表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法工房喫茶 グリモワール  作者: 如月詞葉
1章 日常生活
4/9

4話 永遠の絆Ⅱ

ー私はあの日のことを忘れられない。

ずっと記憶に張り付いて、消すことができないのだ。だったら。

ーこの想いで、あの人を殺してしまおう……。

ー☆ー

時間通りにサラは来た。昨日のように、深い闇を宿した瞳をして。

「本当に良いんですね?」

ファべルは確認するように聞いた。サラは迷う素振りを見せずに頷いた。ファべルは軽くため息をつき、濃い紫の十字架の意匠で中心にブラットストーンが埋め込まれているピンブローチをサラに渡した。

暗黒ダークネス 永遠の絆が籠められた魔法道具マッジク・ツールです」

クラリンスはなにか言いたげにこちらを見ていた。

「これがそうなのですね。依頼を受けてくださりありがとうございます」

サラはカウンターの上に5アルマを置いた。

「依頼の報酬です。足りますか?」

サラの言葉にファべルは頷いた。むしろ多いくらいだ。

「では、失礼しますわ」

サラはそう言い、店をあとにした。

「ありがとうございました。またのご来店、お待ちしております」

ファべルはそう言い丁寧にお辞儀をした。

「ファべル…」

クラリンスの声にファべルは無表情で答えた。

「分かってる。行くぞ」

ファべルとクラリンスは店を出てサラのあとを追った。

ー☆ー

私は約束の場所に向かった。

「久しいな、元気だったか?」

栗色の髪をした男ーランディが声をかけてきた。私は笑って、

「お久しぶりね。元気よ」

と私は言った。

「話ってなにかしら?」

私は本題をきりだした。ランディは笑みを深くして言った。

「君と再婚したいんだ」

ランディの言葉に私は吐き捨てるように言った。

「嫌よ。自分の子を贄に提供した貴方となんか、居たくないわ」

私の言葉にランディは口調を変えた。

「望まぬ子など産むからだ。俺には関係ない」

私はなんとなく気づいていた。ランディは悪魔降ろし(ネクロマンサー)の魔法実験以外に興味を示さない。悪魔を召喚するために、自分の子を平気で贄として提供できてしまうぐらいだから。

「私は貴方を赦さない……!」

私は濃い紫色をしたピンブローチに触れた。ピンブローチから黒い光が溢れ、蠢いていた。

「‼ それは……」

ランディはピンブローチに組み込まれている魔法に気づいていたのだろう。金色の魔法道具マジック・ツールー恐らく明光ホーリネスの魔法が組まれている魔法道具マッジクツールを取り出した。魔法を展開しようとしたけど、先に私が発動した永遠の絆が魔法を完成させていた。

ーピンブローチから溢れた黒い光がモゾモゾと蠢き、人の形に変化していった。

「エリウス……」

ランディは掠れた声で自分の子供の名を呟いた。黒い光はエリウスに変化していた。

エリウスは感情のない瞳でランディを見据えていた。そして、金色の刀身をを持つ剣をランディに向けた。

「その剣は……。やめろ、やめてくれ‼」

ランディは背を向けて走り出した。エリウスはランディを見据え、手に持っていた剣を投げた。

「うぐああぁあぁあぁ……」

エリウスの投げた剣が背を貫き、ランディは倒れた。エリウスは背に刺さった剣をおもむろに抜き、ランディをメッタ刺しにしだした。

ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ……。

「ランディ、貴方がエリウスをどうやって殺したか忘れたなんて言わせないわよ……」

もう声をあげなくなったランディを見下ろし、私は言った。ふと、視線を感じ顔をあげると、そこには血で真っ赤に染まった剣を構えるエリウスがいた。

「……え?」

私は訳が解らなかった。混乱している私を、エリウスは感情のない瞳で見据え、剣を構えて走り出した。

ーー私の心臓に向かって。

胸を斜めに斬られたのが解った。不思議と、痛みは感じなかった。エリウスの姿は霧のように霧散して消えた。

薄れていく意識になか、私は聞き覚えのある声を聞いた。

「あんな男を呪い殺すために、貴女は暗黒ダークネスを遣ったのか」

私は聞かれた問に微かに頷いた。掠れた声で私は言った。

「あの男は私の子を黒魔法実験の贄にしたの……。だからどうしても許せなかった」

私の言葉に、声は言った。

「貴女は暗黒ダークネス永遠の絆がどんな魔法かご存知ですか?」

私は頷いた。

「……暗黒ダークネスは少ない魔力で相手を簡単に殺せる、数少ない魔法です。その代わり、代償も大きい。威力が強力になればなるほど、代償も大きくなる。貴女はそのことをご存知でしたか?」

私は首を振った。代償なんか、全て一緒だと思っていた。

暗黒ダークネスの基本は「等価交換」だ。望んだ絶望の分だけの代償が自分に還ってくる」

声の主がなにか凶器を出した気配がした。

「貴女の魂が、冥府の神 ハデスに受け入れられることを祈っています」

その声を最期に、私の意識は途切れた。

ー☆ー

 サラが店を出たあと、ファベルとクラリンスはサラの跡をつけた。サラの瞳に宿る憎しみの根元がなんなのか、知りたかった。あの男ーランディとのやりとりを聞いて、クラリンスは不快な気分になった。同時にサラを哀れに思った。

ーそんなことのために、貴女は暗黒ダークネスを遣いたかったのか。

 暗黒ダークネスの基本は「等価交換」だ。自分が望んだ絶望の分だけ、対価が必要となる。少ない魔力で相手を殺すことのできる数少ない魔法でもある。暗黒ダークネスを頼るしかないほど、サラの憎しみは深かったのだろう。

 ファベルはそっと、漆黒の鎌を取り出した。ファベルが漆黒の鎌を取り出すのを見て、クラリンスは何か言いたそうにしていた。クラリンスが言い出す前にファベルは

「貴女の魂が、冥府の神 ハデスに受け入れられることを祈っています」

 そう言って、鎌を振り下ろした。

「…良いのか、ファベル」

 クラリンスの言葉に、俺は頷いた。そして言う。

悪魔降ろし(ネクロマンサー) 死神の鎌は相手の魂を狩る事のできる魔法だ。

 それに良いも何も、あのままにはできないだろ」

そこまでする必要があったのかどうか、クラリンスには分からない。けれどあのままにしておくことはできないと思った。

「行こう。これ以上、店を留守にはできない」

そう言って、クラリンスとファベルはその場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