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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第六章 ロゼシュタッヘルの終止符
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3、静かなる草原にて

「さて、いきますよ」


 その言葉と同時に、縫い目の彼女はハナに向かって跳躍。双剣の切っ先を前方へ向け、そのまま突っ込む。


 これをハナは右へ回避し、その場で攻撃スキル〈ライトニング〉を唱えた。


「光よ!」


 強力な閃光による一撃に対し、縫い目の彼女は凄まじい速度で両手双剣を振り回すことで瞬時にかなりの量の斬撃を生み出し、それにより閃光をかき消す。


 さらにハナとの距離を一気に詰めると、一旦首へのフェイントを入れ、それにより確実に〈アジリティブレイク〉で足を切り裂いていった。


「クッ……!」


 両足の膝裏関節部に的確な斬撃をねじ込まれ、ハナはその場に立っていることができず膝をつく。


 それでもすぐさま〈セルフヒール〉で自身の傷を癒していき、次の相手の動きを見た。


「ふむ……」


 回復魔法を唱えるハナを見て、縫い目の彼女は次の手に打って出る。


 唱えたスキルは自己強化スキル、〈アジリティライズ〉。これにより自身の敏捷を大きく上昇させ、先ほどよりも遥かに早い速度でハナとの距離を詰めた。


 そこから〈クイックスライサー〉、〈ポイズンカッター〉、〈ストーンカッター〉とスキルを重ねるが、ハナはこれらを全て盾で受け止め、さらに〈ライトニング〉でカウンターを狙う。


「ほう……」


 呟きながらも、縫い目の彼女は素早い動きでこれを右へ回避。今度はハナの盾に直接双剣を叩き込み、若干怯ませたところで左へ揺さぶりをかけつつ右から背後へ回り込み、流れるような動きで〈バックスタブ〉。


 ハナの背に二本の双剣を突き刺すことで血を散らせ、それに怯みつつも振り向こうとするハナの腕へ〈カンペテンスブレイク〉。


 彼女自身が縫い合わせたその右腕を、再び切断していった。


「アッ……ウウッ……!」


 腕は握られていたメイスとともに地面に切り落とされ、怯んだハナは二、三歩後退していく。


 そこへ、縫い目の彼女はトドメとばかりにハナの体の中心に右手短剣をねじ込もうとするが、これは盾で防がれる。


「さようなら。かつての同胞」


 最後にそう呟くと、右手短剣で盾を抑えたまま、左手短剣をハナの首へ。


「ガハッ……フッ……ウフフッ……」


 首に短剣をねじ込まれ、凄まじい勢いで血を噴き上げながらも、それでもハナは笑って見せた。


「……そろそろ……」


 最後の力を振り絞り、ハナは左腕の盾を振り上げる。不意をつかれた一撃に、縫い目の彼女の右手短剣は弾かれ宙を舞う。


「……ガハッ……ゲホ……ハァ……貴女も……」


 落下する短剣を、ハナは見事に左手でキャッチ。それをそのまま縫い目の彼女の首へ突き刺す。


「……休みましょうよ……」


 自身の首に刺さった短剣。それからその傷口から噴き出す血を眺め、縫い目の彼女は最後に僅かな笑みを見せた。


「……そうですな……」


 こうしてかつて『紅之大鎌(クリムゾン・サイス)』に仕えた二人は、ロゼシュタッヘル付近の草原地帯にて力尽きる。


 空に浮かぶ満月は、二人の体を静かなる月光で照らしていた。

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