15話 思うこと
(たまーにいるんだよなぁ。感覚が鋭い子)
ファベルは店で飲食物の補充をしながら考えていた。
(腕輪を見せたのも悪かったかなぁ。あの一瞬で魔法の意匠がないって気づいたのかな)
それならそれで。とファベルは思った。
ファベルは先天性魔力自閉症で自分の意思で魔力を操れない。だからなのか、魔法の適性検査では「不適合」だった。
(そういえば、守り石の能力に気がついたのも学校に入学してからだったなぁ。
というか、自分が先天性魔力自閉症だって知ったのも入学してからだったっけ)
プルミエ魔法学校には魔力障害に詳しい先生がいた。その先生の善意で診てもらい、守り石の能力のことを教えてもらった。
(俺は自分がどの魔法の適正があるのか、今となっては分からない。知らなくてもいいと思う。彫金師にあるまじきことかも知れないけど)
魔力等級5以上の魔力があり、魔法を知っていれば、彫金師になれる。彫金師になれてよかったと心から思うファベルであった。
(あとでファルチェに、頼まなきゃいけないものがあるな)
ファベルはそう予感しながら開店準備を終え、店を開けた。
ー☆ー
その頃ファルチェは、地上1階の薬草園でドリアイドと一緒に植物の世話をしていた。
(やっぱりこの薬草園、すごい……)
きちんと整備されているから、どの植物の状態がとてもいい。ファルチェはファベルのすごさに舌を巻いた。
(ここの水はあげられたから、次は地下1階に行ってみよう)
ファベルさんは無理に世話しなくていいと言っていたけれど、気になるし。とファルチェは思いながら地下1階に向かう。
(これは……)
地下1階に着いて扉を開けたとき、ファルチェは思わず立ち尽くした。
異様。まさにその一言に尽きると思った。なにがこんなに異様に感じるのだろうと思って、よく観察してみると地上1階にはない違和感があった。
(瘴気……?でもこれ、瘴気じゃない。瘴気だったら、ファベルさんとこの建物に何かしらの影響があるはず。瘴気じゃないとなると……)
ファルチェは違和感の正体を探し、部屋を歩いた。そしてもしかしてと思い、流れてる水に触れてみた。
(やっぱり……。人には害がない程度の毒が流れてるんだ)
毒性のある植物もあるって言っていたな、とファルチェは思った。
(でもなんでここだけ水が流れてるんだろう)
その疑問はすぐに解決した。
(黒いパックンフラワー……。でもあれって)
毒ガスだったり、瘴気を吐いたりするはずなんだけど、どうして影響がないんだろう?そう思い、周囲を見渡すとあっと思わず声が出た。
(白いパックンフラワーがある。あれでこの部屋を浄化してるんだ)
白いパックンフラワーは唯一、黒いパックンフラワーの毒性を解毒することができる。そして、魔法石の代わりに使うこともできる植物でもあった。
唐突にファルチェの耳にキーっと声が聞こえた。その声にファルチェは聞き覚えがあった。
(マンドレイクまでいるの、ここ)
マンドレイク。魔力障害の治療薬で使われる植物の1つだ。それがここにあるということは。
(ファベルさんには魔力障害がある?もしくは研究してる?)
やっぱり聞いた方がいいのか。でも人の事情に土足で入るようなことしたくないし。そう思うファルチェなのであった。
ファルチェは黙々と作業をしていると、コンコンと控えめにノックの音が聞こえた。ファルチェは扉の方を振り返ると、ファベルが立っていた。そして
「香魔法の依頼が入った」
と言った。




