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魔法工房喫茶 グリモワール  作者: 如月詞葉
1章 日常生活
2/9

2話 雑食植物 パックンフラワー

 ある日、常連のクラリンスが突然聞いた。

 「ファベル、玄関先の茶色の鉢植えに植わってる赤い植物あるだろう?あれ、なんだ?」

 クラリンスの問いにファベルは当然のように言ってのけた。

 「あれ、防犯用のパックンフラワー」

 「あ、パックンフラワーなんだ…って、ん!?今、パックンフラワーって言った!?」

 クラリンスは飲んでいたものを吹き出しそうになった。ファベルがあまりにもあっさり言うから納得しかけた。

 「パックンフラワーって、あの雑食植物の…」

 「そうだけど?」

 それがなにか?と言いたげなファベルにクラリンスは呆れるしかない。

 「だってパックンフラワーって雑食植物で、好物が人間なんだろ?だけど食べたらうまいって聞くけど」

 クラリンスの言葉にファベルは盛大に笑った。

 「それはそうだけど。店の防犯用のは記憶薬を溶かした水をやってるから、常連さんには攻撃しないよ」

 記憶薬とは、攻撃性の強い動植物を討伐したり、飼い慣らしたりする時に使う特殊薬の一種だ。材料自体は安価で手に入りやすく、簡単に作りやすい。

 「記憶薬の材料って、どういうのだ?」

 「時計草の根、葉、花びらに覚えさせたい人の一部。それを1cm幅に切って根、葉、花びらの順に入れて各10分ずつ煮る。深緑色になったら覚えさせたい人の一部を入れて、また10分煮る。できたら完全に熱をとって終わり」

 「覚えさせたい人の一部ってどうやって手に入れてるんだよ?」

 ファベルはあっさり、

 「簡単だよ~。だってここは喫茶店兼工房。常連さんの指紋とか髪とか入手は簡単」

 と言ってのけた。クラリンスはさらに呆れる。そして…。

 (なんで魔法が遣えないんだろうな…)

 と疑問に思うのだった。遣えない、というよりは適性がないという方が正しいのかもしれないが。

 「ただ問題があって…。毎日水やる時に記憶薬を入れないとダメなんだ。1日でも忘れたら誰かれ構わず襲うし。一応、来たことある人のは全員分記憶薬は作ってあるからあげてある」

 全く物騒な植物である。それを防犯用として使うファベルもすごいが。

 「食用のは専用の薬草園の中で栽培してる。迂闊に近寄ったら即、襲われるぞ」

 ファベルの言葉にクラリンスはツッコんだ。

 「言われなくても近づかないよ。そもそもこの魔法工房喫茶に薬草園があったこと自体、今初めて知ったし」

 喫茶店兼工房だからか、普通の喫茶店や工房よりは断然大きい。それでも薬草園や在庫を置く倉庫は隣接していないし、それらしき敷地も見当たらないし、それらしきものを見た記憶もないし、見たこともない。

 「言ったことなかったしね。場所はこの敷地買ったときに、ここから1時間ぐらい歩いた場所にあるデカい土地があったんで一緒に買った。薬草園は毒草から食虫植物までいろいろ栽培してる。在庫置き場もそこにある」

 「どうやってそこまで行くんだよ?朝、そこまで行く時間ないだろう?」

 グリモワールは朝8時開店。準備は前日にやっておくとか暇なときに行っていると以前、ファベルが言っていた。

 「後ろに茶色の扉があるだろう?」

 後ろを振り返ると確かに茶色の扉があった。言われなければ気がつかないだろう。

 「それ、転移扉。ドアノブで転移先は変わるんだ。薬草園に魔法石がおいてあるから。在庫置き場も似たような造りになってる。在庫置き場の場合、忙しいと取りに行く時間がないからジッパーも設置してるけど。壁と同化してるからパッとみじゃ分からない構造になってるし」

 某アニメに出てくるドアですか。構造は違うけど。

 その時、ドアベルが鳴り、1人の女性が入ってきた。今は朝の10時、一番平和な時間帯だ。

 「なにかご用ですか?」

 ファベルは穏やかにその女性が聞いた。

 「はい…。魔法道具マジック・ツールの製造をお願いしたいのです」

 「どんな魔法道具マッジク・ツールがよろしいですか?」

 女性は口元に笑みを浮かべて言った。

 「呪いの力をもった魔法道具マッジク・ツールなのですが…。お願いできますか?」

 ファベルとクラリンスは互いに顔を見合わせた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

○パックンフラワー

・雑食植物。9色ある。好物は肉も草も食べる「人間」。


・食べると美味。肉と一緒に調理してはいけない。


・色によって凶暴度が変わる。


・黒・・・パックンフラワーの中で最も攻撃的。毒素や毒ガス、毒液を作り出す。かなり猛毒。白のパックンフラワーでしか解毒できない。


・紫・・・黒のパックンフラワーの次に攻撃的。近づくと寄生したり精神攻撃をしてくる。白のパックンフラワーで作った治療薬でしか治療できない。


・赤・・・紫の次に攻撃的。近づくと誰かれ構わず襲い、火炎攻撃をしてくる。


・黄・・・赤の次に攻撃的。近づくと誰かれ構わず襲い、放電攻撃をしてくる。


・橙・・・黄色の次に攻撃的。植物のクセに飛行できるが数㎝しか飛ばない。赤、黄、青、緑と共によく食用として栽培される。


・緑・・・黒、紫、赤、黄、橙よりは比較的に大人しい。近づくと風系の攻撃をしてくる。どんな環境でも適応して生育することができる。


・青・・・パックンフラワーの中では大人しい。けれど攻撃的になることもある。近づくと水流攻撃をしてくる。冬になると氷系の攻撃に変わる。水中の中でも生育することができる。


・白・・・パックンフラワーの中では1番大人しい。攻撃性皆無。パックンフラワー専用の解毒剤として使われる。結界を張る時の魔法石の代わりに使用されることもある。

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