3話 杖を買った
久々に更新。一人称もいいもんだ。
さて、自室に帰って魔法学校に必要な持ち物を見てみると・・・
・杖(3級品からで良い)
・制服等(学校指定のもの。入学説明会にて採寸などあり。補助金有り)
・その他最低限の日用品(寮選択者のみ)
と簡単なものだった。俺は寮を選択する予定なので、細々とした日用品がいるな。まあそれは置いといて杖か・・・そういや俺は試験の時も使ってなかったな。
この世界での魔法の杖は特に使わなくても良いが、魔法の収束性が上がるなどのメリットがあるが、初心者が最初から杖を使って魔法の練習をすると『杖ありき』の魔法になってしまいあまりオススメはできないとされている。
さらに俺は特に杖を使う必要も感じなかったので使わなかったがどうも学校では必要らしいな。しかしここじゃあ揃わなそうだなぁ。また帝都に行くのか。
「うぅ〜、寒いっ!!」帝都行きの馬車の中で震える俺たち。暖房が欲しいぃ。
「大丈夫ですか?でも魔法をお使いになれば・・・。」メイドの一人が声をかけてくれる。彼女も寒そうだ。
そうだな。俺には魔法が使えるじゃないか。よぉし!!
「うるぁあああああ。『炎の槍』」馬車の中で振り上げた手からは天に昇る龍のように炎が・・・ん?
火炎放射器のような炎が上に向かう→馬車はありがたいことに屋根付き!!→馬車は美しい木造→Oh...
ってヤベェ。馬車が炎上するぞ。消火しないとッ。とここまで手から炎が吹き出して0.1秒。俺の反射神経スゲー、じゃなくて。水水。
「おるぁああああ。『水の流れ』」よしさっきの炎は消えた・・・ん?
大量の水が吹き上がり炎が消滅→馬車は窓付屋根付き→水が出て行くところが無い→馬車水没
魔法障壁で包み込めば・・・
「えりゃぁああああ。『魔法障壁』」障壁展開ッ、水を包んで。
ふー、なんとか惨事は回避された。この水玉は窓を開けて外に捨てよう。
ガラガラ・・・ピュゥゥゥゥ、ビュゥゥゥゥ
「寒ッうううう。」めっちゃ寒いやん。早く閉めよう。だが俺の煩悩がそれを妨害した。
「アーノルド様、寒いですぅ。」そう言いながら震えるメイドの姿はとても可愛い。しばらく見ていると周りの使用人や護衛たちの視線も冷たくなって来たので窓を閉めた。
うーん、どうしたらいいんだ?温風とか出てくるかな?イメージはガスファンヒーター
「それッ『ガスファンヒーター』」
ブァアアアアアアア
「暖かぁ〜。」こんなのでも呪文になるのか。
俺のも手から出てくる温風は程よい暖かさで大きなこの馬車を温める。これは成功。みんな暖かそうだ。帝都までの道のりはかなり快適になった。
「えーっと、父上から教えられたオススメの店は〜。」
今俺はショッピングの時間である。ちなみに杖の店を探している。
父上は魔法使いではないが貴族として帝都の貴族御用達の店ぐらいは知っている。杖の店もその一つだ。
「あー、この店か。」外見は上品な緑を基調とした3階建ての店。木製の木の扉を開けると喫茶店のようにカランカランと音が鳴った。
ふーん、中も上品な店だな。さすが貴族御用達と言うべきか。
店の中は綺麗に整理されており、杖が入っている細長い木箱も棚に並べられている。
「いらっしゃいませ。魔法学校入学ですか?」店員が言う。
「はい。杖の選び方ってあります?」
「選び方ですか・・・」店員が少し考える。その後・・・
「見た目ですかね。」
そんなものなのか。意外だな。杖が選ぶとか無いわけ?
「こちらがオススメの1級品の杖です。スリーヒッスィ社製のもので、軍用には劣りますが魔力増幅器がついております。」
なるほど杖にも軍用とかあるんだなぁ。
「これ試しに使ってもいいですか?」
「もちろん。あそこに向かってお願いします。」店員は店の奥の土嚢が積まれた方を指差す。
よしッ、と構えたがちょっと待て。俺の魔法で壊れたりしたらどうなるんだろ?
「あのー、すみません。もしこれで杖が壊れたりしたら弁償とかってしないといけないんですか?」
念のため聞いておく。
「杖が壊れる?そんなことあるんですか?」
えっ?そんな感じ。
「弁償はして頂かなくても結構です。まあ壊れませんから。」
よしッ。色々な意味で安心した。どんな魔法試そうかなぁ。やっぱり炎か。
「それッ!『炎の槍』」その俺が発射した魔法は魔力増幅器を通って増幅される筈だったが・・・
ヴヴヴヴヴヴヴヴ パァンッ ジュワァッ
「「え!?」」
杖が弾け飛んで・・・蒸発した!?
「まさか杖が壊れるとは・・・」店員さん申し訳なさそう。
「いえ、俺が悪いんで・・・」
「弁償はしなくていいです・・・」
この会話辛い。
「一体どうした?さっき大きな音がしたが・・・。」店の奥から店長らしき人登場。
「実は・・・」俺が説明。やだなーこういうの。
「なるほど。杖が壊れるとは珍しい。弁償は気にしなくて良いからこれで試してみなされ。」店の奥から取り出してきたのは黒いつや消しした金属のような物でできた杖。ちょっと重いけどちょうどいいな。
「じゃあやりますよ。いいですね。『炎の槍』」断りを入れてから俺は杖に魔力を流す。
ブゥアアアア
おおっ、今度は壊れない。ちゃんと杖としての機能の収束性も上がってる!!
「どうせ魔道増幅器が壊れるぐらいの魔力を持ってるなら、純粋に収束性を上げるだけで十分じゃろ。」なるほど。そういう考え方もあるな。
「じゃあ、これ買います。」
「そうか。値段じゃが金貨5枚(50000ジリン)ぐらいだが・・・。」
ん50000ジリンって日本円(おおよその食べ物換算)で五十万円だろ。たけーな。これぐらいが相場なのか?
杖の契約(二週間後に調整して届けにくる)を済ませて、その後も日用品などを買い揃え暖かい馬車で領地に帰った。
「アーノルド、杖はいいものが買えたか?」父上が言う。
「ええ、金貨5枚でしたが・・・。」
なんか申し訳ない。
「金貨5枚って・・・、特注の杖でも買ったのか?」
「ええ、まあ。」
その後杖の店であったことを話し(父上の顔は真っ青になっていた)納得してもらったが・・・・・・・・
普通の杖なら金貨1枚だとさ・・・俺って損した?
そして二週間後
「アーノルド、杖が届いたわよ。」
俺が自室で植物(パイナップルっぽい何か)をいじっているとき母上の声がかかる。へーちゃんと届くんだね。
さすがに高いものだからか厳重に木箱で包まれた俺の杖を包んでいた箱を開封(破壊)し杖を取り出す。
「おおおおおおお。」
つや消し金属みたいな色は綺麗なブラックになっていて、持ち手のところには家紋と名前も彫ってある(後に聞いた話によるとこれは魔法によって彫られたもので本人以外は消すことはできないらしい)
こんなものがあったら使いたくなるな。ちょっと領内のどこかで使ってこよう。
「ちょっと出かけて来まーす。」
俺はそういうと馬に跨り屋敷を出て行った。




