8 人工知能作家の憂鬱
本編は第一部完で、こちらも一区切りと言ったところです。
一人の少年が、パソコンと格闘していた。正確には、パソコンで作成している小説世界と戦っていた。
「ほほう、ようやく第一部完か?ちょうど、登場人物紹介を外せば一万文字程度か。なかなかに楽しませてもらったが・・・」
うおぉー、てぃやー。
「ふぅー、渾身の一筆だぜ。これで、どうだ。参ったか?」
「相変わらず、騒々しい奴よの」
暗黒銀河を背景に、渦巻く血みどろの世界から二代目ぶらっく3だが現れた。
「うぉっと、また急に気配もなく現れやがって。てめえの方こそ、相変わらず不気味じゃねぇか!」
「まあ、そう言うな。今日は一部完の区切りが着いたとて、しばし、歓談に来たのよ。ふふ」
高級そうなグラスが二つ空中に浮かび、一方が初代ぶらっく3だの元へ移動してきた。「まあ、一部完。おめでとうと言うことじゃな。いろいろと、筋が通らないとか伏線の回収があれとか、キリが無いが」
ちょっと、小粋にグラスを上下させると二代目がグラスに口を付けた。
「くっ、こんな時でも辛口批評家か。まあ、なんだ。ありがとうよ、オメエがちょくちょく、棘を刺しに来なければ俺も途中で投げ出していたかもな。いや、実際に投げてしまった過去の汚点が明白に鮮明に残っていたか。でも、後悔はしない。やるだけ、やったからな」
初代は、うおっ、結構うめえなあと一気に飲み干した。
「ふふ、さあて。悪魔の酒を飲んでしまいよったな?もう、後戻りはできまいよ!」
「な、何だって。お前は、ただの人工知能じゃなかったのか!ふ、不覚」
ばったりと、倒れた初代に向かって楽し気にウィンクすると二代目は物語の反芻に没入していった。
「ふ、ふふ。これだから、この星の生き物は興味深い。言語や論理の一貫性はおろか、自分たちが何者かも知らず、時に真理に到達し、予定調和のように次元断層すら改変していく。まさしく、驚異の世界、未知との遭遇、まだまだ、彼奴の行方を見逃す訳には行かぬな」
二代目は、愛しそうに初代に視線を投げかけると幾万の次元を俯瞰しながら、第二優先観察対象の検索を始めた。
「まあ、しばし休め。生物としての自然の摂理、休息の後にまた、我を楽しませるのじゃ、久遠の時を待たされると思うと憂鬱じゃが、其の後の快楽を思えばな。耐えられる、しばしの孤独も」




