表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/60

モンスターハウス(パクりではなくインスパイア)

 多少のハプニングはあったものの、僕たちはすぐクエストに出発することとなった。


 ダンジョン。

 今よりはるかに進んだ古代文明の遺産。

 内部では半永久的に魔物が生み出され、侵入者の命をつけ狙う。


 危険なことは危険だけれど、同時に一攫千金のチャンスでもある。

 魔物の身体からは貴重な素材を得ることができるし、時々、オーバーテクノロジーとしか言いようのないシロモノが手に入ることもある。

 僕が左腕に付けているガントレットもそのひとつだ。


 個人的な話はさておき、都市国家ノモスの地下には世界有数の巨大要塞が眠っている。

 たぶんここが古代人の本拠地だったんだろう。そのせいかして魔物の発生頻度も多く、時々、一ヶ所に大量発生することがある。

 モンスターハウス。

 なんだか不思議なダンジョンみたいな呼び方だけど、たぶん僕みたいな現代日本からの転生者が名付けたんだろう。

 こういう場合はランクAが出動することになる。

 他の冒険者にとって探索の妨げになるし、地上に出たら大騒ぎだ。

 少数精鋭、短時間で一気に間引く。

 とくに僕やスマイルズ先輩、リースレットさんは多対一を得意としている。


 大勢で列を並べてレッツパーリィ。

 そういう戦い方じゃ実力を発揮できないのだ。

 

「オレは正面、アルフは左、リースは右。いいな?」


「了解です、先輩」

「わかった」


 細かい連携なんて必要ない。

 というか、できない。

 全員が全員、どうしようもないスタンドプレイヤー。

 互いに干渉せず助け合わず、距離を取る。

 結果としてそれが一番マシで最高のチームプレイになってしまうのだ。


「……よし」


 僕は左腕を掲げ、ガントレッドに魔力を流す。リンクを確立。これで思うままに機能してくれる。


「ウォォォォォォォッッッッッッ!」


 雄叫び(ウォークライ)とともに突進してくるオーガ。

 その頭を、右手の銃で吹き飛ばした。

 三式魔導拳銃。これもダンジョンで手に入れたオーパーツだ。

 魔力と血肉を弾丸に、立ち塞がる敵を吹き飛ばす。

 専門家のシーラさん的には"V3(ブイスリィ)"、あるいは"Ver.3(ヴァージョン・スリィ)"が正式名称らしいけれど、まあ、大したことじゃない。


「シャアアッ!」


 何匹か屠ったところで、急に、周囲のモンスターたちが僕から離れた。

 同時に飛来する、無数の砲弾。おそらく後方にキャノン・タートルが控えていたんだろう。

 十字砲火なんてものじゃない。前後左右に斜め方向。三百六十度が埋め尽くされている。


(でも、頭上はガラ空きだ)


 そしてモンスターハウスとなった階層の特徴として、天井がやたら高い。

 僕は舞い上がる。

 別に魔法ってわけじゃないし、脚力だってそんなに強くない。

 タネは何かと言えば、左腕のガントレット。アンカーを射出し、天井に打ち込んでいた。

 ワイヤーは蜘蛛神(アトラック・ナチャ)の糸にビブラニウムを絡めたモノ。要するにとんでもない強度らしい。


(いくら僕が小柄だからって、よく身体を持ち上げられるよね)


 もしかするとガントレットに魔法が仕込まれているのかもしれない。

 高みから見下ろしてみれば、モンスターの多いこと多いこと。

 広い広いホールのような空間で、うじゃうじゃとモンスターが群れている。ざっと数えても千匹は越えているだろう。


「千客ゥゥゥ! ()ァァァァァン歳ィィィッ!」


 微妙に間違った四字熟語を叫んでいるのはスマイルス先輩だ。

 斧と槍を一体化させたロマン武器、ハルバードをブンブンと振り回している。

 一帯には魔物の血しぶきが舞い散り、赤い霧となって立ち込めていた。


「一家ァ! 断乱(だんらん)ンンンッ!」


 ギロチンキノコの親子がまとめて撫で切りにされる。

 あの世で一家団欒ってことだろうか。恐ろしい。というか先輩、声大きいよね。かなり距離があるのに聞こえてくるし。


 リースレットさんのほうはどうだろう、僕と反対方向だけれど……いたいた。

 相変わらずクルリクルリ、軽やかなステップで魔物の間を抜けていく。剣と槍の二刀流。ほんと器用だよね。

 ただちょっと剣の動きが鈍い気がする。槍一本の方が強い気もするけれど、たぶん何かこだわりがあるんだろう。


 上位ランクの冒険者ってのは、みんな非効率的で不合理だ。まっとうな戦い方をしない。

 やたらと指弾にこだわったり、鎖鎌を手じゃなく足で操ったり。

 シーラさん曰く、「アタマの壊れっぷりと魔力量は比例する」とかなんとか。

 だったら僕はどうなんだろう。銃使いのワイヤー使い。なんだか他のAランクに比べると見劣りしているけれど。


 あ。

 念のために行っておくけれど、僕だってきちんと仕事をしている。

 サーカスというかジャッキー・チェンみたいにワイヤーで浮かんだり沈んだり、イメージはハンス・ウルリッヒ・ルーデル。第二次世界大戦で活躍したドイツのエースパイロット。休んでる暇はないぞガーデルマン、出撃だ。ひたすらに急降下爆撃を繰り返す。三式は状況に応じて弾薬を使い分けられるのだ。焼夷弾みたいなのも出せたりする。

 

「……おっと」


 頬のあたりで魔導フィールドがかすかに削られた。

 高い所にいればそれなりに安全だけれど、そもそも、僕の銃じたいがダンジョンの産物ってことを忘れちゃいけない。

 同じようなものを装備したモンスターもいるわけで、よし、見つけた。

 スナイパーコブラ。

 大きく開いた口からは、舌のかわりに狙撃銃。

 もちろん第二射なんて許さない。カウンタースナイプ。前世、FPSで鍛えた腕が冴える。

 サバイバルゲームってのもやってみたかったんだけどね。引っ込み思案のコミュ障にはハードルが高すぎた。


 ところでさ。

 ここのダンジョンって、他に比べると変わり種が多いんだよね。

 さっきのキャノンタートルもそうだし、火炎放射器を内蔵したカエルなんてのもいたりする。やたらメカメカしい。

 要塞が比較的マシな状態で残ってて、深層じゃ武器の生産ラインが稼働しているからだろうか。


 ま、それを考えるのはシーラさんあたりにまかせておけばいい。

 僕は僕でクエストをこなすとしよう。

 でも、こいつらがダンジョンから出たら大混乱だろう。地上のモンスターって素朴で弱いし。

 同じ竜種でも、ここでは三ツ首で機械化されていたりする。

 キン〇ギドラ? うん、そんな感じ。


設定説明(2) モンスター


 神、あるいはその配下たる天使を迎撃するための生体兵器。

 そのほとんどはごく短い寿命しか持たないものの、一部はダンジョンの外に適応し繁殖している。


 なお、古代における戦争は神々の敗北で終わっている。その死骸は世界中に降り注ぎ、結果、現在の人間はわずかだが神性を帯びている。

 そのためモンスターからは敵と判断され、各地のダンジョンでは終わりのない戦いが繰り広げられている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