7、前触れ
一方その頃、ウォロペアーレ城にてココロはココルの部屋を訪れていた。
「ココル……居ますか?」
軽くドアを叩きそう声をかけると、ココルは内側からすぐにドアを開ける。
「お姉ちゃん……どう、したの?」
「あの……入ってもいいですか?」
「うん、いいけど……」
ココルは若干躊躇いつつもココロを部屋の中へ。
「あの……ココル、貴女にどうしても言わなければいけないことがあるのですが……」
二人きりになるなり早速そう切り出すココロに、ココルは「ちょっと待って」と言って一旦彼女の言葉を遮る。
「実は私も、お姉ちゃんに言わなきゃいけないことがあって……。だから、さ……明日にしない?今日は疲れ──」
「なんですか!?私に言わなきゃいけないことって!?」
何かを察したのか、ココロは突然声を荒げココルに掴みかかる。
「お、お姉ちゃ──」
「今!今言って下さい!早く!」
「ちょ!落ち着いてって!」
「あ……ええ……そう、ですね……ごめんなさい……」
ココルの言葉にココロはかろうじて我に返り、その手を退けた。
「やっぱり言うのはお互いに明日にしようよ。今日言ったら──」
──今日言ったら、殺される。
流石にそれは無いにしても今の反応を見る限り、今日ここで言うのは危険すぎる。
お姉ちゃんが言いたいことは何となく……いや、ほぼ確実にセトさんのことであると分かる。きっと前の応援してくれると言った言葉を撤回したいのだろう。ついでに自分もセトさんのことが好きだとでも言い出すだろう。
その言葉に私は、それはもう遅いと、そう伝えなければならない。セトさんは既に私の想いを受け入れてくれていると、そう伝えなければならないのだ。
伝えなければ、いつまで経っても前へは進めない。
セトさんが私の想いを受け入れてくれたあの日から、結局今日まで何も変わらない日々を送ってきた。それは、お姉ちゃんへの強烈な罪悪感があったから。罪悪感故に、セトさんとはまだ何もしていない。
私は……セトさんのことが好きだ。別にお姉ちゃんの邪魔がしたいとかではなくて、本当に本気で好きだ。だから、もっと恋人らしいこともしたいし、二人で過ごす時間を増やしたいとかも思ってしまう。
そのためには、きっと全てを言うしかないのだろう。実はお姉ちゃんの気持ちに気づいていたことも含めて、全てを。
言ったらお姉ちゃんは……どうなるのだろうか。本当に予想もつかない。最悪殴られるかもしれない。最悪本気で殺しにくるかもしれない。それは本当に最悪で、そんなことはないと信じてはいるのだけれど、もしもそうなった場合には、私はただ祈ることにしよう──。
「──疲れちゃうから。今日はいっぱい歩いたし、しっかり休んで、また明日話そ」
「……分かりました。明日、ですね……」
──私の彼が、助けに来てくれますようにと。




