多少の違和感
5月も半ばに差し掛かるというころ、相沢聡の何気ない朝が始まる。
聡は父と母、そして妹の綾との4人家族である。しかし父は仕事の関係で単身赴任をしており実質母と妹との3人で生活を行っている。
そして今日も聡と綾、母を囲んだ3人の食卓はかわらず繰り返されるのである。
「………」
「………」
年頃の兄妹というものは互いの無関心であるものだろうか。会話のない無言の朝食が続くのである。
しかしこの兄弟は決して仲が悪いわけではない。聡か醤油さしを使おうとするやいなや近くの綾が手渡しする。まるで息の合った連結プレーのように無駄のない鮮やかな動きだった。言葉などなくてもお互いの考えていることが分かっているような、まるで熟年夫婦のような動きだった。
「あなたたち、最近全く会話のしないのに不思議ねー」
母、和子はそんな2人のことを不思議に思った。
「そんな事ないよ母さん。僕たちはいつもどおりだよ」
「そうよ、変なこと言わないで」
聡の返事に綾が続く。それもまた意図されたようにきっちりとした動作だった。
「じゃあ、もう学校行ってくるから」
朝食を終えた聡はすぐに支度をすませると学校へ向かった。
「私も行ってきます」
綾も食事を終えると聡の後ろを追いかけた。
「行ってらっしゃい」
母の不安そうな言葉が背中に突き刺さった。
(もっと上手くやらないと)
聡は密かにそう思った。
プロフィール
1年2組相沢聡16歳
趣味 共に特になし
スポーツは平凡、テストは上位に入るほどの成績
友達も多い方ではない。部活動にも入っておらず、目立たない秀才タイプだ。
1年2組相沢綾15歳
趣味 陸上、走ること
中学のころからスポーツでは抜群の成績を残し高校入学後も1年生ながら期待のホープとされていた。
勉強は得意ではないが持ち前の明るさで友達も多かった。