第3話「誰?!」
ドキドキ。
俺には縁もゆかりもなさそうな、可愛げな洋服が……
「なあ、あの子かわいくね」
「うわ、彼女だったらめっちゃお前とかに自慢するわ、
もちろん2S」
「そしたら俺が本気で口説くから」
あわわ、男が男に口説くとか言ってるよ、やば。
あ、
違う。
俺、今……女だった。
「あの……」
「いらっしゃいませ〜〜、何かお探しですか?」
「か、か、か」
「か?」
だめだ。
でも、言わないと。
「かわいい……服ありますか」
目が点になる店員。
だよね、
俺何言ってんだろ。
男が「かっこいい服ありますか」ってメンズの服屋で言わないよね。
ばかだ、俺は。
あ〜〜3分間だけタイムスリップしてえ!
「お客様なら、なんでも着こなせそうですけど〜」
「え」
そうにこにこしながら店員が言ってきた。
「お探ししますね」
あれから少しして、鏡をみる。
「……何これ」
「とってもお似合いですよ」
けっこう肌出てる。
なにこれ……
なにやってんだ俺。
そう言いながらもセクシーポーズをとる。
「うふぅん」
通りすがりの中学生が同時に鼻血を垂らした。
……どんだけ可愛いんだよ、俺。
店内で流れてるSHISHAMOの曲が似合いすぎだろ、俺。
× × × × ×
「間も無く終点立川です」
あ、
降りなきゃ。
どきどきする。
どうしよう……来ちゃった。
気づいたら、拓也のテニサーの新歓に。
来ちゃった。
新しく買った服で。
心臓の音が隣に座ってる人に聞こえそうで、聞こえないように自分の
体を抱きしめる。
「立川〜立川」
なんとなく降りたら……
拓也がいた。
「きゃ」
思わず隠れてしまう。
てかなんだよ、『きゃ』って!!
まじで女見てえ!
女だけど!!
友達と楽しそうに歩いている拓也。
かっこいいな。
好き。
こっそり跡をつけるが、見失ってしまう。
ああ〜〜〜、駅広くて集合場所わからないよ。
見失ってんじゃねえよ〜〜俺。
どうしよう。
なんかいつもより疲れやすいし、
足がスースーしてなんだか恥ずかしい。
思わずしゃがみこんでしまう。
色んな男が俺のこと、じろじろ見てくる。
なにこれ……
どんだけ俺、可愛いんだよ。
モテる女ってこういう感じなんだ。
なんか変な感じ……
試しにセクシーポーズを取ってみた。
「あぁん」
「んふ」
やば。
60歳くらいのよれよれの『アイアムクレイジーボーイ』と書かれたTシャツを着たおじさんがめっちゃガン見して近づいてくる。
「えへ」
おじさんがいきなりにやにやしてこっち見ながら、
「ねえねえ、それ誘ってるよね」
「違います」
「いや!じゃあなんで俺の方見てあぁんとか言ったの?!」
「違います、あなたに向けてではなく……」
「素直になっていいんだよ、可愛いなぁ」
「ちょっと、だいぶ気持ち悪いですよ……?」
「売られたフェロモンは、買う主義なんだよね〜〜俺」
「そんなフェロモン売ってねえよ!」
「いいねえ強気で、俺こう見えてMなんだよね〜〜」
そう言いながら、手を握ろうとしてくるおじさん。
「ちょっとやめて……!」—
—「ねえおじさん」
いきなり声がした。
「あ??? なんだてめえ」
「ふぅっ」
誰かがいきなり、おじさんの耳に息を吹きかける。
「あっ、!!!いやああああぁぁん♪」
おじさんが全身で感じる。
「逃げるぞ!!」
そう手を掴んだのは……
誰?!!
つづく




