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(15) ディナー

藤巳はアンチモニー校長の招待で行くこととなったオープンスタイルのレストランで、校長と共に食前酒のグラスを傾けていた。

 明日からこのポケール・ドラゴンスクールに入学することとなった藤巳には、昼に受けた説明だけでは聞き足りない問いが随分あったが、とりあえずは目の前のミステリアスな女と、その背後に停まるランボルギーニ・カウンタックの眺めを楽しんだ。

 学園生活で不案内な部分は、編入生の藤巳をお姉さまとして指導するというブラーゴとレベルに聞けばいいらしいが、まだ藤巳は彼女たちと円滑な関係が構築できるとは思えなかったし、どうにも聞くのが面倒臭い相手でもある。

 とりあえずは料理が届いてから、と思っていた藤巳のテーブルに、軽快な音が近づいて来る。

 軍用の四輪駆動車ジープ。

 車体後部が延長されたジープは、よく見るとアメリカ製ではなく日本がライセンス生産した三菱ジープ。

 ボディはこの店の雰囲気に合ったオフホワイトに塗り替えられていて、ドライバーはギャルソンスタイルのエプロンを着けた女性。 

 客が自分の車、ここではドラゴンと言うらしい物と一緒に入ることが出来るスタイルの広い店。

 さっきのウェイトレスはローラースケートで滑って来たが、藤巳は店員まで車でやってくることに驚かされた。困惑より好奇心に似た気持ち。

 店員はオープントップのジープを藤巳たちのテーブルに横付けし、ジープの運転席から降りて一礼する、それからジープの後部に取り付けられたボックスから皿を取り出し、テーブルに並べた。

 前菜に始まりメインディッシュ、デザートの順番で次々と持って来るスタイルではなく、一度に全部広げる形式。コース料理の煩雑さが苦手だった藤巳にはありがたい。

 サラダらしいが色が黄色や赤の野菜。クリーム色なのに匂いはスパイシーなスープ、緑色のポテト。それから店員の女性はジープの後部に据え付けられたグリルで肉を焼き始める。

 校長は藤巳に話しかけた。

「ミディアムレアでいいかしら」

「任せるよ」

 ジープの女は愛想よく頷き、ジープの幌を張るフレームに吊るしてあった肉を腰に下げたナイフで切り、下ごしらえを始めた。 

 肉だけは藤巳が知るものと同じ色で、塩と胡椒を振って鉄板で焼く調理方法も変わらないらしい。ただ、よく見てもグリルの熱源が何なのかわからない。

 下が素通しになったテーブルの上に置かれた鉄板が熱を放っているようだが、電気なのかガスなのか、それとも校長が頻繁に口にする魔法とかいうものか。見ているうちに肉が焼きあがったらしく、ブランデーらしき酒を振りかけて火をつけている。フランベの炎は黒い色だった。

 

 いい匂いを立てて肉が焼きあがり。450gくらいの肉が藤巳と校長の前に置かれる。藤巳がアリゾナで最も見慣れたサイズ。 

 店員は一礼して、校長からチップを受け取りジープで走り去る。遠くにある別のテーブルで同じように肉を焼き始めるのが見えた。

 アンチモニー校長は並べられたナイフとフォークを手に取りながら言った。

「では早速食べましょうか」

 どうやら食前のお祈りの類は無いらしいと思った藤巳も、同じくナイフとフォークを握りながら言う。

「いただきます」

 料理は色彩こそおかしいが藤巳にとって美味なものだった。 

 藤巳が校長や周囲のテーブルを盗み見る限り、テーブルマナーは前菜から順番に食べるのではなく、好きなものを交互に食べる日本に似たスタイルらしい。

 特に肉が美味いと思った藤巳は、あとはこれがなんの肉かわかれば上々だと思い、それから会長のディナーの誘いに応じた理由を思い出した。

「聞きたいことがある」

 アンチモニー校長は食事を中断し、ナプキンで上品に口を拭った後、あまり酒に強くないらしく舐めるように飲んでいた紫のワインを一口飲んで答えた。

「なんなりと」

 今日一日で沸いた様々な疑問、藤巳はその一つ目を校長に尋ねた。

「魔法って何だ?」 


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