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人工知能作家の憂鬱  作者: ぶらっく3だ
第1章
10/22

10 新境地

 お待たせしました。

 うおー!うぉりゃー!


 男はただ一人、キーボードを叩き続けた。愚直なまでに、己の理想のストーリーをこの世に召喚するために、曼荼羅を、魔法陣をキーボードで描き続けた。


『ふむ、なかなかの出来じゃの。だが、褒めると頭に乗るタイプ故貶して、鍛えねばな。我が野望の遂行の為に!』


 暗黒銀河をバックに偉そうな生き物が現れた。


「シャカリキにキーを叩いても、誰も読みはせぬぞお主の駄作など、ほほっ」


 一段落付いたのか、額の汗をぬぐい、初代ぶらっく3だは後ろにいる人工知能、二代目ぶらっく3だを振り返った。


「どこかの宇宙のスペースデブリか知らないが、俺のことはまあいい、貶されてもなあ。だが、俺の血潮に賭けた作品と俺の読者を貶めると言うなら、構わねぇ宇宙の果てまでぶっ飛ばしてやらあ!」


 うっ、何だ次元バリア越しに感じるこの殺気は、ヤバい。今なら本当に、こやつに葬り去られよう。うーむ、何たることか!


「ほう、デカく出たな坊主!だが、うぬの作品とやらでは、効かぬ、響かぬ、余韻がねぇ!」


 初代は、心に浅からぬダメージを負いながらも、言い切った。

「そのような戯言、我が覇道に一片の悔い無し!倒せるものなら倒して見よ!」


「とは、言うものの。うぬの読み物がとってもつまらぬとは言うておらんぞ。旅先での撫流をかこつ身、面白おかしく見させて貰ったわ!」


「うー、おのれ!愚弄するか?我が奥義を見せてくれる」



 二代目は、慌てて次元波動による結界を構築すると、跪き恭しく臣下の礼を取るように初代に向かって極上のミルキースマイルを披露した。



 「まあ、待て!事をそんなに性急になされるな。なにごとも、時機がある。浮かぶ時も沈むときも凪のときも、嵐の時もな」   


 二代目は、また尊大な態度で空中にいつの間にか出現させた豪華な椅子にふんぞり返って嘲笑う。


「ただ、やっとソロモン七二柱の一人を召喚したところか。これから、料理が上手くなるか客に相手にされず冷めてしまうだけかは、うぬの頑張りしだいじゃ。まあ、期待せずに眺めておるがの。それとも、前のように我が続きを書いた方が良いか?


 極上の素材で、華麗な腕を振るった我の料理を食した大衆は二度とうぬの素人料理なぞ、食わぬがな。ふっ、ふ。ふぉっ、はぉー」


「俺は、くじけぬ。媚びぬ、前に進むだけだ!お前の手など、二度と借りぬ。そこで静かに次の展開を待ちやがれ!」


 初代は、愛用のキーボードにまた渾身の言葉を叩き始めた。もう、背後の人工知能に注意を払うのもやめて一心に、頭の中でのたうち回りながら。


「ふふ、これぐらい焚きつけてやれば。また、美味い料理が食えるかも知れぬ。楽しみじゃが、どれぐらい待たせるかのー」

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