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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第四章 シュネーケンの真実
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10、定められた未来へ

「同じで真逆……?それはどういうことかしら」


 セトの言葉に、アンネローゼは首を傾げた。


「自分は……剣で魔物を斬ることが、できなくなってしまったのです……。命を等価値と判断するまでは同じで、騎士を斬るか、魔物を斬らないか、そこが逆だった。自分と兄との違いは、きっとそれだけだったのです……」


 今思えば、結局自分と『紅之大鎌(クリムゾン・サイス)』はかなり似ていたということだ。


 これで疑問はかなり解消された。かなり解消はされたが、しかしまだ、分からないことがある。


「アンネローゼ様。クリムゾン・サイスは以前、シェーンヴェントで自分の過去を一部語っていましたが、あれは……」

「ああ……その直前に、私がクリムゾン・サイスと会っていたことは知ってるわね?そこで話を合わせておいたのよ。もしもセトと会ったら、作戦で記憶を無くしたことにしておいて、と」

「え……?ですが、武器を交えたのでは……」

「あいつはもう誰にでも鎌を向けるの。話を終えたら斬りかかってきたわ。愚かな人よね……」

「そうでしたか……。では、貴女はあの時点で自分が生きていたことを既に知っていた……?」

「そんなわけがないでしょう!貴方が生きていることも、貴方が記憶を無くしたことも、あの時知ったのよ。だから今思うと、私の嘘も穴だらけだったということね……」

「あ……本当ですね……」


 自分が生きていることをあれだけ喜んでいたにもかかわらず、彼女は自分が記憶を無くした理由を知っていた。


 改めて考えてみると、それは決してありえないことだ。


 記憶を無くしたことを知っていたのなら、自分が生きていることも知っていた筈。逆に自分の生死を知らなかったとしたら、記憶を無くしたこと自体知らない筈なのだ。


「それで?もう日も暮れてしまったけど、まだ何かあるかしら?」

「あ、えっと……」


 結局、『紅之大鎌(クリムゾン・サイス)』の語った平和の極みは全くの虚構というわけではなかった。それは本当に彼が望むことでもないのだが、しかし彼の脳内には確実に存在する考えだったのだ。そしてその考えの元、彼は鎌を振り続けているのだ。


「……いえ。もう、何もありません。全てを教えて頂き、本当にありがとうございました」

「ええ……。それで、貴方は今後どうするつもり?魔物を斬れない騎士なんて、正直必要ないわ」

「そう、ですよね……。自分は……クリムゾン・サイスを、討伐します。それから──」


 それから、どうする?『紅之大鎌(クリムゾン・サイス)』を討伐できたとして、その後自分はどう生きていけばいい……?


 ……いや、それはもう考えるまでもないことだ。考えるまでもなく、決まっていることだ。もしも彼を討伐できたら──。


「──自分は、騎士を辞めます」


 ──それは嘘。自分も、彼と共にこの世から消え失せるでしょう。


「そう……。ええ、きっとそれがいいわ。貴方はまだ若いのだから、騎士以外にも道はたくさんある。シンデレラに捨てられたら、別に私が雇ってあげてもいい」

「それは助かります。その時は、宜しくお願い致します」

「ええ。それじゃあ、今日はこの城に泊めてあげるわ。部屋を案内するからついて来なさい」

「はい。ありがとうございます」


 その後二人は部屋を出て行くが、アンネローゼはセトを別の部屋に案内した後、今度はレイナと共に再びその部屋へと入っていくのだった。

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