5、覚悟
「本当……ですか……?」
騎士を、辞めた……。ココロは本当に、騎士を辞めてしまったのか……。
「ああ……。ココロが一人でルヴェールへ戻ってきたときは流石に驚いたよ……。以前の傷口もまた開いてしまっていてな。一体何があった?」
「あの……ちょっと、喧嘩しちゃって……。お姉ちゃんは何か言ってましたか?」
「それがな……ココロの奴ここへ戻ってから一切口をきかないんだ……。今は城内の一室で休ませているが……」
「そう……ですか……。私、今からちょっと見てきます……」
「そうか。では、私もセトの元へ行ってくるよ」
そして二人は、それぞれ別の部屋へと向かうのだった。
「セト、入るぞ」
シンデレラはそう言って、セトの部屋へと入っていく。
「話は聞かせてもらったよ。剣が、振れないそうだな」
部屋の中でただ佇んでいたセトは、入ってきたシンデレラに振り返り、しかしすぐに視線をそらす。
「はい……。なのでシュネーケンへは──」
「セト、お前はウォロペアーレで犯した罪を、どのようにして償うつもりだ?」
「え……?それは……」
「罪の償いのために、お前は一体何ができる?」
「自分は……」
「そんなに考えなくとも答えは出るはずだ。考え過ぎるのは、お前の悪い癖だ」
「……剣……」
その呟きに、シンデレラは僅かな笑みを浮かべた。
「ああ……きっと、お前にはそれしかないよ。剣の罪は剣で拭い去ればいい。振り方を忘れたわけではないだろう。だから、また以前のように戦ってくれ……セト」
「いいのでしょうか……。また、剣を振っても……」
「振らなければダメなんだ。戦いから逃げるな。私の知っているお前は、どんな状況であろうと決して戦いから逃げ出すような奴じゃない。以前のルヴェール襲撃でもお前はこの私に見せただろう──」
流れ落ちようとする涙を嚙み殺し、セトはただ黙って目を伏せる。
ダメだな最近は……すぐに涙腺が緩んでしまう……。ルーツィア様も、ベアトリクスさんも、ココルさんも、シンデレラ様も……皆優しすぎるんだ……。人殺しであるはずの自分を……なぜ、そこまで励ましてくれるのか……。
「──私に仕える、騎士としての覚悟を」
答えなければ。その励ましに、自分は精一杯答えなければならない。今の自分にできる償いなど、それくらいのものだ。
「シンデレラ様……ありがとうございます。危うく忘れてしまうところでした。この身は既に、貴女に捧げたものであることを」
そしてセトは、その場に跪き心臓に拳を当てる。
「明日、シュネーケンへ行って参ります」




