんで…」


「………」


「雫先輩はなんで先輩と呼ばれたいですか?」


「だって先輩という響き、カッコいい」


こんな少女の要望を無下にできるだようか?いやできない。


「わかりました。以後そう呼ばせていただきます」

やっぱり雫は可愛い。




「話は終わりました。僕は桃花先輩の推理を聞きにここへ来たんです。いつになったら話してくれるんですか」


「部長」


「さっき呼び方はどうでもいいって」


「私も雫に感化されたのかな?気が変わった。それに先輩、先輩ではややこしい」


「部長の推理を聞きに来たんです」

聡は言い直した。


「そうだったね。いやーすまんすまん」

なぜこの先輩はこんなにも楽しそうなんだろうか?ただ僕をからかうことに夢中で綾のことなどどうでもいいのではなかろうか?


「それで、どっちからききたい?」


「何がですか」


「君にとって都合がいい場合と悪い場合、2つ用意してある。どちらから聞きたいか選んでくれ」

そういうと桃花は笑った。


そうだ。このふてぶてしさこそ神宮寺桃花なのだ。

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