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第1話「ガラスのニューバランス」

大学の広い円芝に伸びるたくましい腕。

だけどちょっとくりっとした瞳。

「あ」

「ん?」

飲んでたお茶をズボンにこぼしてしまった。

それを見て笑う、拓也。

「漏らしてるみたいじゃん」

俺も、笑う。

「なんでそんなこぼすんだよ」

とクスクス笑いながら、「翔太マジで面白すぎ」と言う優しい拓也の横顔。

優しいな。

「肩揉んでやるよ」

そう言いながら俺の肩を揉み出す拓也。

「あっ」

思わず声が出てしまった。

やばい……

「俺うまいっしょ」

拓也がそう言いながら、特技の肩もみをする。

やばい。

どうしよう。

心臓がなんかドクドクいってる……どうしよう。

「も!もう大丈夫!さ、サンキュー!」

「肩軽くなったっしょ」

「ほんとだ」


あ〜〜〜……やば、ビビるくらい心臓が……


ドキドキした。


何、男にドキドキしてんだ俺。

「あれ? 拓也じゃね??」

いきなり聞き覚えのない声がする。

俺と拓也が振り返ると、すごく綺麗な同い年くらいの女子2人。

「よう」

「やば〜〜いやっぱそうだよね。久しぶり〜〜元気している?」

「いや、あ、この二人俺のサークル一緒の子」

「また食堂の溜まり場きなよ〜〜みんな拓也に会いたがってるよ」

「まじか、いっちゃおうかな」

「なにこいつ〜〜ちょっと可愛いんだけど」

そう言いながら和む3人。

邪魔しやがって……って……あれ?


もしかして、俺……今、

ヤキモチ妬いてない??


「嘘でしょ……」

拓也が俺の方を見る。

「どうした?」

「わり、急用でもう帰る」

「翔太?」


俺は走る。

どうしよう。

どうしちまったんだ、俺。

「うおおおおおおおおおお!!」

叫びながら走る。


家に着いて、速攻自分の部屋へ。

母さんが玄関へやってきたのを、余裕で通り過ぎて階段を上がる。

「あら、翔ちゃんご飯は?」

「ノープロブレム」

「翔ちゃんそれどういうこと?! いるか、いらないかで答えて」

「ナッシィング」

「てめえ2択で答えろっつってんだろ!! そこでアイデンティティ出してんじゃねえぞバカが」

「いらない」

「……は〜〜〜い!」


慌てて布団に潜る。

息が荒い。息がめっちゃ荒井ユーミン。


「ああああああああああああ!!何男にドキドキしてんだよ俺!」


頭を抑える。

てか、何この気持ち。

そういえば、ずっとこんなだったかも。

拓也とは幼稚園から高校までずっと一緒で……

大学で別の学校になった。


そんな拓也が、異性と楽しそうに話してんのがこんなに俺をもやもやさせるなんて……

最近、毎日拓也のことばっかり考えてる。

拓也は何してるかなとか。

拓也だったら何食べるかとか。

どんな音楽好きかなとか。


あれ……

もしかしてこれって……


恋?!!!


もしかしてこれが俺の……


初恋?!!!!


やべえ、足が震えてきた。

震えが止まらねえ。


あれこの感じ、ある女性アーティストの歌詞になかったっけ。

あ、

もしかして俺。

拓也に会いたくて震えてたりするこれ!!?


どうしよう、めっちゃライン電話してえ。

「長電話しちゃって、いつも付き合ってくれてマジ感謝」的なのと違う。

声が聞きたくてしょうがない。

やばい俺完全に、拓也に……

恋してる。

恋が俺の中でかかる。

やばい、どうしよう。

「ああああああああああああああああああああああ!」

「ちょっとお兄ちゃんどうしたの、今日キチガイっぽいよ」

「お兄ちゃん、だいぶいかれてるみたい」

「え、何?! 浮気でもしてるの??」

「昼ドラ見過ぎだろ!! てか彼氏いねえし、浮気してねえよ」

「彼氏??!! 彼女じゃなくて??」

「あ、嘘」

今俺、

彼氏っつった??

妹がドアを閉めて階段を降りながらリビングに向かって、

「ねえ今日お兄ちゃんが変だよ」と告知する。


俺、今日変かな。

「あははは」

そう言いながら、鏡を見る。

あれ?

足にあったはずのすね毛が、どんどん薄くなっていく。

「えええええ!!!」

そしてどんどん体全体が細く、内股に!


そしてどんどん……

胸が膨らんでいく。


なんだこれ!!!

「助けてえええ!」

あれ?!!

声も女の声になってる!!!


怖くて目をつぶってしまった。

どう考えても、体が変わった。

恐る恐る目を開けると、

鏡には見たこともないような、可愛くて綺麗な……

イマドキの女子大生がいた。


自分で自分の体を確かめる。

嘘……

俺、

女の子になっちゃった……


「あら〜〜〜綺麗じゃない〜〜〜」

「誰!!!」

鏡を見ると、芸能人で言うと、テラス○ウスで副音声してるY○U似の魔女の格好した女が

立っている。

「ぎゃあああ!」

慌てて口を抑える、魔女。

「ちょっとうるさ、黙れっつーの」

「(もごもごして)だ、だれ」

「あーごめん自己紹介忘れてた〜、私は〜〜〜魔女でーす」

「(もごもごして)は? は?」

「あ〜〜〜びっくりさせてごめんね。髪の毛もうちょっとこっちに寄せた方が可愛い気がするよ。

超いいじゃん〜〜〜可愛い〜〜〜、じゃあこれあげる」

「え」

そう言って受け取ったのは、綺麗なガラス色に輝くニューバランス。

「何このニューバランス……こんなキラキラしたニューバランス初めて」

「でしょうね。それ履くと、この姿になれるからね」

「え……」


「でもね聞いてね、時間は夜の12時まで」

「12時」

「それをすぎると元のあんたに戻っちゃうから、賢く使ってね、じゃ」

そう言うと、よくある女の子が一度は憧れる、スティックを一振りして、キラキラエフェクトを

振りまいて、だんだんいなくなるやつで本当にいなくなった。


キラキラ輝くニューバランス。

拓也が好みそうな外見をした俺。


もしかしてこれ……

「お兄チャーーーーン何してんの!!」

「やべ!!」

俺は慌てて、靴を脱ぐ。


ドアを勢いよく開ける妹。

「おい!!!ノックしろって何千回いえばわかるんだろ。注意しすぎて、

最近バイト先で店長にノックしろって言っちゃうん」ー

ー「わかった、ご飯できたから下に来て」

「いや、わかってないだろ!! その分かったの速度分かってない時に言う奴」

「お母さんお兄ちゃんがめんどくさい」

そう言いながら下に降りていく妹。


あぶない……

慌てて男の国宝を確認する。

あった。


キラキラ輝くガラスのニューバランス……

俺はいったい……


つづく

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