――そして今日も、夢を見る。
――そして今日も、夢を見る。
「幸せになって」
淡く微笑む貴方は、私に背を向けて去って行く。泣いて縋ることをしなかった私は、強かったのか、弱かったのか。
貴方は知らなかったんでしょう。自分の言葉がまるで鎖のように、私を縛り付けることになるなんて。
それとも知っていたの? だとしたら、なんて残酷な人だろうか。
その手で、別の誰かの頬を撫で、
その唇で、別の誰かの熱に触れ、
その微笑みを、別の誰かに向けるくせに。
もう二度と、私に与えるものなんて一つも無いと言って、最後にそんな言葉を残して去るだなんて。
やめて、やめて。言い訳が聞きたいわけじゃないの。愛を囁いて欲しいわけでもない。
せめて嫌いだと突き放してくれたら良かったのに。決定的に嫌な人になってくれたら良かったのに。
お願いだから、私の中に居座ったりしないで。
地獄に落とされるよりも、それは辛いことなのに。
憎みたい背中が視界から外れ、ようやく身体から力が抜けた。崩れ落ちた視界が、不自然に歪む。ああ、零れ落ちた涙が、救いようもなく冷たければ良かったのに。
――貴方の未来を知ったのは、それからしばらく経ってからのことだった。