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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第三章 ウォロペアーレの涙
30/73

6、欠けた記憶

 ルトと二人海底を歩くこと数分、ウォロペアーレ城に隣接するエリア、瑠璃の海コーンブルーメへ到着する。


 この辺りの海の水はかなり綺麗で透き通り、海底を歩く気分もかなり良いものではあるのだが、ただ、周囲を見渡すとそれだけで二、三体の魔物が確認できた。


「い、いきますよ……」


 ルトはその内の一体、キノコ型魔物アクアマシュロンを標的と定め、右手で白色の剣を握りしめる。


 マシュロンは顔のあるキノコから手と足を生やしたような外見で、大きさは凡そ全長1〜1.5m程度といったところ。アクアマシュロンはその亜種のようなもので、青い体が特徴の水属性魔物だ。


「……せい!」


 ルトが掛け声と共に剣を魔物に向けて突き出すと、その先端からごく僅かに白い雷撃が放たれた。といってもそれは本当に僅かなもので、パチッと一瞬光ったような気がした程度だ。


「あっ……。き、今日はあまり調子が出ないようですね……」


 そう言いながらルトはアクアマシュロンに〈シャープスラッシュ〉を叩き込み、一度後退。直後の敵からの攻撃を確実に盾で受け、タイミングを合わせ通常攻撃。基本的なヒットアンドアウェイの戦法でアクアマシュロンを討伐する。


「ふぅ……セト様、どうでし……セト様?」


 アクアマシュロンを討伐した彼女がセトの方を向くと、彼は深刻そうな表情で頭を抑えていた。


「セト様!?大丈夫ですか!?」


 ルトのその声に、セトはすぐに我に返る。


「す、すみません……。大丈夫です……」

「ほ、本当ですか?あまり顔色が良くないように見えますが……」


 彼女の言葉に、セトは一度笑ってみせた。


「大丈夫ですよ。一瞬目眩がしただけです」


 目眩……いや、今のは目眩ではない。頭痛というのもどこか違う。本当にごく僅か、一瞬だけ光ったあの白い雷撃が……懐かしいような……いや、ただ懐かしいだけというわけでもなく、何かが引っかかるというか……。とにかく、今の感覚で分かったことが一つある。


 『紅之大鎌(クリムゾン・サイス)』も、そしてアンネローゼも、セトの失った記憶について全てを語ったわけではないということだ。二人とも、何かを隠している。セトが忘れてしまった記憶の中で、重要な何かがまだ少し欠けている。


「そうですか……?あ、あの……とにかくすみませんでした……。ここまで連れてきておいて全然ダメで……」

「いいえ。今ので少し、以前の記憶が蘇った気がします。全てルトさんのお陰ですね。本当にありがとうございました」

「そッ!そんな……!」

「では、自分はもう少しだけここに残ります。ルトさんは、先にお城へ戻っていて下さい」


 セトはそう言い、ルトと同じく白色の剣を抜き放つ。


「え、いえっ!迷惑でなければ私も是非もう少しだけ残らせて下さい!」

「ええ……もちろん、迷惑なことはありませんが……」

「練習、ですよね!白雷の!付き合わせて頂けませんか!」


 白雷……。白雷、か……。


「それでしたら、よろしくお願いします。それと……あの、よければもう一度だけ、先程の技を見せて頂けませんか?」

「も、もちろんでございます!!!」


 そして二人は、日が暮れるまでその技の練習に時間を費やした。


 〈瀬戸流技─白雷〉。


 セトがかつてそう呼んだその技は、彼自身が過去に封印したものであることも知らず。

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