第二十三話 旅立ち
しみは学校にたどり着き学校が吹き飛ばされなかった事に安堵し雪梅に会う。
雪梅はしみが目覚めたことに泣いて喜んだ。そして自室にしみを通し改めて礼を伝える。
「本当にありがとう。…しみお前は私の誇りだ」
その言葉に思わずしみは顔を赤らめた。今までそんなこと言われた経験がなかったからだ。
そんな彼女は雪梅に尋ねた。
「雪梅先生、人を助ける事は人として立派なことですか?」
「ああ、立派なことだ。しみは人として立派だ」
しみの質問に笑顔で答える雪梅。しかし雪梅は突如動揺した。驚き何事かと驚き尋ねるしみ。
「しみ…お前泣いてるぞ」
「え…」
その言葉に彼女は驚き目をぬぐう。袖に涙の跡がついていた。しみは自分が涙を流した理由がわからなかった。涙を流したしみを見て狼狽する雪梅に、彼女は何とも無いと答えあることを尋ねる、とても大切なことを。
「人を殺すのはいけないことですよね」
しみの言葉に戸惑い首を傾ける雪梅。尋ねたしみは答えだけを求めた。しみの態度に雪梅は何か感じとり真剣な顔つきで答えた。
「そうだな、いけない事だ。だけどしみお前は…」
「ありがとうございました」
しみは言葉を聞き終わる前に、礼を言って学校を出た。
(答えは出た。人らしく生きよう)
彼女はそう思い管理所に向かった。
―――
管理所にてしみは自分が殺人鬼だと伝えた。管理所は初めは信じなかったがしみが殺した者の名を言い、死体を隠した場所と方法を伝え、調べさせると相手は信じた。彼女は個室に連れていかれ動機を聞かれ「…」と答えた。
そして彼女は残りの隠してある死体の場所を教える代わりに、自分が殺人鬼であった事を発表しないでくれと頼み、これを聞き入れてくれたら、いかなる罰も受けると告げた。
相手は不思議な顔をしたがこれを了承した。
しみは死刑を言い渡され、しばらくの間管理所に居ることになった。彼女はその前に会いたい人が居ると伝えると、管理所は監視付きで合わせた。そしてしみは雪梅や満腹屋の店長たちに旅に出ると嘘を伝えた。
周りの者はいつ帰るのか?と尋ねた。それに当分帰ってこないと答えたしみ。
答えを聞いたものは寂しそうな顔をし、しみとの別れを惜しんだ。
そして時間がたった …
管理所の職員がしみの死刑の日を伝えた。しみはそれを素直に受け入れた。そして死刑の日が近づき、その前日彼女は夢を見た。それはしみが家族と仲良く暮らし笑っている夢だった。しみは優しい夢から覚め涙を流した。
死刑の時が近づきしみは職員に処刑場に連れていかれる。
その途中黒い人型の靄が現れたが彼女に何も言ってこず。しみは歩きながら靄について考えたそして、殺人行為を叱咤するような言葉から、自分の人間性だと考えた。もちろん彼女のただの思い込みだが。もとより、答えはしみにしかない。
そんなことを彼女が考えていると処刑場にたどり着く。処刑場は管理所の地下に存在していた。中は明るく清潔な部屋。その部屋の真ん中に絞首台が設置されていた。彼女は顔に布を被せられ、絞首台に向かい首に縄をかけられて、最後に何か言いたいことは無いかと尋ねられた。、それにしみは最後の言葉を発した。
「殺された方々、本当に申し訳ありませんでした。罪と罰を受け入れます」
それだけ言い、しみは満足した。彼女は最後に思う。
(……もし私が居なくなって悲しんでくれる人が居たら、私は生まれてきて良かっ)
ガタン
彼女は縄によって浮遊した。
―――
人里の満腹屋にて、店長の体が治り店は再び営業を始めた。そして客からしみが居なくなったことを尋ねられて旅に出たと伝え、早く帰ってくることを願った。
雪梅は自室にて、しみと暮らした日々を思い、いつか自慢の教え子が帰ってくる事を願う。
夢幻のまちから殺人鬼は旅立ち、人々は人間、しみの帰りを心待ちにした。
殺人鬼の日常編、完




