第二十話 夢幻のまちでの日々
朝、とある居酒屋にて、ある、二人の男が話をしていた。片方は鉢巻をし名をずんだ、もう片方は帽子をかぶっており名をギラム。男たちは酒を飲みながら話す。ずんだがギラムに話しかける。
「なあギラム…」
「なんだ」
「いや、最近、魂があふれる事件や管理所で人殺しがあったろう、俺それ聞いてよもしかしたらこの世の終わりが近づいてんのかなあと思ったわけよ」
「なぜそうなる」
「魂があふれたのはあの世が無くなったからで、管理所の人殺しは、それで気が狂った者の仕業だ」
「でも魂があふれたのはすぐに収まったし、管理所の人殺し事件も犯人は殺された、何ともなかったじゃないか」
ギラムの言葉にずんだはそりゃそうだと言い、酒をあおる。男たちは暇であった。故にここに来て酒を飲み世間話をする。再び、ずんだはギラムに話しかける。
「どうして俺は特別な力が無いのだろうか、夢幻のまちと呼ばれる摩訶不思議なものが存在する場所に住んでんのにさ」
「それは運さ」
「それを言ったらお終いだろうに」
「どんな力が欲しかったんだ?」
「金持ちになれる力」
「…そんな考えだから特別な力何て与えられなかったのさ」
「かもな」
「力と言えばエルカードなんてものがあったな」
「そんな珍しいもの持ってねいよ。いったいどこにあるやら」
「管理所に持っていけば褒美がもらえて、酒も、もっといいの飲めるのによー」
「そうだな」
男たちは酒が無くなり、店を出た。人里を当てもなく歩く。ギラムがずんだに話しかける。
「なあ最近魔法雑貨店なるものができたらしいぜ」
「ほーん」
「でその店主は異世界人だってよ」
「…?人間世界からか」
「いや違う、魔法使いが普通にいる世界、魔法世界からだとさ」
「どんな奴だ、興味が出た」
「顔がいかつい男らしいぞ」
「そっか女じゃないのか」
「そうだな女だったらな…そういや、学校に見かけない女の子が居たって話があるぜ」
「ああ、満腹屋で働いているしみちゃんだろ。大変だね」
「なんだ知っていたのか」
「ああ、隣に住んでる夫婦と話てたらそんなことを聞いた。その夫婦の子供に、たしか、キヨて、言ったかなその子が教えたてくれたんだとさ」
「かわいいらしいな。美人ばかりだよな、学校の教師は」
「たしかに、雪梅さんに、いおりさん美人だなあ」
「高嶺の花だ」
「んだ」
「…しかし当てもなく歩くのは疲れた。…賭場にでも行くか」
「そうしよう」
二人は賭場に向かって足を速めた。
男たちが賭場にたどり着いたときには夕暮れ時だった、賭場は人里の端に存在しており、狸の妖怪の集まり、狸組が経営を行っている。管理所にも認められた公的な場所だ。
賭場の中は薄暗く、煙草の煙が行き渡っていた。そして円形のテーブルが並んであり、花札、トランプといった賭け事を行う。奥にはキセルをもった美しい女性が座っていた。頭には狸の耳、大きな尻尾が生えていた彼女名は屋代と言い、美しい外見から男性の客がよくこの賭場へ訪れる。ちなみに学校に勤務するいおりと知り合いであるが仲は悪い。
二人は奥に座る彼女を一瞥し空いた席に座った。そして賭博に興じた。
―――
「いあやったぜ!」
「ボロ勝ちじゃあ!」
二人は賭けに勝ち、上機嫌だった。そして再び居酒屋に訪れ、二度目はより良い酒を飲む。
「次どこ行く~」
「海にでも行けば」
ギラムの言葉にずんだは冗談じゃないと言う夢幻のまちにも海は在る。人里から南へまっすぐ行くと海に出る。ずんだは呆れた口調でで話す。
「海には変な生き物がたくさんいるじゃないか」
「…そういやお前泳げんかったな」
「おい言い訳をあっさりとばらすな」
「んじゃ、迷宮鉱山や地獄谷、幻想花畑に行くか」
「どれも嫌だね~鉱山除いて怖い噂が、あるじゃねーか」
「鉱山にもあるぞ」
人里を西に真っ直ぐ行くと鉱山に着く。この鉱山には様々な物が存在しているが、迷路のような坑道も存在している。坑道はいつ誰が作ったのか分からないが、下手に進むと出れなくなる。そのため鉱山で働くものは行方不明になることがある。
地獄谷は妖怪の里の近くに存在しており、谷の底が地獄に繋がっていると噂されている。
幻想花畑は、くらやみの森をずっと進めば、たどり着く場所である。その場所には季節問わず様々な花が咲き乱れているがこれまた曰くつきであり、暗闇の森自体危険な場所である。
男たちはため息をついた。
「またここに来るか」
「そうだな」
二人は店を出て家に帰った。
夢幻のまちのでの日常は続く。




