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夢幻のまち 塵箱世界  作者: つかさ
第二部 殺人鬼の日常編
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第二十二話 殺人鬼と嵐

  夢幻のまちは今、嵐に見舞われていた。しみは学校へ急ぎ、雪梅の安否を確かめようとしていた。


「先生ご無事ですか!?」


 しみは雨でずぶぬれになりながらも何とか学校へ辿り着く。道中、彼女は人里の状態を見たが、瓦や看板など物が吹き飛び散々なものだった。扉を叩くと中から、雪梅が出てきて無事と分かり安堵するしみ。

雪梅はしみを見るや否や、どうした危険だから家に居なさいと怒った。


 しみが心配出来ましたと言うと同時に中年の男がこちらに向かってきた。雪梅は何だと尋ねると、相手は学校に通っていた子供が川に近づき流されてしまった。仙人の力をお借りしたいと話す。この事を聞き、雪梅は青ざめ、すぐさま助けようと男と共に川に向かった。しみも一緒に同行した。


―――


川は嵐により濁流と化していた。さらに先ほど男が見た時よりも勢いを増していた。流された子供の命はもはや不確かなものだった。川に飛び込み助けようとする雪梅を男としみが止めた。


「はなせ、助けてみせる!」


 雪梅そうは言うが、二人は離さない。男は雪梅先生に仙術で何とかできないか尋ねるが、彼女はこの嵐は自然の物でないため、干渉するのは出来ないと、悔しさに満ちた顔で話す。川を見てしみは、


「雪梅先生に教え子は大事ですか」


「当たり前だっ!」


 尋ね、尋ねられた雪梅はこの状況があってか叫び答えた。豪雨が三人にに容赦なく降り注ぐ。しみは男に子供は先ほどこに居たかと尋ねる。男は指さす。しみの言葉に二人はまさかと思い声を上げる。


「嬢ちゃんまさか!?」


「しみ!?」


 止めようとする二人をしみは無視しエルカードを発動した。


<ファイター>


 エルカードをしみが持っていた事に二人は驚いた。

 そんな二人を尻目に彼女は子供を助けるため川へ飛び込んだ。しみのこの行為はもはや自分の命はどうでもいいと感じて、行ったものである。彼女は自分の未来はもう無い、せめて子供の未来でも助けようとも考えていた。エルカードを使用したのは身体強化のためだ。

 川の水がしみを飲み込んだ … 


―――


 気がつくと、しみは学校の庭にあるベンチに座っていた。隣には、いつも見る黒い人型の靄が居た。靄はしみに尋ねる。


「なぜ助けに行こうとした」


 その問いに彼女は、人だからだと答えた。靄はその言葉を聞き、否定するかのように喋る。


「……お前は化け物だ。たとえ救助活動を行っても人殺しの罪は消えない」


「……そんなのわかってるさ、私は助けたいと思ったから助けただけだ」


 目をつぶりながらそう答えた。しみの答えに靄はそうかと言った。


 そこでしみの目の前は真っ暗になった ……

―――


 しみは体中の痛みを感じ目を覚ますと何処かの土手に流されていた。手には子供の手が握られており、彼女が脈のを確認すると子供は生きていた。 それに安心すると遠くから、声が聞こえた。


「しみーどこだー!」


 雪梅の声だった。しみは手を振り返事をする。すると雪梅と先ほどの男が近づき、安否を確認し、男はしみが手を握っている子供に驚く。


「これは俺が見た流された子!?…ありえない奇跡だ!」


「しみ、…無茶ばかりして…ありがとう」


 雪梅はしみの事を案じて叱咤し、そして涙ながら謝辞を述べた。しみはそれに微笑みで返すことしかできず気絶した。


――――


 しみが再び目を覚ますと、診療所のベッドの上であった。話まりには嵐で負傷したものが横たわっていた。隣にいた者に嵐に関して尋ねる。

 話を聞くと嵐は収まっていること。自分が長い間眠っていたことが分かった。しみは嵐が収まった事を喜び、立ち上がり、目覚めたことを医師に報告しに行く。


 医師に助けた子供について尋ねると、医師は問題ないと話した。彼女はそれを知り、診療所を出ようとした。看護師に体の検査があると言われたが、大丈夫だと答えて無理に外に出るしみ。


 外は太陽が顔を出しており、暖かな日差しを降り注いでいた。しみは嵐が収まったことを改めて喜び、雪梅に目覚めたことを言いに行こうと学校へ向う。


 空は青く、しみの心も穏やかだった。

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