行き先(生き先)
冒険者の在り方はシンプルだ。
同じ冒険者は必ず助け、モンスターは打ち倒す。
ただそれだけ。
だったら、ダッジたちを見捨てるなんてありえない。
* *
ダンジョンの各階層における構造は、おおむね三つに分けられる。
1.ネイチャー
2.フォートレス
3.モンスターハウス
ネイチャーってのは名前通り、自然の風景を模した広大な空間だ。
砂漠が広がっていたり、あるいは氷点下の雪原だったり。異次元っぷりを感じられるのがこのロケーションだろう、
フォートレス。つまりは要塞だ。その階層はまるでSFのような場所になる。細長い通路、左右には自動ドアの部屋。まるで宇宙基地だ。
元現代人の僕としてはわりとこっちのほうが馴染みやすい。
最後がモンスターハウス。
敷居のない広大な空間に、モンスターがワンサカ。
どっちかというとモンスターホールだけど、既に命名されてるんだから仕方ない。
再構築の前後だからか、ダンジョン内に他の冒険者の姿はなかった。
「ま、そりゃそうだよね……っと」
三式魔導拳銃で立ち塞がる魔物を吹き飛ばしていく。
基本的に地下十五層までは消化試合みたいなものだ。
とはいえ何事も例外はある。気を抜かずに先を急ぐ。
第七階層までは、ええと、特にコメントするようなことはない。
ネイチャーとフォートレスが交互に並んでいたくらいだろうか。
まったくの雑談なんだけど、ライトノベルの主人公のメイン武器って、基本的に剣だよね。
次点で魔法、そして素手。
銃使いって比較的少ないけれど、いったいどうしてなんだろう?
これは持論だけど、剣ってのはコミュニケーションのメタファーになる。
――太刀筋から感情を読む。
――無言のうちに斬り合って理解しあう。
よくある展開だし、いち読者としても納得できる。というかカッコいい。
けれど銃は違う。
自己完結、裏を返せば他者を拒絶する武器だ。
一方的に撃って殺すだけ。
銃撃戦?
あれは結局、殺意の押し付けだ。料理するのは難しいだろう。
マンガだったらビジュアル的な格好良さで魅せれるんだけどね。
ゴルゴとかシティハンターとか。
とまあグダグダ語ってみたけれど、ただのヨタ話だ。
あえてまとめの言葉を付けたすなら、なんだろうね。
――自分は転生者だけど、この世界の"主役"じゃない。
そんな感覚がずっと付き纏っている。
* *
第七階層は"ネイチャー"で常夏の島、けれどバカンス気分を満喫することなく下へ。
するとやっぱりというかなんというか、第八階層は"フォートレス"だった。
ちょっと苦手なんだけどさ。
基本的に閉鎖空間だから、ワイヤーもアンカーも使いづらい。
ま、敵が通路に並んでくれることも多いから楽っちゃあ楽なんだけど。撃てば当たるぞグエン・バン・ヒュー。
銀河英雄伝説ってすごいよね、二十年近く経ってるのに二次創作が生まれてるし、僕の死ぬ前とかモバゲーになっていた。
(……おかしいな)
この階層に足を踏み入れてからというもの、モンスターは影も形も見せていない。
安全地帯? まさかありえない。だってギラギラした殺気を感じているんだから。
右の首筋――前世で致命傷を受けた場所がヒクつく。
(どこかに隠れている、とか?)
今は機を窺っているだけ、じきにアップを始めてよーいドン。空前のモンスターラッシュ。
そういう展開も否定できない。
最近、明らかにダンジョンは変化している。対冒険者へシフトしつつあるのだ。
ウルフチェーンソーなんていい例だよね。魔導フィールドを削ることに特化してるわけだし。
アンプバットの新種も危ない。なにせ平衡感覚をピンポイントで狙ってくるんだから。
でもさ。
(戦術・戦略レベルでも何か起こるんじゃないかな)
僕はそんな風に予想している。
(ダッジたちをオトリにして、ランクAを袋小路に誘い込む。そこを一気に叩き潰す、とかね)
ただの考え過ぎならいいんだけど、行き先がずっと一本道で気持ち悪い。
二手に分かれてるように見えて、やがてひとつに合流したり。
曲がり角のたび、行き先の気配を探って警戒、警戒、警戒。
(ひどい焦らしプレイだ)
緊張の中、神経だけが刻一刻と削られていく。
引き返して増援を頼んだ方がいいんじゃないか?
けれどその場合、ダンジョンはオトリのダッジを殺すんじゃないか?
疑念だけが延々と、グルグルグルグル回っていく。
(リコの時、僕は干渉しなかった)
シンジ君と言う彼氏がいるんだからと、変に距離を取ってしまった。
やらなかったことによる後悔は、もうたくさんだ。
(どうせこれは、二度目の人生なんだ)
強がりなのか本音なのか、自分で分からない。
それでも僕は進む。
ひたすら、前へ、前へ。
二日前に殴り合った相手を助けるために。
だって同じ冒険者なんだから。
理由はただそれだけ。
シンプルに生きて、シンプルに死にたい。
――そして僕は、辿り着く。
「てっ、テメエは……!」
憔悴した表情の、ヒゲ男。
ダッジ。
そして金属質の壁から伸びる、四本の手と、四本の足。
中にはきっと、ズムとゼノンが埋まっているのだろう。
指の動きからして、まだ生きているらしい。




