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夢幻のまち 塵箱世界  作者: つかさ
第一部 了、編
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第十二話悲しみの救い 前編

「ここはどこだ!?」


 了は目が覚めると河原に横たわっていた。自分は家で寝ていたはずだ、そんな疑問を持ちながら立ち上がり辺りを見渡す了。辺りは薄い霧がかかっており、近くには大きな川が流れていた。向う岸は霧がかかって見えない。河原には彼岸花が点々と咲いていた。了はここがただならぬ場所だと感じた。


「とりあえず、ここを離れるか…」


 川に背を向け、彼女が人里に向かい当てもなく歩き出そうとしたとき、バイクの音がした。霧の中、バイクと共に現れたのはズボンにTシャツを着た女、菫であった。


「ん、了お前何故ここに」


「お前こそどうして…てか、ここどこか知っているのか」


「ここはあの世とこの世の境目、三途の川だ」


「なんだってー!」


「うっせえ!」


 了は菫の言葉に目を丸くし、大声を上げた。三途の川とは死んだ者が来る場所である。菫は了が大声を出し驚いた。了は彼女に尋ねる。


「私たち死んだ?」


「ちげーよ。お前がここにいるのは知らんが、私は事件の調査でここに着いた」


「事件?」


「お前…今夢幻のまちに、多数の魂があふれ出ているのを知らないのか」


「あーあ、あれね空飛ぶ餅だと思った。」


「そうか、目と頭悪いな。で私は魂がどこからあふれ出ているのかを調べ、人里にある寺の洞窟からだと分かった」


「そうか。でもここが三途の川だとよくわかったな」


 (…餅発言は冗談だ)


 冗談が通じなかったことに了は顔を赤らめ、菫は了にここに来た経緯を話す。


「それは洞窟が前々から三途の川に続いているじゃないかとの噂があったからだ。まあ、ここが三途の川かは断定できんが、辺りの風景をみるとほぼそうじゃないかな。で洞窟に入り進んでいるうちにここに着き、了が居た」


「そうか、そういや葉月の奴は来てないんだな」


「色々あったろ、それで元気を無くし家にこもっているらしい」


「そうか、心配だな…」


 そんな話をしている二人をよそに、川から小舟に乗った少女が現れた。二人は少女に気付き警戒する。

 やがて少女は岸に着き了達に歩み寄る。少女の顔つきは鋭く恰好は紺色のグラデーションで彩られたスーツで大きな鎌を持っていた。少女は了の顔を見て話しかけてきた。


「あなたが了ですね、初めまして。そちらの方はどなたですか」


 了は少女が自分の名を知っていることに驚き、菫は少女に対し威圧的な態度をとる。


「なぜ私の名を知っている」


「あーんてめえ誰だ、変な格好してよー」


「失礼ですねあなた…私は夢幻のまちを担当する死神の一人ゆげんです」

「嘘いってんじゃねーの」


「言ってません。閻魔様に誓ってもいいです」


「菫どうやらマジらしいぜ…おまえもどこかわかるだろ」


 ゆげんが人でもない存在と感じ菫に告げる。彼女もどこかそのことに感じており納得した。


「そうです。本当です。了、夢幻のまちに魂が溢れている事は知ってますね」


「了のやつは空飛ぶ餅だと、言ってましたあ」


「なんと!それはそれはお気の毒に病院に行くことをお勧めします…」


「冗談なんです。冗談です!」


 菫の言葉を素直に信じそうになったゆげんに、訂正の言葉を赤面しながら伝える了。

そしてゆげんに尋ねる。

「ところで、なぜ私の名前を知っているんです?。それに私は家で寝ていたはずなんだけど此処に居て、何か知ってますか」


「あなた一部では少し有名ですからね。ここに居たのは私が事件解決にと呼んだからです」


「そ、そうか。死んではないのか」

 了は少しだけ、ほっとした。 菫がゆげんに話しかける。


「ゆげんだっけか、あんた夢幻のまちに魂が溢れてるの知ってのか。おーん」


「知ってます。魂が溢れているのは、ある魂が神仏に仇すとあの世で暴れだしたのです。その魂が与えた損害で、あの世と人間世界の境界が揺らいでしまいました。それにより魂が人間世界に湧き出て無用な混乱が起きてしまうと予測されたため、溢れ出す先を何とか人間世界から夢幻のまちに変えました」


