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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第三章 ウォロペアーレの涙
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4、人魚姫

 三人が宮殿内へ踏み入れてすぐ、その美しい声は響き渡った。


「誰……?ルト……?」


 ルト……?


「シンデレラ様に仕える者です。ルーツィア様に報告がありここまで来ました」


 セトがその美しい声に応えると、彼女は泳いで此方へやってきた。


「シンディの騎士……?白い髪……もしかして、セトさん……?」


 その美しい声の持ち主こそが、人魚姫ルーツィア。


 頭の天辺で束ねられた長く美しい紫色の髪に貝殻の髪飾り。首には真珠のネックレスを付け、細い腕に細い体。非常に穏やかな表情は愛らしく、上半身だけを見ればまさに非の打ち所がないような美女。しかし、そんな彼女の下半身には足がなく、代わりにあるのは魚の尾ビレ。


「あ……はい。あの、何故自分のことを知っているのですか?」

「ウフフ……私の騎士、ルトがよく話しているから……。貴方のことを……」


 ルーツィア様の騎士が、自分の事を話している……?


「え……?それはどういう……」

「本人に直接聞いてみたらどうかしら……?きっと喜ぶわ……」

「ええ、そうします。それで、そのルトさんは……今はどこにいるのですか?」

「えっと、地上で護衛をしていると思うわ……。ここへ来るときに会わなかったかしら……?」


 もしかして先程の鎧の騎士……?


「あ……会ったかもしれません。後で話してみます。それで──」


 そこからセトは本題に移る。


 舞踏会の日にルヴェールで起きた襲撃事件のこと、仮面の騎士、縫い目の騎士のこと、そして『紅之大鎌(クリムゾン・サイス)』がかなりの脅威となりつつあること。セトはそれら全てをルーツィアに説明していった。


「そんなことが……。シンディ……大丈夫かしら……」


 話を聞き終え、とても心配そうな顔をするルーツィア。シンデレラの事をシンディと呼ぶあたりからしても、恐らく彼女とシンデレラは本当に深い仲なのだろう。


「あら、その人達は?お客様?」


 ここでもう一人、ブロンドに近い茶髪の人魚が泳いでその場へとやってくる。


「ええ……シンディの騎士さん……。よければおもてなしをしてあげて……」

「オッケー。空いてる部屋貸しちゃってもいいよね?」

「うん……もちろん……」


 ルーツィアの返事を聞き、彼女はセト達三人の方を向いて口を開く。


「私はルーツィアの姉、ベアトリクスよ。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

「ルヴェールからだと、ここまで来るのにかなり歩いたんじゃない?宮殿内で空いてる部屋を貸してあげるから、今日はここに泊まって疲れを取っていってね」

「あ、ありがとうございます……!」


 そして三人は、ルーツィアの姉ベアトリクスに案内され宮殿内の客室へと招かれる。




「えーっと、君はまずここね」


 そう言われ、セトは一人宮殿内の一室へ。中へ入ると、そこはまるで水の中のように……いや、実際ここは水の中ではあるのだけれど、部屋全体が青を基調としており、一人部屋とは思えないほどに広かった。


「こんなに広い部屋……いいのですか?」

「もちろんいいよ。じゃあ、ゆっくりしててね」


 そう言い残し、ベアトリクスはココロとココルの部屋を案内しに向かう。


「あ、はい……」


 ゆっくりしていろと言われても……一体何をすればいいのか。部屋に居ても仕方ない。もう少ししたら先程のルトさんに会いに地上へ行くことにしよう。


 地上へ……果たしてどう行けばいいのだろうか。

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