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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第三章 ウォロペアーレの涙
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10、記憶の叫び

 セトはウォロペアーレ城より数十分かけてヴァングロットの穴の入り口まで辿り着く。


「ここですか……」


 海底に聳える岩壁にポッカリとあいた巨大な穴。奥は薄暗くよく見えないが、恐らくかなり広い空間となっているのだろう。


 あの後、ココルさんとココロさんはどうなっただろうか……。ルヴェールへ帰ってしまっただろうか……。もう、二度とこれまで通りには──。


「──今は、関係ない」


 セトは一人そう呟き、海底洞窟の中へと足を踏み入れていった。




 入り口を抜けると穴の中はかなり広々としており、そこはまさに魔物の巣窟だった。それも見たこともないような手強そうな相手ばかり。


 海の水が澄み渡っていたコーンブルーメと比べると視界もやはりあまり良くなく、これ以上先へ進みたいとは思えない場所だ。


 少し歩いたところで、セトは黒い岩でできた巨人のような魔物、アイスバーグとの戦闘に入る。


 全長5mを超す巨体を誇る敵に対し、セトはまず足に斬りかかっていくが、しかし剣は岩に通らず弾かれた。


「硬い……」


 直後、アイスバーグはセトに向かってその巨大な拳を振り下ろすが、これは確実に右に回避。さらに〈シャープスラッシュ〉、〈ディミニッシュブレイド〉と、立て続けに剣を打ち込む。


 セトの足への連撃にさすがの標的も体制を崩し片手を地面につけるが、その後体を黒く発光させた。


「オオオォォォ……」


 アイスバーグはそう唸り声を上げると、同時に周囲を一掃するような黒い衝撃波を放つ。


「クッ……」


 セトは盾で防ぐことでなんとか耐えるが、そこへさらに体制を立て直した標的の拳による一撃が放たれた。


 セトはその一撃に剣をうまく合わせることで受け流すが、そこからのカウンターはやめておく。


 一旦剣を引いたセトの視界には、もう一体のアイスバーグ……いや、二体か。新たに二体のアイスバーグを確認。セトは三体の巨人に囲まれる状況となった。


「ふぅ……」


 そこでセトは一度大きく息を吐き、集中力を高める。


 ……いける。この状況なら、いける。


 そして三体のアイスバーグに剣の切っ先を向け、強力な白色の魔力を纏わせた。


 同時にセトを潰しにかかる三体のアイスバーグ。それに対し、セトは過去の自分が生み出した独自の技を放つ。


 〈瀬戸流技─白雷・高出力〉。


 凄まじい白色の雷撃が、三体のアイスバーグを貫いていく。その威力はセトの予想をはるかに上回り、たった一撃でその場を一掃。アイスバーグ達は地面に崩れ落ちた。


「まだ……」


 三体のアイスバーグを一撃で撃破したにもかかわらず、セトは何故か不満をこぼす。


「まだ、未完成だ……。この技は……」


 ……この技は、この程度じゃない。


 彼の中の過去の記憶が、そう叫ぶのだった。

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