「だからか、つーか夢幻のまち、とばっちりだな」

 了は呆れ、菫は怒り、ゆげんに突っかかる。


「謝れよー」


「すみませんね。上に代わって謝罪します」


「それで謝ったつもりかよーん」


 菫の言葉にゆげんはどこ吹く風である。菫はその態度にイラついている。ゆげんは菫を無視し了に話しかけた。


「それで、終わりを与える者である、貴方に事件解決をお願いしたいのです」


 その言葉に了は気まずい顔になり、菫は怪訝な顔をする。


「なんだ、終わりを与える物ってよ」


「それを話すのには夢幻のまちに関して話さなくてはなりません」


「ほーん夢幻のまちが関係してんのか」


「ええそうです。話しますが構いませんね?了」


 ゆげんは確認を求め、了は頷き了承した。


「かまわん…いづればれることだ」


「では話しましょう。夢幻のまちとは捨てられしモノ、行き場を無くしたモノ、不要となったモノなどが集う世界です。ご存知ですね」


 ゆげんは菫に向かい問いかける。了は静かにしている。


「ああ、なぜそんなモノが集まるのかはしらんがね」


「それにはワケがあります。夢幻のまちはそう言ったモノを集め、新たに人生や価値を与える場所なのです。ある意味救済の地ということですね。…夢幻のまち自体は何時からあるのか分かりませんが、とにかくそういった場所なのです」


「なんだと…」


 菫は話の内容に驚愕した。菫にとって夢幻のまちについて知ることは昔の目標であったからだ。


「夢幻のまちに様々な不思議な力が普通に存在するのは、誰かの助けになるためです」


「夢幻のまちに関して分かったが…それと了に何の関係があるんだ」


 菫は了を見た。 彼女は浮かない顔している。


「しかし、不思議な力を得て救われる者もいれば、得た力で悪行をなす者も存在します。そう言った不要に力を振りかざし、世界に対して混乱を起こそうとする者の出現や、もはや世界がどうしようもない場合に対し、全てを終わらせる力を持ち、終わりを与える者、いわば世界の歯車が現れます。それが了です」


「嘘だろ…」


「本当です。しかし、終わらせる者には感情や人間性なんてものは、無い筈ですが…了、今の貴方をにはそれがあります。貴方はなぜそれを持っているのですか?」


 ゆげんは了を不思議な目で見る。了は目を合わさず話始める。


「私はエルカードを使い暴れている者を倒し、その際会った管理所の者に保護され、人として生活することになった。そうして人として過ごしていくうちに人間性が芽生え、ただ終わりを与える者でなく誰かを助けたい救えるものになりたいと考え、今に至る…」


「そうですか、なるほど。了貴方は本来の力を封じていますね」


「ああ、終わりを与える力は封じている…」


「使いなさい」


「!…力を使うと人間性を失ってしまう…」


「それがどうかしましたか」


「私は歯車としてで無く、人として生きたいのです…」


「…しかし」


 了の声は震えていた。確かな思いだからだ。ゆげんはどう対応していいか少し困っている。そんな中で菫がゆげんに話しかける。



「なあ死神さんよー。了の奴が使いたくないっぽいし、使わせなくてもいいんだろう。それに了の奴は今まで終わらせる力とやらを使わずに事件を解決してきた」


「ふーむ、まあ事件を解決してきたのならいいでしょう。では今回の事件もお願いします」


「…分かった。事件を起こした魂は何か特別な力をもっていたのか」


「魂自体は力を持っていませんが、あとじが生み出したエルカードを持っています。どこであとじが接触したのかは不明です」


「おい今エルカードをあとじとやらが生み出したって…」


 菫は驚き死神に聞く。死神は平然と答える。


「ええ、エルカードとは可能性を与える者であり世界の歯車である、あとじが生み出したものです。しかしそのあとじも何やら自我に目覚め不可解な行動をしているようですが…」


「そうかい…なるほどな。事件を起こした魂は悪い魂なのか」


「善の魂です。生前の罪はありません」


「なぜそんな奴が暴れているんだ」


「言い難いことです。しかしその魂に惹かれ、ほかの魂も同調し力を増しています。なので早めの対処をお願いします」


「その魂は今どこに」


「夢幻のまちの空に特殊な空間を作り出し、そこに閉じ込めています。そこにつながる空間通路も用意してありますのでお願いしますよ」


 ゆげんは大鎌を振り空間に黒い穴を作り出した。そして乗ってきた小舟に乗り、向うの岸と帰っていった。

 河原には了と菫が残された。


「なあ了、終わりを与える力とは何だ」


「その名の通り、物事に終わりを与える強大な力で、様々な力に対応できる。しかし使えば…」


「人間性を失うか。余計なこと聞いて悪かったなじゃあ行くか」


「…菫は夢幻のまちに戻って、不測の事態に備えてくれ。戦うのは私だけでいい。わざわざ死神が私を頼ることだ、余程の事だろう」


「おーんしかしお前」


「何とかしてみるさ。…菫がゆげんに力を使わせなくてもいいと言ってくれたこと嬉しかったよ

「うっせ。気にすんな恥ずかしくなる」


「そうかい、でも本当にありがとな、じゃあ行ってくる。あ、後、月に行くとき葉月にお前の事悪く言ったすまない」


「だから、かまわねーよ、事実さ。早く事件解決しに行け」


「わかった行ってくる」


 了は穴に飛び込んだ。穴は了を入れ閉じた。菫は夢幻のまちに戻ろうと来た道をバイクで走った。



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