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夢幻のまち 塵箱世界  作者: つかさ
第一部 了、編
1/48

第一話 青い月と不思議なカード

初めて書きました。よろしくお願いします。抜けている文章があったため追加しました

気軽に感想とか下さい。

 木造の家に了が布団もかけず床に眠っていた。彼女の自宅は、人里から離れた野原にある小さな丘の上に立っていた。家の姿はまるで小屋の様なもので、他者が了の家を見ると、少女である了が住むには不安になるほどだ


「……眩しい」


 了は窓の日差しによって目を覚まさせられた。彼女はまだ眠り足りなかったが、今この家には布団、寝具といったものが無く、快適な眠りは約束されていなかった。この家に布団がないのは彼女が睡眠に必要ないと思っていたからだ。


「眠い……」


 そんな言葉を吐き、まぶたをこすりながら立ち上がり家から出て、日課のポスト確認を行う。中には手紙が一通。


「おっとあるのか、仕事」


 手紙を見た少女は内心はめんどくささ半分と、仕事がある喜びがあった。彼女の家のポストには週刊誌と仕事の手紙しかこない。手紙を手に取り中を確認してみると、人里にある管理所からの依頼であった。手紙にはこう書かれていた。


 最近この世界に吸血鬼がやって来て以来月が青く染まる怪奇現象が起こっている。そのせいで人々の感情が乱れている。吸血鬼の殺害を願いたい。解決できたならほしいものをやる。


「……もう少し情報を集めてからにして欲しいぜ」


 殺害という文字に眉をひそめながらそうつぶやいた。そして感情が乱れているという文字に、昨日の強盗犯の言葉を思い出した。

(そういえば奴、青い月を見て将来に不安を感じて強盗したんだったな 感情が乱れるとはこのことか。また強盗が起きたら問題だな)



 手紙には吸血鬼がいる場所までの地図が入っていた。彼女は月が青いままではまずいという思いと

(褒美がでるのか。じゃあ布団でも貰うかな)


 布団がほしい思いで受ける事にした。

「やるしかないか」


 夜が来るのを待ち、覚悟を決めた。時間がたち夜になり、彼女はいつもの白いジャケット着てブーツを履く。そして『カードホルダー』を装備して家を出た。外は夜。冷たい風が吹き、野原の草花を揺らす。了は冷たい風を浴びながら吸血鬼が居る場所に足を進めた。


 青い月が夜道を照らした。


――――


 少女が歩いて何十分たっただろうか。暗闇の森と呼ばれる広い森に入り、現代の様なアスファルトで舗装もされていない道を歩き人狼が住むといわれている場所を静かに通り、ようやく目的地にたどり着いた。少女は目の前の光景に唖然とした。


「ここに吸血鬼は居るのか…」


 目の前には大きく、長い年月を感じさせる洋館があった。しかも庭も備えて在り、庭には薔薇やハーブ、更には噴水まであった。住む者の富を表していた。それを見て少女は自分の家と比較した。


「でかいなー家ー私の家とは大違い…」


 少女の家はよく小屋みたいと言われていた。彼女は吸血鬼のほうが立派な家に住んでることにショックを受けながら館に入り込んだ。中に入ると広いロビーに続いた。

 内装もシャンデリアなど豪華な装飾品で溢れていた。改めて少女は富の格差を思い知らされた。しかしそんな豪華な屋敷に窓は見かけなかった。


 「…誰かいないのかー」


 少女は念のため確認をすると奥から、体に包帯を巻いて片目を隠す体がすらっとしたメイドが現れた。手にはランプがあった。メイドは少女に笑顔を向けてお辞儀し、言葉を発した。


「いらっしゃいませ、お客様」


「ここに吸血鬼がいるな、会わせろ」


 メイドの風体と対応に面食らったが、相手に威圧的に問いかけた。しかしメイドは臆することなく普通に対応してきた。


「お嬢様に御用ですね。お嬢様のお部屋まで案内いたします」


「いいのか? いきなり来た訪問者を通して?」


「お嬢様は、館に尋ねてきた者は、許可なく入れてよいと言ってらっしゃいましたので」


「……」


 メイドは自身についてくるよう、指示し少女はメイドの後ろを歩いた。メイドの対応に、不審と感じたが素直に従うことにした。

 部屋にたどり着くまでに、メイドにいくつかの質問してみた。これに相手は気軽に答えてくれた。

 尋ねた彼女は、答えてくれないモノだと考えていたので、メイドの態度に僅かな不気味さ感じた。

 暗い廊下にコツコツと足音が響く。


「吸血鬼なのかお嬢様は?」


「はい、そうでございます」


 (主が吸血鬼でも仕えているのか … 恐れとかは無いのだろうか。)


