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紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第三章 ウォロペアーレの涙
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1、大鎌の脅威

 舞踏会より数日後のある日の午前、セトは一人ココロの様子を見にルヴェール城内の一室へと向かう。


「ココロさん、セトです。入っても大丈夫でしょうか」


 ドアをノックしてそう声をかけると、彼女の少し戸惑ったような声が返ってくる。


「え……セト、さん……?は……はい、大丈夫です……」


 彼女の言葉にセトが中へ入っていくと、メガネを外しベッドに腰をかける彼女の姿があった。その頬はすこしだけ赤く、どこか恥ずかしそうに下を向いている。


「具合はどうでしょうか。あれから数日ですが……」

「あ……ええ。私はもう平気です。あの……貴方は、その……」


 ……ココルに何か言われませんでしたか?


「……怪我はされてませんか?」

「ええ、自分は大丈夫ですよ。それより、あの日は何もできず本当にすみませんでした」

「あ、いえ……そんな……。あの、セトさん……」


 ……私の隣に、来て下さい。


「……舞踏会は、どうでしたか?」

「ええ。ココルさんのお陰で楽しめました。それから──」


 ──ココルさんから、想いを伝えられました。


 セトの言葉をかき消すように、再びドアのノック音が室内に響く。


「ココロ、私だ。入ってもいいか?」


 同時に聞こえてきたその声は、シンデレラのものだ。


「は、はい……!」


 ココロの返事にシンデレラが室内へ。


「ああ、セトも居るのか。丁度良かった。ココロ、怪我の具合はどうだ?」

「はい……もう、平気です……」

「ん、元気は無いみたいだな……。まだ暫く休んでいた方がいいだろう。それでセト、お前に一つ頼みたいことがある」


 シンデレラはそう言ってセトの方を向いた。


「はい。なんでしょうか」

「先日の舞踏会襲撃の件を、私の親友のルーツィに……あ、いや、ルーツィアに伝えて欲しいんだ。今回は警戒していたこともあり死者までは出なかったが、しかしまたいつどこで奴らが現れるか分からない。奴らはもはや我々にとって……いや、恐らくこの世界の人間にとってヴィルジナル以上の脅威といえる」


 あの日ハナが失敗したと言っていた通り、今回の襲撃で死者は出ていない。しかしこの件は、彼女の言う通り一刻も早く世界中へ伝えるべきだろう。


「分かりました。すぐに行ってきます」

「ああ、頼む。場所はここから南にあるウォロペアーレだ。一人では危険だから、道案内も兼ねてココルを連れていくといい。私はアンネローゼと──」

「私も!!!」


 シンデレラの言葉を大声でかき消したのは、ベッドから立ち上がるココロだった。


「私も、行きます」

「こ、ココロ……?しかしお前はまだ──」

「元気ですから!」


 無理やり笑ってそう言うココロに、シンデレラは「そこまで言うなら……」とココロの同行を認める。


「ではまた三人で頼む。私はアンネローゼとの会議にアルトグレンツェへ向かう。そこで改革派にもこの件を伝えるつもりだ」


 アルトグレンツェは改革派の中心地シュネーケンの隣にある街だ。いばらの塔が聳える場所でもあり、世界の中心ともいえる。


 こうしてセト、ココロ、ココルの三人は、シンデレラの親友である人魚姫ルーツィアに今回の件を伝えるためウォロペアーレへ。シンデレラはアンネローゼとの会議のためアルトグレンツェへと向かう。

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