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1人2役、ではなく1人2者  作者: 秋ルル
プロローグ
11/71

ケーキ

放課後


聡と綾は言われた通りに部室に来た。

《超常現象研究部》

手書きで書かれた看板に赴きを感じながら聡たちは中へと入って行った。



「遅かったな」

桃花はそう言って聡たちを向かえいれた。


辺りを見回すと雫はもくもくとケーキを食べていた。昨日のお詫びの件、どうやら桃花は本当にケーキを買いに行ったようだった。


「座りたまえ、君たちの分もある」

まさか、あのモンブランを?

そう思って期待した聡の前に出されたのは普通のショートケーキだった。


「すまないな、あれはお一人様2個までだったんだ。まぁあそこのケーキはなんでも上手い」


「おかまいなく」

こんなことで落ち込んでいる訳にはいかない。今日ここへ来た目的は先輩の推理を聞くためだ。


聡はそう言って椅子に腰かけた。

綾もその横に座る。


「一応2人分用意してあるが、必要か?なんせ君たちの食事についてはわからないからな」


「いただけるのであればいただきます。それと食事やその他のことについて一応説明しておきます」


そう言って聡が鞄から取り出したのは一冊の手帳だった。また、綾も同じものを持っていることを桃花にみせた。


「なんだ、それは手帳のようだが?」

「中味を見てください」


桃花が開いた手帳の中には聡と綾の一日の活動記録がびっしりと書かれていた。

起床から始まり、食べたのもの、友達と話した内容、トイレの回数までありとあらゆることまで書かれていた。


それは聡が綾でいるために行っている日々の努力の結晶である。


勿論それはもの忘れを防ぐためのメモでもあるが、2人のそれは他の意味合いもある。


人には欲求がある、それは食事、睡眠、排泄などさまざまだが、問題なのはそれがどちらの欲求なのか判断しづらいことである。


通常の人ならば欲求にたいして体は1つしかないので問題ない。


しかし、今の聡には2つの体がある。


性欲など性の違いで明らかに分かるもの、また目で見て判断できるものもある。


しかし、原始的な欲求ほどわかりづらい。


例えば聡が空腹を感じた場合、それはどちらの体から来ている欲求わからない。聡の体でいくら食べようと綾のお腹が満腹になるわけではない。睡眠、排泄も同じことだ。


そこであらかじめ目星をつけておけば、その欲求がどちらのものか判断できるようになる。


この手帳はそのためのものだ。


出来るだけ混乱しないよう、起床、食事、就寝は同じ時間にするよう心がけている。


そしてこのメモは暗にこう伝えている。

『2人の食事のタイミングがずれると面倒』


「本当に面白い体だな」

桃花はそう笑った。


そうして2人に、ケーキをさしだした。


ケーキを受け取った2人はまた不可解な行動を取った。


綾はもらったケーキを口にしているのだが、聡は一切口をつけなかった。


そのことについても聡が説明した。

「すいません。2人同時に口にすると美味しいものも美味しく感じれないので」


「まぁ私は構わんよ」


しばしの休息。桃花の持って来たケーキは本当に美味しかった。

ふと雫の方へ目をやるとまだモンブランを食べていた。しかし、隣には既に1枚銀紙が転がっていた。自ずとこれが2つ目だとわかった。通常の3倍を誇るあのエベレストモンブラをこんな小さな子が2つも…どこに入っているのだろうか?その姿は与えれば与えるだけ餌を食べるハムスターに似ていた。


聡はちょっといたずらしたくなった。さすがに聡が口をつけたものでやるのは気が引けたので、仕掛け人は綾の方になる。


イチゴの刺さったフォークを雫の前にぶら下げて見た。

さすがに自分のモンブランに夢中で気がつかないかなと思った。

しかし次の瞬間、雫が釣れた。

なんだこの生き物は?すごく可愛い。


「さてそれでは本題に入らせていただきますか」

桃花はそう告げた。

ケーキも食べ終わり、やっとこのときが来た。

むしろこのためだけに来たようなものだ。


「私のこれからの呼び方について!!」

「「違うだろー」」


「だからハモるなって」

そう桃花は楽しんでいる。

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