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魔法工房喫茶 グリモワール  作者: 如月詞葉
1章 日常生活
7/9

7話 きっかけ

 営業再開した店に戻り、明日の準備をしているファベルにクラリンスはコーヒーを飲みながら聞いた。

「ファベルはなにがきっかけで、先天性魔力自閉症だって気がついたんだ?」

 クラリンスの問いにファベルは言った。

「魔法について学ぶ事が許される年齢は6歳。そのぐらいの年齢になると、魔法学校に入学して魔法適性検査があるだろう?俺はその時に確信したんだ」

 まぁ最も、とファベルは続ける。

「なんとなくそんな感じはしてたんだよなぁ。周りは何かしらの魔法の予兆があって、なかには遣えてる子もいたのに、俺にはそれがなかったから」

 クラリンスはさらに問いかけた。

「ファベルはどこの魔法学校に行ってたんだ?マージアにもあるし、他国にもあるだろう?」

 魔法学校は各国に1校必ずあり、6歳から入学することができ18歳で卒業する。魔法学校の学科や専攻はその国にある魔法学校によって異なる。

 ファベルはクラリンスの問いに、手を止めることなく答えた。

「プルミエ魔法学校 魔法彫金学科 魔法工学専攻」

 クラリンスはその言葉を聞いて、口をあんぐり開けた。プルミエ魔法学校は、数ある魔法学校の中でも最高峰の魔法学校だ。

「自分の意思で魔法は遣えなくても、守り石の能力で魔力を自在に操作することはできたからね。彫金師になるしかなかった」

 皮肉なもんだよな、とファベルはポツリと言った。

「俺は魔法が遣えないのに魔力等級は上。なのに魔法彫金で魔法道具マッジク・ツールを創ってなきゃ、生きていられない」

 予測不能な時限爆弾付きの身体なんだよ。とファベルは守り石を眺めながら言った。

「さっきも言ったけど、同情しないでくれよ。俺は後悔してないし、タイミングが重なったから話しただけだ。クラリンスのせいじゃない。いずれ話さなきゃいけない事だったしな」

 ファベルはクラリンスにコーヒーを入れ直しながら言った。クラリンスはそれを飲みながらふと聞いた。

「ファベルはなんで俺に話そうって思ったんだ?いずれ話さなきゃいけない事だって言ってたけど」

 クラリンスの問いに、ファベルは少し考えながら言った。

「何となく。それに隠し事してるみたいで、俺が嫌だなって思ったから」

「そうか」

 ファベルの言葉にクラリンスは一言そう言った。そういえば、と気になったことを聞いた。

「守り石の能力って個人によって違うって聞くけど、そうなのか?」

 クラリンスの問いにファベルは「違う」と即答した。

「守り石は自分の分身。だから固有の能力も違うし、不用意に見せないほうがいい。守り石が割れたり壊れたりしたら、自分にダメージがくるから」

 ファベルの言葉にクラリンスは思わず

「じゃあなんで、それ知ってて俺に見せたんだよ」

 とツッコんでしまった。それを聞いたファベルは

「信用してるから。それにあれは見せなきゃ解らねぇだろ」

 と言った。クラリンスは「確かに」と思った。

「守り石の加護って聞いたことあるか?」

 ファベルは不意にクラリンスに聞いてきた。クラリンスは首を横にふった。

「守り石の能力は個人によって異なり、それに気づくのも個人で異なる。基本的に守り石に宿ってるものなんだけど、ごく稀にあるみたいだぞ?それが守り石じゃなくて、人に宿る場合が。それを守り石の加護って言うんだ。そして守り石の加護を持つ者は、守り石の名を冠するんだ」

 クラリンスは「あっ」と思わず声が出た。

「エムロード国のサフィール姫王!」

 クラリンスの言葉にファベルは頷いた。

「サフィール姫王は過去と未来を視る能力を持っていて、自分の守り石と王家の守り石をどっちも持っているらしい。それに魔力等級は7で、風と水と氷の魔法の遣い手らしい」

「ファベルってそういうのってどこから聞いてくるんだ?」

 やけに詳しく言うものだから、クラリンスは思わずファベルに聞いてしまった。

「ここは色んな人が来るからそれで」

 ファベルはさらりと言った。クラリンスは思わず苦笑いした。

 店ーーグリモワールには平和な時間が流れていた。

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