第ニ十七話 新たな装甲
活動報告にて更新の話やら文章の訂正追加を書きます。見てくれたら幸いです。
昼頃、管理所の前に菫と多くの人が集まっていた、昨夜人狼が現れ、襲ってきたと菫が発表したからだ。人々はそれを聞き、不安を募らせ、散り散りにさった。
菫は管理所の保管庫を見る。保管庫は半壊、壁は火によって黒く煤けており、保管庫として扱うには建物を修繕しなければならない。そう思うと彼女は人狼に対しての怒りが収まらなかった。
「今に見ていろ…」
そうつぶやき、管理所から離れ、人里にある鍛冶屋に向かった。目的はパワードスーツの強化である。鍛冶屋に着き、何やら工作をしている小鉄に話しかけた。
「ここは武器の強化もおこなっているよなあ」
「ええそうですけど…」
小鉄は菫の怒りを察し、声が小さくなる。無茶苦茶な依頼が来ると考えたからだ。
「小鉄…お前いくらの金や物が欲しい?」
「…そりゃあ、いっぱいですけど」
「そうか、良し、改良出来たらやろう」
菫の問いかけに不思議に感じながらも、本心を話す。金や物はあって困ることは無い。それは夢幻のまちにおいても同じだ。すると菫は手首にはめていたパワードスーツのブレスレットを小鉄に手渡す。相手の行動に目を丸くし尋ねる小鉄。
「あのこれって、パワードスーツのですよね?」
「私そうだ、いつも使っている物だ。お前に頼みたいのはそれの強化だ」
渡されたブレスレットを見た彼女は困惑し、狂喜した。
「本当ですかッ!?まじすかッ!?いいすか!?」
小鉄がここまで喜ぶのにはわけがある。それはパワードスーツといった先導師が作り上げた作品に鍛冶屋の者として、何とか関わりたいと思っていたからだ。しかし管理所からは許されない事だと告げられ、泣く泣く諦めていた。
「いやー嬉しいなあ、菫さんが所長になってくれて本当に良かったですよ。でどのように強化すればいいんで?」
「それはだな、そのスーツが持つ爆発させる機能を強化してほしい。強化の際これも役立ててくれ」
「ここれは!?」
再び菫が小鉄に渡したのは、古い皮の本。表紙には複雑な文字が書かれており、神秘さと怪しさを感じさせていた。この本は所謂魔導書であった。それについて説明する菫。
「その本の内容は武器に関して載っている、役立ててほしい。翻訳もしてある」
「ありがとうございます!必ずや期待通りにお答えします!」
しかし小鉄が礼を言ったところで、あることに気がつく。
それは武器に関しての事で、今パワードスーツを渡せば使用できなくなると考え、そのことを尋ねる。すると菫はズボンの後ろポケットから、黄色と黒のブレスレットを見せ、予備があるから大丈夫だと話した。
それを聞いて安心し、早速作業に取り掛かろうとした小鉄。その時である。
「ギゃ嗚呼アアアアアアアアアアアア」
外から悲鳴が聞こえた。何事かと二人は外に出る。
外で化け物が人々を襲っていた。外見は頭巾で頭部を隠し目の様な落書きが施されており、頭巾の下からは縄の様な触手を持っている。
その化け物が、触手を使い人々の首を締めあげ、絞殺していた。死体の中には触手の力によって首を切断された者や、首を絞められ目が飛び出した者があった。その光景を見た小鉄は青ざめ、菫は化け物に激怒し、持っていたブレスレットを装着。
「何だか知らんが許さん!変身ッ!」
そう叫ぶとブレスレットが光り輝き、パワードスーツを身にまとった菫が現れた。スーツの外見は黄と黒のカラーリングで重機を思わせる物。右手にはペンチの様な巨大なクローが、左手にはワイヤーフックが、足にはキャタピラが備っている。
怪物は菫の存在に気がつき、触手を使い首を絞めつけようとする。しかし彼女は回避行動をせず、受けた。触手は絡みつき、首を絞めつけようとするが、装甲の厚さでかなわない。
「間抜けがア!」
菫は化け物を大声をあげ馬鹿にし、フックを怪物の頭部目掛け発射。フックが怪物の頭部に巻き付きつく。
「オラッ!」
そしてワイヤーを勢いよく引き戻した。怪物は成すすべなく彼女の方に引き寄せられ、右手のクローに挟み込まれた。クローは怪物の頭をガッシリと掴み、粉砕しようと締め付ける。怪物からキヂギチと何かが壊れる音が響く。菫はコードを叫びスーツの力を起動。
「これで終わりだ!バースト!」
〔バースト〕
菫の言葉でスーツから蒸気が吹き上がり、力を引き上げた。クローは怪物の頭を、音を立て勢いよく粉砕した。怪物は動くのを止め、絶命した。
「ふん、やったことに比べたらあっけない最期だったな」
スーツを解除し菫が怪物の死体を確認しようとしたその時、
「何!?」
死体は何かが噴き出る様な音を立てて、影も形も無く消え去った。菫は死体が消えたことに困惑していると、死体があった地面に何かが落ちていることに気がつき拾い上げる。そして、拾い上げた物を見てさらに困惑する菫。
「…テルテル坊主、なぜこんな物が?…雨なんか最近降ってないぞ…」
拾ったのは、何の変哲もないテルテル坊主だった。




