第八話日常の疑問
―――呉服屋
葉月はここで働いていた。服の整理をしているところに声をかけられ、相手をする。声をかけたのは菫だった。葉月には菫はどこか苦手な相手だった。けしてザクロ関係では無いと彼女は思うことにした。
「よう、葉月」
「何の様だ、菫」
「まあ、少し話をしたくな」
菫はへらへら笑っている。葉月は手を止めずに話を聞く。
「葉月はなんで封魔に入ったんだ」
「聞いてもつまらんぞ…妖怪に家族を殺されたからだ」
「ふーん。それは先導師が現れてた時期か」
「そうだ。だからなにさ」
「別に、それと管理所の危険な仕事を何で手伝っていんのかなて、気になってね」
「それは、妖怪は危険な存在で事件の裏で関わっているかもしれない、だから手伝うのさ。もしそうなら見過ごすわけにいかない。もし妖怪関係で困っていたら頼ってもいいぞ」
「考えとくわ、妖怪恨んでる?」
「ああ…」
「ほーん、おまえいつまで恨むの?」
「それは…いつまでもだ」
「そうか…苦しい人生だな」
菫はどこか悲しげに笑う。普段と違う彼女に、困惑した。
「何が言いたいんだ」
「いや別に。お前を憐れんでいるのさ、悲しい現実にいる、お前をな」
「…?家族がいないことか?」
「まあそうであり、全てでは無い」
「わけわからんぞ…」
「ま、気にするな。お前幸せか?」
「?まあ、何とも言えんが生きているからそうなんじゃないか」
「じゃあいいか」
「何が」
「知らない方が良いのさ。幸せなら」
「何を?」
菫は疑問に答えず店から出て行った。葉月は彼女の言葉にどこか引っかかりながらも、話したことは大したことない世間話だと思うことにした。