 少女はそう考えて何故、仕えているのか?と尋ねた。

 メイドからは、仕えたいからですと返答された。化け物だとしてもか?と改めて尋ねたが、はいと迷いの無い言葉で即答だった。

 メイドにとってはお嬢様は良い主なのだろう。もしかしたら穏便に事が進むかもしれない。メイドの言葉を聞いた彼女はそう考えた。


「………そうか、何時から仕えている」


「ずっとです。生きている時からずっと」


 メイドから肉が腐った腐臭が微かに漂った。メイドも人間ではなかった。ふと少女はある事に気がついた。それは館は大きさの割りに静かであることだ。それを不気味と感じメイドに尋ねた。


「…他に誰かいないのか」


「私とお嬢様だけです」


 それを聞き警戒を強める少女。そんなメイドとの会話を繰り広げている間に、少女は目的の部屋にたどり着いた。扉も装飾が凝ってあり、如何にも部屋の中には偉い者が居る事少女に感じさせた


「こちらにございます」


 メイドが扉をあけ中に入ると、部屋はランプで明るく、内を照らしていた。部屋の内装は壁に絵画が飾られていたり、床に敷いてある絨毯も高価な物だった。そんな部屋の中央に椅子があり、煌びやかなドレスを着た妖艶な女性が座っていた。

 彼女の外見は館にある美しい装飾品に引けを取らないモノだった。白い肌に顔は美しく、気品が感じられた。

 しかし姿こそは人であるが、背にはステンドガラスのよう翼、捕食者の眼、人ならざる者の威圧感が感じ取れた。


「お嬢様、お客様でございます」


「ようこそ、我が館へ……なにか御用かな」


 呼ばれた吸血鬼は相手を見て妖し気に微笑む。少女は背筋がゾクリとし、蛇に睨まれた蛙はこんな気分なのだろうかと考えた。だが、そんな考えを見透かされない様、ポーカーフェイスを飾り、


「……お前が月を青く染めているのか」


 単刀直入に問い詰めた。その言葉に吸血鬼は笑い、そうだと答えた。相手が素直に話したことに驚き、理由を尋ねる。


「なぜそんなこと?」


「まあまて、そう言う話は自己紹介をしてからだ。私の名はブルー、吸血鬼だ。お前を案内したのはゾンビでメイドのディナだ」


「ディナでございます」


 吸血鬼ブルーは話を遮り、自分らの名を名乗った。そして会釈するディナ。この状況では少女もせざる負えない、自己紹介は大切だ。少女は咳払いし、自己紹介を始めた。


「私の名は(りょう)。青い月を止めに来た者だ。ブルーなぜ騒ぎを起こし人を恐怖させる」

 そう名乗りブルーに手紙を渡す。ブルーは中身を見て自分を殺す文字を見て、できるものかよ思いと鼻で笑う。そしてそれを手渡してきた了を、頬杖をつきながら注意深く見た。

 了の姿は黒髪でシュートカットの髪形をした年若い少女で服装も特別変わった物で無く、白いジャケットにスカートをはいた見た感じ何の変哲もない人の姿だ。彼女はとっては取るに足らない存在と判断し、笑う。


「決まっているだろ。人を恐怖させるのは化け物の(さが)だ、ここが何処であろうとな」


 さも当たり前のように答えた。その言葉には蔑み、見下しといった感情が含まれており 了に少しの不快感を与えた。しかし、彼女は事を荒立てたくない思いもあり頭を下げ頼んだ。


