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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
終章・真
73/73

終、豊穣の村

「着いたか……」


 その日、一人の青年が豊穣の里ルチコル村へと降り立った。


 身長170㎝程度で紅色のローブに身を包む彼は、若干長めの紅色の髪に同じく紅色の瞳。さらには背に負う大鎌まで全て紅色に統一している。


「暇そうな村だな……」


 誰に言うでもなく呟いた彼だったが、その言葉に一人の女性が反応していた。


「誰?そこの失礼なこと言ってる人は!」


 声の方を向くと、そこに立っていたのは少し派手目な赤い軽装備に身を包む女性。髪には赤いリボンの飾りを付け、背には弓矢を装備している。身長は青年よりも低く、150〜160㎝程度だろう。


「ん……ああ、悪いな。あんたは?」

「あんたって……私は、この村を治める姫よ!名前はリーゼロッテ!」

「リーゼロッテ……そうか」

「そう!で?君は……騎士、だよね?誰に仕えてるの?」

「いや、俺は──」


 ──騎士ではない。


 そう言いかけたが、やめておいた。


「──まだ騎士になったばかりだ。誰にも仕えてはいない」


 代わりにそう言うと、リーゼロッテはニヤリと笑みを浮かべる。


「へー、誰にも仕えてないんだ〜。それじゃ、私に仕えてよ」

「なぜだ」

「失礼なこと言った罰!私のために働きなさい!」

「嫌だと言ったら?」

「んー、そうね……アンネローゼに報告かな?」

「アンネローゼ?」

「え、まさか知らない?アンネローゼのことも知らないの?」

「まあ……」

「えー!ありえないっ!私の親友で、とにかく怖い人なんだから!って、本人の前では言えないけどね」


 青年は一度フッと軽く笑い、そして口を開く。


「そうか。まあ、別に仕えてやってもいいぜ。俺も、この村同様に暇だからな」

「本当に!?って、いやいや、何よその言い方っ!」

「で?働くって何をすればいいんだ?」

「ああ、そうね……じゃあ今から魔物討伐に行ってきなさい!」

「魔物討伐か……どこへ行けばいい?」

「南の方!」

「フッ……ああ、分かったよ」


 そう言って立ち去ろうとする青年を、リーゼロッテは慌てて呼び止めた。


「あ!君!名前!名前聞いてなかった!なんていうの?」

「ああ、俺は……」


 彼女の問いに青年は暫く悩み、その末に答えた名は本名ではなかった。


「……セト。セトと、そう呼んでくれ」


 こうして彼──大鎌の騎士は、改革派リーゼロッテに仕える騎士となるのだった。

(生存4名)

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