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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第四章 シュネーケンの真実
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7、白の魔導師

 シェーンヴェントの草原にて、セトとレイナはすぐに複数の魔物と遭遇。戦闘に入った。


「行くよセーちゃん!」

「せ、せーちゃん……!?」


 レイナの言葉にセトは戸惑いながらも応じ、剣を抜く。


 目の前にはライトリールックが二頭と、それに加えてライトジャロビーが一頭。


 セトはレイナの前へ出て、先ずはライトジャロビーめがけ剣を一振り。しかし空中を素早く飛行する敵を捉えられない。


「闇よ!」


 レイナは敵がセトの剣を交わしたところへ、すかさず杖による攻撃魔法を叩き込む。


 杖はメイスとは違い、攻撃に特化した魔導師の持つ武器だ。故に回復魔法は基本的に使えないが、その代わり広範囲に及ぶ強力な魔法撃を扱うことができる。


 今レイナが放ったのは一点集中型の闇属性攻撃魔法〈グラビティボム〉。弱点をついたこの一撃をまともに受け、ライトジャロビーはたった一撃で地に伏した。


「凄い……」


 直後、二頭のライトリールックは同時にセトめがけ嘴で襲いかかるが、セトは一方を回避、もう一方を盾で防いだ。


 しかしそのカウンターで放った〈シャープスラッシュ〉はまたしても空振り。さらに立て続けに〈ディミニッシュブレイド〉を放つが、これも難なく避けられてしまう。


「なんで……」


 どうしても攻撃が当たらないセトはさらに前進しようとするが、ここでレイナの言葉が届く。


「セーちゃん後退!」

「え……?」


 一瞬躊躇ったが、セトはレイナの指示通りに後退。セトが下がったところで、レイナは炎属性広範囲攻撃魔法〈エクスプロージョン〉を唱えた。


 轟音と共に二頭のライトリールックを飲み込んでいく凄まじい爆発。そこへ続けて木属性広範囲攻撃魔法〈ワールウィンド〉を重ね、これで二頭のライトリールックは同時に倒れる。


「凄いですね……」


 セトは深刻そうな表情でそう呟きながらレイナの元へ。


「セーちゃんどうしたの?調子でないみたいだけど……」

「あの、セーちゃんというのは……」

「二人きりの時はそう呼んでたの!それで?もしかして、記憶と一緒に剣の感触も忘れちゃったとか?」

「い、いえ……そういうわけでは、ありません……」

「いやでも完璧にタイミングずれてたじゃん。寧ろわざとずらしてたようにも見えたかも……」


 わざとタイミングずらしていた……?


 セトは剣を握っていた掌を眺める。


「次は……大丈夫です……」

「ほんとに?調子でないなら無理しなくてもいいからね。あとさ──」


 彼女は若干怒ったような顔で不満気に言った。


「──いい加減、敬語はやめてよ……。距離置かれてるみたいでほんと嫌……」

「え……あ、ですが──」

「嫌!記憶がないのは分かるけど、敬語は嫌!私のこと思い出す努力はするんでしょ?なら敬語禁止!」

「わ、分かりま……ワカッタ、ヨ」


 言われてみると、記憶をなくしてからこれまで敬語以外使ってこなかった。これはまた慣れるのに時間がかかりそうだ。


「フフッ。何それ。ほら、行くよー」


 その後二人はシュネーケンへ辿り着くまでに何度か魔物と遭遇するが、しかしセトの剣が魔物にヒットすることは一度もなかった。


 剣は命を奪うもの。たとえその相手が魔物であろうと、一つの命であることに変わりはない。


 騎士を殺めることで芽生え始めたその思考が、セトの動きをこれ以上なく鈍らせたのだ。

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