「どうかやめてくれないか、人が怯えている」


「嫌だね。弱者の言うことなぞ聞けるか」


 ブルーは鼻で笑い、頼みを断った。彼女の吸血鬼のプライドがそうさせた。

 その返答に了は頭を上げ、ブルーを威圧した。


「どうしてもか?」


「どうしてもだ」


 ブルーの拒絶の言葉に了は力強く答える。


「どうしてもやめないというならば、私はお前と戦ってでもやめさせる」


 そう言い見据える。彼女には吸血鬼に対する恐怖はなかった。ブルーは彼女の言葉に苛立ちを覚え鋭く睨み凄んだ。


「力ずくと言うわけか。できるのか?ただの人間ごとき」


「ただの人間、それはどうかな?」


 言葉を遮り、了は毅然と答えた。


 弱者の囀りにブルーの苛立ちは頂点に達し、了を殺す事に決めた。


「ならッお前の力見せてもらおうかッ!」


 その言葉と同時に飛びかかり、了の顔面にパンチを放った。その瞬間奇妙な音声が流れた。


<アイアン>


 ブルーの拳は了の顔に直撃した。彼女は壁に叩きつけられ、分厚い壁は衝撃で大きく音を立てて崩れた。普通の人間にはできない、吸血鬼の力のなせる(わざ)だった。

 ただの人間なら今の一撃で死んでいることだろう。しかし、殴ったブルーは浮かない顔をしていた。 


「何だ今の音は…そして当たった時の感触…」


 彼女は自分の手を見ながら不思議に思っていると、崩れた瓦礫の山から音がした。目をやると、そこには五体満足の了が立っていた。


「かなり痛かったぜ」



 彼女は『カード』を手に持ちながら、服についた汚れを払いを落とし気軽に言って見せた。ブルーは困惑のあまり声を荒げた。


「!?なぜ生きている!何をした!」


「このカードのお陰さ」


 困惑する彼女に手に持つカードを見せた。それはブルーが初めて見る物だった、彼女はそれを興味深く見て了に尋ねた。


「それはマジックアイテムの類か?」


「似たような物だ。これはエルカードと呼ばれ使用者に力を与えるカードさ」


 了はカードひらひらさせながら話し続ける。その態度を見てブルーは、了が戦える者だと認識を改めた。


「さっきアイアンと書かれたカードを使い、体を鉄にした」


「なるほど…ね」


 彼女はそれを聞き理解して、了に不敵に問いかける。


「しかし、そんな事を教えても良かったのか」


「構わんよ。言ったところで負ける気はしないしな」


 了は確かな自信を持ち、吸血鬼を挑発する。しかし彼女も言い返す。


「だがそれ一枚だけでは」


「他にもあるぜ」


 了の余裕の表情と言葉を聞いたブルーは喜んだ。彼女は戦いを好む性格なのだ。


「そうか、なら楽しめそうだッ!!」


 その言葉と共に彼女は再び飛びかかった。


「また同じ手かッ」


 了はその行動を愚策と判断した。ブルーを受け止め、攻撃を加え様とするが、彼女にとって予想外の出来事が襲う。吸血鬼は了を掴み、天井、屋根を破壊し上にとんだ。


 掴まれた彼女は何とか振りほどこうとするが、吸血鬼のパワーには及ばなかった。やがて二人は空に出た。


 夜空には青い月。そして吸血鬼と了だけだった。ブルーの翼が月光に当てられ美しく光る。


「いくら鉄になろうとも、この高さから叩き付けられればただで済むまいッ!!」


 言葉とともに了を、勢い良く地面に投げ捨てた。もし地面に衝突したなら大怪我を負ってしまう。

 それを防ぐため彼女は、カードホルダーから、新たにカードを取り出し発動した。


<グリフォン>


 音声と共に了の背中から機械的な翼が現れた。このカードは風を操る力と飛行能力を与える。ブルーはその様子を見て驚いた。先ほどまでなかった化け物の力が備わったためである。彼女は逆風を起こす。そして地面ギリギリのところで衝突を回避し、ゆっくりと地面に降り安堵のため息を吐いた。


「危なかったぜ…」


「何を安心しているッ!まだまだこれからだッ!」


 ブルーは叫びと共に急接近し、勢いをつけたパンチを繰り出す。それを迎撃するために了はすぐさま新たにカードを発動させた。


<オーガ>


 すると背から翼は消え、音声とともに右額に角が出現。さらに拳に火が纏った。<オーガ>は鬼の力を与えるカードだ。


「パワー比べだッ!!」


 叫び、ブルーに向かい拳を突き出す了。両者の拳がぶつかり合う。結果吸血鬼の拳が砕けた。鬼の力を得た事によりパワー差が逆転したのだ。

 手が破壊されたことでブルーは一瞬だが怯んだ。それを了は見逃さず好機と捉え、そのまま殴り続けて館の方にぶっ飛ばした。


「ウオオオ!!!!」


「ガアアアアアアアアアアアア」


 相手は防御することは出来ず、燃えながら叫びと共に館の壁に叩きつけられた。壁は叩き付けられた衝撃で、大きな亀裂が走った。そして地に伏した。それを見て勝利を確信する了。


