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幕間─5
『紅之大鎌』、縫い目の女の二人は、少しだけ欠けた月の夜、グランツホルンの森を出る。
「どこへ、向かうのですか」
縫い目の彼女のその言葉に、『紅之大鎌』はただ一言、「ロゼシュタッヘル」とだけ伝えた。
「また墓参り、ですかな」
墓参り。
そう、それこそが『紅之大鎌』が頻繁にロゼシュタッヘルへと向かう理由。
アルトグレンツェの南に位置するいばらの森ロゼシュタッヘルは、彼の父親が亡くなった地でもあるのだ。
「ああ……」
ただ、彼がそこへ向かうようになったのは、ADGと縫い目の女が彼の元に仕えてからのこと。
二人の仲間の存在が、『紅之大鎌』の思考をほんの少しづつ変えていったのだ。
「新月の夜は白き狼。満月の夜は──」
かつて彼の父親が、口癖のように呟いていた言葉を、『紅之大鎌』はまるで自分の口癖であるかのように呟く。
「──紅き龍」
明日、紅の月が沈む迄には……セトを、この手で──。




