終、豊穣の村
「着いたか……」
その日、一人の青年が豊穣の里ルチコル村へと降り立った。
身長170㎝程度で紅色のローブに身を包む彼は、若干長めの紅色の髪に同じく紅色の瞳。さらには背に負う大鎌まで全て紅色に統一している。
「暇そうな村だな……」
誰に言うでもなく呟いた彼だったが、その言葉に一人の女性が反応していた。
「誰?そこの失礼なこと言ってる人は!」
声の方を向くと、そこに立っていたのは少し派手目な赤い軽装備に身を包む女性。髪には赤いリボンの飾りを付け、背には弓矢を装備している。身長は青年よりも低く、150〜160㎝程度だろう。
「ん……ああ、悪いな。あんたは?」
「あんたって……私は、この村を治める姫よ!名前はリーゼロッテ!」
「リーゼロッテ……そうか」
「そう!で?君は……騎士、だよね?誰に仕えてるの?」
「いや、俺は──」
──騎士ではない。
そう言いかけたが、やめておいた。
「──まだ騎士になったばかりだ。誰にも仕えてはいない」
代わりにそう言うと、リーゼロッテはニヤリと笑みを浮かべる。
「へー、誰にも仕えてないんだ〜。それじゃ、私に仕えてよ」
「なぜだ」
「失礼なこと言った罰!私のために働きなさい!」
「嫌だと言ったら?」
「んー、そうね……アンネローゼに報告かな?」
「アンネローゼ?」
「え、まさか知らない?アンネローゼのことも知らないの?」
「まあ……」
「えー!ありえないっ!私の親友で、とにかく怖い人なんだから!って、本人の前では言えないけどね」
青年は一度フッと軽く笑い、そして口を開く。
「そうか。まあ、別に仕えてやってもいいぜ。俺も、この村同様に暇だからな」
「本当に!?って、いやいや、何よその言い方っ!」
「で?働くって何をすればいいんだ?」
「ああ、そうね……じゃあ今から魔物討伐に行ってきなさい!」
「魔物討伐か……どこへ行けばいい?」
「南の方!」
「フッ……ああ、分かったよ」
そう言って立ち去ろうとする青年を、リーゼロッテは慌てて呼び止めた。
「あ!君!名前!名前聞いてなかった!なんていうの?」
「ああ、俺は……」
彼女の問いに青年は暫く悩み、その末に答えた名は本名ではなかった。
「……セト。セトと、そう呼んでくれ」
こうして彼──大鎌の騎士は、改革派リーゼロッテに仕える騎士となるのだった。
(生存4名)