「やったか」


「私は吸血鬼……この程度では死なないッ」


「何!?」


 しかし、吸血鬼は深手を負っていたが立ち上がっていた。攻撃を喰らっても闘志はまだ消えていなかったのだ。その様子を見て、彼女は新たにカードを発動した。


「……らしいな。だがこれならどうだッ!」


 <ドラゴン>


 角は消え、両腕にドラゴンの頭部をもしたガントレットが現れる。

 それをブルーに向けるとドラゴンの口が開き、水弾を連射した。水弾は相手に命中するが威力は低く、バシャバシャと音をたてただけ。

 そのためかブルーは水弾を甘いモノだと判断した。がしかし、


「水鉄砲ごときで…なんだと!?!」


  彼女は驚愕した。水弾を受けた自身の体が、溶けるような音を立てて煙に変わっていくのだ。この現象は<ドラゴン>のカードの力によるものだ。

 <ドラゴン>の力は聖水による浄化である。それは化け物の彼女としては致命的であった。うめき声を上げ再び地に伏す。


 地に伏しながら、先ほど鬼の力に与えられた傷がなければ避けられたかもしれない。そう考えた。だが


「……いや無いな。私の完全敗北だ」


 吸血鬼は否定し敗北を受け入れて気を失った。戦いは了の勝利で終わった。


――――


 クソ傷が痛む。ブルーは頭の中でそんな風に考えていると視界が開いた。


「生きているだと?」


 彼女は自身の命があることに困惑し、辺りを見渡す。 彼女がいた場所は自分の寝室であり体には包帯がまかれていた。隣にはディナが立っており心配そうにしていた。


「目を覚ましましたかお嬢さま」


「なぜ私がここにいる?」


「負けたからです。怪我も負いました」


「違うなぜ生きている。了のやつは私を始末しなかったのか!?」


「それについては了様からお聞きください」


「居るのか!案内しろ!」


 傷を負っていること忘れ、ディナに催促し、了がいる庭へ向かった。


 了は青い月を見て夜景を楽しんでた。そしてブルーがやってきたことを知ると、大丈夫かと声をかけた。しかし声をかけられたブルーは怒る。


「なぜ私を生かした。戦いに負けたものは死、それが当り前だ!」


 手紙の内容の事もあるが、ブルーとってはそれが当たり前であった。彼女は人間と化け物の闘いはそういうモノであると考えていたからだ。それを聞いた了は驚き言葉を返した。


「私はブルーを殺したくないし」


「退治しに来たのではないのか!?」


「私は月をもとに戻してくれと言いに来ただけだぜ。それにブルーの死は望んでないよ」


「しかしなあ!……」


「しかしも何も、私は勝った。強者の言うことは聞いてくれるよな」


 彼女は月を見ながら言う。ブルーは了が自分より強い者だと分かった。

「……そうだな強者の言う通りなら」


 了の言葉にブルーは目を伏せ納得し指を鳴らした。すると青い月は消え夜空には金色に輝く月が現れた。了は月を元に戻してくれたことに喜び、笑みをこぼす。


「ありがとうよ」


「次は負けない」


 その笑顔につられブルーも笑う。二人の様子を見てメイドのディナは安心した。


「いやーお嬢様が死ななくて良かったですよーいや本当にもし死んだらどうしようかと思いましたよー特にお金」


「おまえーなー」


 ブルーはその言葉に頬を膨らませ顔赤くし、怒りの表情をディナに見せる。するとディナはあることに気がついた。


「あら怒ったら顔は赤くされるんですね」


「ゆるさんんん!!!」


 それを聞きさらに彼女はより顔を赤くした。そしてディナに説教を与えようとしたが、彼女は笑って逃げる。 それを追いかけるブルー。そんな二人の様子を見て了は笑う。月は優しく世界を照らしていた。


 こうして青い月事件は解決した。

―――


 翌日人里にブルーの手紙が届いた。青い月の事に関する謝罪と今後は仲良くするという内容だった。

それを聞いた了は律儀だなぁこの世界では珍しいと思い、また約束を守ったり詫びを入れたりするあたり根は良い奴なのだろうとも思った。


 布団の中で ……


 事件を解決したことにより報酬が支払われ、彼女はすぐさま布団を買いに走った。夜に寝ずに戦ったので疲労困憊である。了は布団に入るとすぐに眠れた。


「快適だぁ…」


 ゆっくり眠ることができた了。後にそのことを了がブルーに話すと「布団のために戦っていたのか」と呆れられた。呆れられた了はそれでいいのさと一人思った



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