7、約束
「仮面の騎士……か。嫌な予感しかしないな」
ルヴェール城内にて、セトはシンデレラにルイヒネージュでの共闘について報告をしていた。
セトの報告を受け、難しい顔をするシンデレラ。そんな彼女に、セトはさらに続けて口を開く。
「ええ……それで、その騎士についてもう一つ気になることがありまして……」
「ん、なんだ?」
「その……何故か理由は分かりませんが、自分のことを知っているようだったのです。以前、記憶を無くす前に知り合っていたのかもしれません……」
「そうか……記憶を無くす前となると、アンネローゼに仕えていた頃だな。分かった。舞踏会が終わったら一度アンネローゼと会議をすることになっているから、その時に聞いてみるよ」
「はい、よろしくお願いします」
シンデレラへの報告を終え借りている部屋へ戻ろうとすると、それを待っていたかのようにココルが話しかけてきた。
「セトさん!」
「あれ、ココルさん……?先ほど帰ったのでは……」
「うん、ちょっと聞きたい事あって。いい?」
「ええ、なんでしょうか」
「あの、セトさんて今度の舞踏会参加するのかなって。もし参加するなら、その……いや、どう?参加する?」
「ああ、そうですね……」
ココルの言葉にセトは暫くの間悩み、しかし悩んだ甲斐なく曖昧な返答をする。
「……まだ、迷っています。シンデレラ様には参加するようにと言われているのですが……」
「そっかー……。うーん、じゃあさ、こういうのはどう?最初参加してみて、ちょっと居心地悪く感じたら途中でこっそり抜け出すとか!」
「なるほど……。確かに、それは名案かもしれませんね」
「うん、そうしようよ!よかったら私、セトさんと一緒に踊ってるからさ、だから、その……抜け出す時も、一緒に、ね!」
「いえ、ですが……それはさすがにココルさんに悪いです。ココルさんは、もっと舞踏会を楽しんでいて下さい」
「わ、私はいいんだって!セトさんと……その、一緒にいられれば……うん。だから、ね!」
「そ、そうですか……?じゃあ、そうですね……分かりました。当日はよろしくお願いします」
「ほ、本当に!?あ、ありがと……!じゃあ、私そろそろ行くね!舞踏会、楽しみにしてるから!」
そう言い残し、ココルはその場から立ち去っていく。
「あ、は、はい」
先程の盾の件で何か言われるかと覚悟していたが……忘れてくれたということだろうか……?
暫くその場に佇むセトだったが、その後彼は部屋へ戻るのをやめ、一人シェーンヴェントへと向かうことにした。
新しい盾に慣れるため、そして、さらなる強さを得るために。
その日から舞踏会までの数日間、セトは毎日夜遅くまで、ただひたすらに一人戦闘経験を積んでいくのだった。