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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第四章 シュネーケンの真実
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3、帰路

「あの……ココルさん」


 ウォロペアーレからルヴェールへの道中、セトはココルに声をかける。


「ん、何?」

「ええと……ココロさんは、あの後どうされましたか……?」


 恐る恐るセトがそう尋ねると、ココルは怒ったような顔で答えた。


「先にルヴェールに戻ったんじゃない?別に知らないけど」

「そう、ですか……」

「うん……。あの、セトさん」

「はい……?」

「今言うことじゃないかもしれないけどさ……その、お姉ちゃんに……されたじゃん?」


 そう言うと、ココルは突然顔を染めて俯く。


「え……?」

「いや……キスの、話……。別に怒ってるとかじゃなくてね、その……ほら、お姉ちゃんとはして、私とはしないっていうのも……ね。どうかと思うといいますか……」

「したいのですか?」

「へっ……!いや、まあ……うん。したいよ……」

「今、ですか?」

「いやだから……今じゃなくてもいいけど……。ていうか、セトさんはどうなの?少しくらいしたいとか思わないの?」

「自分は……」


 セトは少しだけ彼女への返答に悩んだが、しかし正直に答えることにした。


「今は、罪を償うことで頭が一杯で、貴女のことを考える余裕がありません。本当にすみません……」


 セトの言葉に、彼女は一瞬悲しげな表情を見せるが、しかしすぐに笑顔をつくる。


「そう、だよね……。私の方こそごめんね、いきなり変なこと聞いちゃって。今は貴方の言う通り、ゆっくり考える時だよね。でも……またいつか、貴方に余裕ができてきたら、その時は──」


 彼女は、まるで以前のセトのような穏やかな笑顔で空を仰ぐ。


「──見て欲しいな……私のことも」


 セトは彼女の姿にほんの少しの間だけ見惚れ、そしてゆっくりと頷いた。


「分かりました……約束します」


 セトの返事に頬を染めるココル。そんな彼女に、セトは数日ぶりの笑顔を向ける。


 彼女のお陰で、その瞬間だけは僅かながら和らいだような気がした。ただそれは決して犯した罪の重みがというわけではなくて、その罪に対する彼自身の気持ちがという話だ。


「い、急ごっか……」

「はい」


 人を殺した罪が消えることはなく、永遠にそれを背負い生きていくことはもう変えられない。しかしそんな中でも、僅かな希望を感じるくらいなら許してもらえるような、そんな気がした。


 ルヴェールまではあと少し。二人はシンデレラの待つ場所へと道を急ぐ。

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